2015年2月12日木曜日

プリニウス


 ヤマザキマリ とり・みき

『プリニウス』  新潮社 各660円+税

雑誌「新潮45」連載中のコミック。古代ローマの博物学者プリニウス中心に描く歴史ドラマ。


(プリニウスは古代ローマの精神を丸ごと体験するような存在(ヤマザキ
 ヤマザキは『テルマエロマエ』(古代ローマ人がローマの浴場と現代日本の風呂をタイムスリップするコメディ、映画にも)で大ヒット、イタリア在住。とりもギャグマンガの人だったと思うが、日本神話や民俗学をテーマにした作品もある。その二人が合作する歴史人物評伝。物語の舞台は皇帝ネロ統治下。
 プリニウスは政治家で軍人。海外領土の総督を歴任し、土地土地の森羅万象を記録に残した。天文学、地理学から動植物、鉱物、さらに人間の技術、芸術まで。怪獣、魔術もある。真実と幻想・空想が入り混じっている。

 

プリニウスの記述をあまり真面目に受けとると、とんだ苦労を味わわされる羽目になることがあるから用心しなければならない。(略)しかし、それではプリニウスの記述の大半は信用ならぬ空想的なものばかりかというと、決してそうではなくて、ふと洩らされた片言隻句のうちに、なかなか意味ふかい民俗がとらえられていたりする。……澁澤龍彦『私のプリニウス』(1986年青土社、現在河出文庫)
 
 とり 『博物誌』は、それこそ何世紀にもわたってヨーロッパの多くの知識人が参照し、引用した「古典中の古典」ですが、近世ごろから化学が」発展してくると、「ちょっとここの記述は怪しい」と、非科学的な部分がどんどん切り捨てられていく。でも澁澤や我々のような人間にとっては、その部分こそが……
 マリ 面白い。だからイタリアの文学者や研究者に「『博物誌』がいかにすばらしいか」を語っても、「え、あんなのもう読まないよ」と半笑いで言われます。

(平野)