■ 西秋生 『ハイカラ神戸幻視行 紀行篇 夢の名残り』
神戸新聞総合出版センター 1800円+税
西秋生(1954~2015年、本名妹尾俊之)は神戸生まれ、広告会社勤務を経て近畿大学経営学部教授、SF作家。
前著『ハイカラ神戸幻視行 コスモポリタンと美少女の都へ』(同社、2009年)で、かつて神戸で花開いた「ハイカラモダニズム」を追って、「往時の藝術家たちの残した作品をガイド」に「幻視の街歩き」を楽しんだ。稲垣足穂、谷崎潤一郎、中山岩太らの小説、詩、絵画、写真などを手がかりにした。本書ではさらに街を歩いて観察した。1920年代「都市の遊歩者」が、先端的な都市風景だけではなく忘れられた部分・失われようとしている部分を発見したように、「戦前のハイカラモダニズムの夢の名残を追って神戸の街を彷徨って」みた。《その全盛時から一世紀近くが経ち、水害や戦災、地震などの災害、あるいは折々の都市開発を経て多くのものが失われたとはいうものの、丹念に歩くと、片隅にひっそりと残る意外なものに遭遇することがある。
いまでは脳裡がすっかり戦前モードになってしまって、海岸通を歩けばオリエンタルホテルの重厚な独逸風造りを、トアロードを上って行けばトアホテルの赤い尖塔を、埃っぽい現実を透かしてはっきりと認識することができる。》
王子公園付近で道を訊ねられて、思わず「関西学院の正門のすぐ先……」と答えてしまったこともあった。西は足穂や今東光が学生だった時代の風景を歩いていたにちがいない。
序章 夢の街へ、街の夢を訪ねて
Ⅰ ハイカラのオリジン
世界一美しい〝異国〟 元居留地 異人館の街 山手雑居地 ボヘミアンの闊歩 トアロード
Ⅱ モダンの伝播と浸透
繁華街の古層 三宮界隈 鈴蘭燈の輝く下で 元町界隈 船長文化の開花 中山手界隈
Ⅲ 豊穣の後背地
夢のミクロコスモス 阪神間 山の麓 六甲・王子公園
Ⅳ 超俗の別天地
静謐な歴史の街 兵庫 明るい海と山と石と 須磨・明石
終章 時の彼方から
絵と装釘は西と関学で同じゼミだった画家・戸田勝久。
(平野)TVコマーシャル、ハイボールと唐揚げで「ハイカラ」というのがあるけど、ちがうからね。しょーもないこと言いですみません。