3.18 訃報。ロベルト・バルボン、黒田杏子。ご冥福を。
診療所行って、息子に宅配便出して、図書館。
よそ様のイベント
■ イシサカゴロウ展 3月16日~26日(20日休館)
ポートピアギャラリー(ポートピアホテル内)
■ 青山文平 『本を売る日々』 文藝春秋 1700円+税
本屋を主人公にした連作集。
江戸時代文政年間(1820年代)、地方の城下町で本屋「松月堂」を開く平助。月に一度近在の村々の名主を訪問、外商に回る。篤農家と言われる文人・教養人は大切な顧客。平助が商う本は「物の本」。
〈……物の本とは『根本』の本であり、『本来』の本であり、物事の本質を意味する。(中略)本と言えば、それは仏書であり、漢籍であり、歌学書であり、儒学書であり、国学書であり、医書であって、草双紙はむろん読本(よみほん)も本ではなかった。〉
「物の本」とは学問の本のこと。本は高価なものだった。草双紙も庶民が買える値段ではなく、読者は貸本屋で借りる。だから店に草双紙など流行本を並べても商売にならない。平助は顧客要望の「物の本」を探し、仕入れる。知識は幅広い。自ら開板=出版をする夢もある。
表題作は、名主・惣兵衛屋敷での出来事。若い娘(惣兵衛が落籍して後妻にすると他家で聞いた)に本を見せてやってと頼まれ、よそに届ける画譜を見せた。席を外して、戻ると、娘はおらず、見せた本のうち2冊なくなっていた。さあ、どうなる、どうする。平助は惣兵衛家の相続、夫婦愛の問題にも立ち入る。
(平野)時代小説でよく「物の本によると……」と出てくる。私は当時のベストセラーを想像していた。本書でも知らない書名が次々出てくる。作家の史資料渉猟は広く深い。