2023年4月11日火曜日

疾走! 日本尖端文學撰集

4.8 大阪の出版社・編集工房ノアから年に一度のPR誌兼目録「海鳴り」35号が届く。新刊案内に「へちまクラブ」関連で知った「山口雅代」という名前を発見。児童詩「きりん」の詩人だが、同一人物か? その本を注文。


 

4.9 「朝日歌壇」より。

〈赤本の問題文の物語続きを探しに春の書店へ (奈良市)山添葵〉

〈歳月は再び三たび返りくる曽孫を膝に絵本ひろげて (岩国市)木村桂子〉

「朝日俳壇」より。

〈混沌の世のまま大江逝きし春 (伊賀市)福沢義男〉

〈逃水を追ひし青春大江逝く (大和市)岩下正文〉

 午後落語。「桂吉弥独演会」けんみんホール。「夢の革財布」、上方版「芝浜」。

4.10 統一地方選挙。「いしん」という政党が躍進とか。私のまわりには支持者いないのに、なんでか? 交際が狭いからか。同級生のベテラン市会議員が落選している。

 

 『疾走! 日本尖端文學撰集 新感覚派+新興芸術派+α』 

小山力也編 ちくま文庫 880円+税



 文明開化の明治時代にもまだ東京には江戸の名残りがあった。関東大震災で近代都市化が一気に進む。文学界では芥川龍之介の自死、自然主義の衰退、一方プロレタリア文学の隆盛。大正末期から昭和の初め、文学・芸術の世界にも新しい感覚・運動が巻き起こる。新感覚派、未来派、立体派、ダダイズム、モダニズムなどなど。

 本書登場の作家は、藤沢桓夫、横光利一、堀辰雄、川端康成、龍胆寺雄、片岡鐵兵、窪川いね子ら17名。

編者は「一瞬の燃焼、モダニズムの煌き――まるで「詩」で「小説」を書くように、煌めく比喩表現で綴られる文章」と紹介する。

 川端康成「狂った一頁」。脳病院を舞台にした映画の脚本。

 夜。脳病院の屋根。避雷針。豪雨。稲妻。/ 花やかな舞台で花やかな踊り子が踊っている。/舞台の前の鉄の立格子が現れる。牢格子。花やかな舞台が次第に脳病院の病室に変って行く。/踊り子の花やかな衣裳も次第に狂人の着物に変って行く。/狂った踊り子が踊り狂っている。(後略)〉

 神戸ゆかりの作家が4名。今東光と稲垣足穂は有名。

山下三郎は山下汽船創業者の三男。学生時代から川端康成と交流。実業の傍ら文芸誌「新三田派」創刊。

石野重道は関西学院で足穂の一級上だったが、留年して一級下になる。共に佐藤春夫に師事。

(平野)