■ 鶴見俊輔コレクション4 『ことばと創造』 黒川創 編 河出文庫 1400円+税
漫画、映画、漫才、落語、ストリップなど、大衆娯楽文化芸術批評。シリーズ最終巻。
「高級でない映画をおもしろく見てきた」
時代劇映画「振袖狂女」(1952年大映作品、川口松太郎原作、長谷川一夫主演)を、「面白いと思って見たので、どこが面白かったかを、自分でなっとくのゆくように再現」した文章。
この中で以下のように書いている。
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ぼくは、文化人たちと、好みの上でのへだたりを感じる。好みの上でのへだたりだけでなく、思想の上でも、へだたりを感じる。
理由は、こどものころの経験のちがいにあると思う。ぼくは、はじめの記憶をたどってみると、最初のものと思われるものの一つが、新聞の上に大きくインサツされた殺人鬼オニクマの顔だ。これが四歳のときで、そのあと、よみものとして、宮尾しげをの「団子串助漫遊記」「猿飛佐助」「一休さんと珍助」「今べんけい」「足りない茂作」などがあった。
……
(「オニクマ」 1926年千葉県で起きた殺人事件。岩淵熊次郎が女性関係のトラブルで4人を殺傷し逃亡の後、自殺)
本の綴じがバラバラになるまで読む。小学2.3年生になると講談本。「ほおがこけて真っ青な顔になるまで読んだ」。くりかえしてでも1日4冊読む。学校にも持って行った。教育上よくないと、優等生がたびたびカバンの中を検査した。
そのころの読み物から「今の自分にひとすじ、つながっている」。交番の前を通るのがいやだった。講談本の主人公たちが政府の手先に追われたり殺されたりする話と警察・軍隊への憎悪・恐怖が結びついている。
……
ぼくの反抗は、こういうヤクザモノの風儀から自由でないということで、今ももろさを持っているが、しかし、政府が悪いものだという考え、権力者が茶化されるべきものとしてあるという考えは、漫画と講談とが、ぼくの心の深くに植えてくれたものとして今日もあるのだ。そのあと、トマス・ペインとか、エマソンとか、クロポトキンを読んだが、これらの人の書物が、漫画や講談の影響をぬぐいさり、それらに完全におきかえられるものとして、出て来たのではない。前のものの残した痕跡は、ぼくの上に残っている。
……
◇ 日記 10月24日 木曜日
ゴローちゃんのリツイートにあった、「くらおり」の「いとをかし」に【海】がモデル云々、というのが気になって検索すると、『まんがくらぶオリジナル』連載漫画であった。
[海本堂書店]、F店長らしき[店長]も登場。
JR灘駅近くの古本屋さん「ワールドエンズガーデン」企画「海文堂思い出の一冊」。
空犬さんから吉祥寺書店員の皆さんが作られたフリーペーパー「ブックトラック」をいただく。
NR出版会からも「新刊重版情報」到着。
書店員でなくなったのに。
ありがとうございます。
(平野)