■ 大屋幸世 『百円均一本蒐集日誌』 日本古書通信社 2000円+税
おおやゆきお、1942年前橋市生まれ、元鶴見大学教授、日本近代文学研究。著書に、『大屋幸世叢刊』(1~7、本書が7になる、日本古書通信社)、『蒐集日誌』全4巻(皓星社)など。
本書は研究者としての蒐書や書誌学ではなく、古書店めぐりで集めた本について。それも全国チェーンの新古書店の100円均一本ばかり。1軒だけ専門的大学近隣の「多少専門的な古書店」もある。
……この一年半強で手にした100円本を掲示した。四、五十年後には、これらの書籍、雑誌が百円均一であったのかと、あるいは驚くことになるかも知れない。言うまでもなく、現在、古書業界はある曲角にあると言ってよい。すべてが値下がりしている。初版本というのをいまだにこだわっている人の数は、ずい分と減っているのではなかろうか。三島由紀夫の初版本など、かつては考えられないほど値が下がっている。一番目につくのは、全集の類の値下りである。ある個人全集が一万か、二万円かという値で、もし私の家の書庫がもっと広ければ、購っておいてもいいのではないかとも思う。しかし、老いつつある私としては、いまさら全集でもない。無職、年金生活者となった私には、何でもいいから、読み逃している本、あるいは好奇心が向けられる本、そういうものを手にして、ただやたらと読みたいだけである。……
2013年4月28日購入の本は、西村賢太『苦役列車』(2011年、新潮社)、福島泰樹『蒼天 美空ひばり』(1988年、デンバー・プライニング)、木村虹雨『辞世の一句』(19921年、角川書店)、三國隆三『鮎川哲也の論理――本格推理ひとすじの鬼』(1999年、展望社)、大下英治『トップ屋魂――週刊誌スクープはこうして生まれる』(1992年、KKベストセラーズ)、『季刊 本とコンピュータ』1998年春版(トランス・アート)。
小説、近現代史から映画・美術雑誌、美術展図録、戦記、新選組にUFO本も。
読んでそれぞれの感想も書く。確かに“古本”なのだが、著者は読んで、現在の社会や文学の問題を考えている。
例えば、NHKスペシャル取材班『ワーキングプア――日本を蝕む病――』(2007年、ポプラ社)を熟読して、
……ここに描かれた事態はリーマンショックの不況以前のものだ。今はもっと深刻なのではないか。ずっと以前、吉本隆明が日本総中層化ということで、〈転向〉論を書いたが、その中流化ということが、まったくの幻想でしかなかったということだ。親子四人で年収二百万円以下がプアの規準らしいが、自分の現在の事態で心配するのは、老夫婦二人の年金プアだ。……
戦記を一度に何冊も買って、あの戦争を侵略戦争ではなかったと主張したい人に、
……その向きの人たちには、こういった戦記を読んで欲しい。この戦争で死んだ、というより殺された人たちがどれほどいるか、よく考えて欲しい。
(平野)
本書、人に頼んで東京で買ってもらった。元町商店街HP更新。
http://www.kobe-motomachi.or.jp/