■『勝手に関西遺産』 朝日新聞大阪本社 非売品(新聞購読者は申し込めば新聞と一緒に届けてくれる) A4判23ページ
「朝日新聞大阪本社版夕刊」名物コーナー「関西遺産」。関西ならではの言葉、風習、名所などを「“勝手に”遺産として認定」している。連載10年を記念して冊子を刊行した。
……書き手の思い入れと愛情がつまったものばかりである。神社仏閣から劇場、店舗、看板、食べもの、言葉や習慣、個人に至るまでジャンルは多岐にわたり、商品名もバンバン登場して、いずれも関西ならではの関西人精神が繁栄されている。言い換えれば、他の土地の人が欲しがるか欲しがらないかにまったく関係なく、「他にはないもの」。……(島﨑今日子)
10年の全491編から担当記者とイラスト担当のグレゴリ青山が投票で選んだ傑作10点、佳作5点を収録。
第1位は京都大学の折田先生像(2012.2.22)。旧制三高校長で、生徒をさんづけで呼び、一人一人の人格を重視した。京大の「自由」を象徴する像だが、学生が勝手に創作を施し出した。化粧したり焼きそばを頭に載せたり、セーラームーンやウルトラマンにもなった。97年、同窓会が「いたずらにも限度」「批判精神がない」などの理由で像をキャンパスから撤去した。しかし、学生はハリボテの像を作り創作を続ける。ナウシカやゴルゴ13、てんどんまんも登場した。
本物はない。制作者が名乗り出ることも、ない。なのに、この情熱。「変なことが起きている」。
驚いたある助教授が「折田先生を讃える会」というサイトを作ると、学内外から写真や情報が寄せられた。折田先生の業績を紹介するサイトもできた。
毎年入試日にハリボテが登場する。折田先生の一族も「自由な気風の伝統」と見守っている。
2位は「飛び出し坊や」(滋賀県の交通安全看板)、3位は「ワレ」(河内弁)。神戸ものでは「モロゾフのプリンカップ」(震災で高級食器は全部壊れたのに、カップだけは残った)が同票3位に。
(平野)