4.15 脚と腕に湿疹、いよいよ老体腐敗か。皮膚科診療。
また物騒な。政治リーダーに向けて鉄パイプ爆弾らしきものが投げられた。批判・抗議は紙爆弾、ペンの剣、デモ、投票で。
4.16 「朝日歌壇」「朝日俳壇」とも大江健三郎と黒田杏子追悼作品入選多数。一首一句ずつ紹介。
〈大江さんのまなざしにゐた光さんの「静かな生活」CDに聴く (浜松市)松井惠〉
〈白葱のごとくさらりと筋通し黒田杏子は光となれり (諫早市)麻生勝行〉
〈杏子(ももこ)とふ山姥(やまんば)大往生 (我孫子市)松村幸一〉
〈わが春暁たりしよ大江健三郎 (山口市)吉次薫〉
午前中図書館、西村貫一調べ。
午後いつもの本屋さん。前に文芸書棚に新興宗教教祖の小説あり、と書いた。今日隣から大江健三郎論を抜く。なんか納得できない。ちゃんとした棚から買いたい。
「BIG ISSUE」453号。特集は「わたしの隣人、人権はどこに」。
■ 澤井繁男 『魔術師列伝 魔術師G・デッラ・ポルタから錬金術師ニュートンまで』 平凡社 2800円+税
魔術師、錬金術師。ファンタジーか、悪魔の手先、幻術・妖術師、山師と思っていた。
本書の「魔術師」とは、ガリレオ以降の近代科学に橋渡し役を果たした知識人、「自然魔術師」。
〈自然魔術とは自然をあるがままにみつめ、さらにその内奥に霊魂の存在を認める、というもので、アニミズムであり、キリスト教とはなじまない。ここでの魔術とは知識の意味で、自然にたいする知識とその探究、つまり自然探究を指す。〉
占星術や伝統医術など経験的自然学。「学」以前の「術」の世界。「自然魔術」の時代はルネッサンス末期まで続いた。
ヨーロッパ世界は長い間イスラム勢力と戦った。8世紀初めにイベリア半島が制服された。第一回十字軍は1096年。イベリア半島グラナダを奪還したのは1492年。学問・思想でもギリシア語文献はアラビア語に翻訳されていた。アラビア人はギリシアの思想や詩、歴史よりアリストテレスの理系哲学を「学問の最高峰」とみなしていた。十字軍による道路整備でこれらのギリシアの文献が翻訳される。これが「一二世紀ルネサンス」。ヨーロッパの知識人はアラビア語を学び、アラビア語の研究文献をラテン語に翻訳。そして15世紀後半ギリシア語原典からラテン語翻訳の時代になる。
〈そもそもルネサンスは「始原」からの「再生」の意味で、これまで日本では「文芸復興」と訳されてきたが、文芸よりも美術の分野でのほうがはっきりと、中世とルネサンスの違いがわかりやすい。〉
美術、文芸が進化し、さらに「ヘレニズム文化」の多神教=異教の文化が流入する。
一方、錬金術の対象は鉱物。金銀に変える。鉱物の裡に霊魂の存在を認め、救済する。これこそ妖しい術だが、医学・化学の発展につながる。
表題の「ポルタ」はガリレオと親交した自然魔術師。『自然魔術』全20巻を刊行。磁石とレンズについての論考は現代も評価されているそうだ。
「ニュートン」は万有引力のニュートン。「最後の錬金術師」と呼ばれる。
〈錬金術にたいしても、合理的精神で臨んだ。合理主義的に実験や検証を重ね、金属変成が実現可能であることを証明しようとした。錬金術に手を染めた、という点では「前近代的」であったが、その手法が「近代的」であった。〉
著者はイタリア・ルネサンス文学文化論専門。小説家でもある。「海鳴り」(編集工房ノア)で名前発見。
(平野)