2013年10月21日月曜日

白孔雀


 『訳詩集 白孔雀』 西條八十訳  岩波文庫 700円+税 

 西條は童謡詩と歌謡曲作詞で知られるが、詩人で早稲田仏文の先生だった。

 191927歳で第一詩集『砂金』(尚文堂)を出版、翌年訳詩集『白孔雀』(同)。

「序」より。

……私に云はせれば、訳詩は語学者の仕事では無くて、詩人の仕事である。さうしてそれを試みる詩人の芸術的天分が逸(すぐ)れてゐればゐる程、その訳詩は価値あるものとなるのである。

 勿論私は語学者としてゞは無く、詩人としてこれらの詩篇を訳した。……

 

 短いのを。

 

酒の唄  ヰリアム・バトラー・イエーツ

酒は唇(くち)よりきたり

恋は眼(まなこ)より入る

われら老いかつ死ぬ前に

知るべき一切の真はこれのみ。

われ杯を唇にあて

おんみを眺めかつ嘆息(ためいき)す。

 

――大都の中を僅かの銭を懐にして――  ヂョン・ミリングトン・シング

ふらり、ふらりと、わが行けば、

どの街路(とほり)にも雪はあり

されど男女(なんにょ)も、犬ころも、

われを知るもの町に無し。

 

並ぶ小店のどれこれも、

猶太人(ぢう)も波蘭人(ぽうる)もわれは知る、

石炭(すみ)の嚢(ふくろ)の倹約に。

夜昼われは彷徨へば。

 

(ぢう=ユダヤ人 ぽうる=ポーランド人)

 

  日記 1020日 日曜日

東京から送られて来た「神保町ブックフェスティバル」パンフいろいろ。
 
 
(平野)