■ 『訳詩集 白孔雀』 西條八十訳 岩波文庫 700円+税
西條は童謡詩と歌謡曲作詞で知られるが、詩人で早稲田仏文の先生だった。
1919年27歳で第一詩集『砂金』(尚文堂)を出版、翌年訳詩集『白孔雀』(同)。
「序」より。
……私に云はせれば、訳詩は語学者の仕事では無くて、詩人の仕事である。さうしてそれを試みる詩人の芸術的天分が逸(すぐ)れてゐればゐる程、その訳詩は価値あるものとなるのである。
勿論私は語学者としてゞは無く、詩人としてこれらの詩篇を訳した。……
短いのを。
酒の唄 ヰリアム・バトラー・イエーツ
酒は唇(くち)よりきたり
恋は眼(まなこ)より入る
われら老いかつ死ぬ前に
知るべき一切の真はこれのみ。
われ杯を唇にあて
おんみを眺めかつ嘆息(ためいき)す。
冬――大都の中を僅かの銭を懐にして―― ヂョン・ミリングトン・シング
ふらり、ふらりと、わが行けば、
どの街路(とほり)にも雪はあり
されど男女(なんにょ)も、犬ころも、
われを知るもの町に無し。
並ぶ小店のどれこれも、
猶太人(ぢう)も波蘭人(ぽうる)もわれは知る、
石炭(すみ)の嚢(ふくろ)の倹約に。
夜昼われは彷徨へば。
(ぢう=ユダヤ人 ぽうる=ポーランド人)
◇ 日記 10月20日 日曜日
東京から送られて来た「神保町ブックフェスティバル」パンフいろいろ。
(平野)