■ 『ほんまに』〈陳舜臣〉より(2)
「親族に聞く 素顔の陳舜臣」
伯父は親戚が集まっても口数少なく、みんなが喋っているのをビールを飲みながら眺めていた。
(平野)
弟・介臣さん
介臣さんは10人兄弟姉妹の末っ子、舜臣とは18歳離れている。兄は寡黙で、本当に真面目な人。
《作家としても兄としても感じていたのは彼が弱者に対して大変シンパシーを持っていたことでした。マイノリティーが居心地よくなるように常に考えていたように思います。生まれたときは日本籍、敗戦と同時にそうではなくなった。神戸は華僑が多いと言ってもマイノリティーには変わりない、一番ものを考える頃にそういうことになったことは兄を戦後、台湾に向かわせた要因のひとつかなと思ったりします。(中略)
神戸で活動を続けたのは神戸にふるさとを感じていたからだと思います。東京で振り回されるのもいやだったんだと思いますけど、書きたいものだけを書いていたいという気持ちが強かったのではないかなと思います。あとやっぱりメジャーよりマイナーを愛したこともあるんではないでしょうか。》
甥・友昱さん
7番目の弟のお子さん。小さい頃、家に遊びに行くと、お客さんが来ていて、一緒に食卓を囲むこともたびたび。あとから思えば、司馬遼太郎にも会っていた。伯父は親戚が集まっても口数少なく、みんなが喋っているのをビールを飲みながら眺めていた。
《私が子供の頃にはじまったNHK『シルクロード』で喋っている姿は普段見ている伯父とまったく違う印象だったのでびっくりしたことを覚えています。父もあんなに喋るとは思わなかったと驚いていました。伯父がテレビに出始めた頃、当時生きていた祖母は毎回すごく心配していたと聞いています。》