■ 『ほんまに』連載から(4)
内海知香子 「続
映画屋日乗 映画に新しいもの無し!?」
兵庫県映画センター勤務。映写機担いで学校や公共施設をまわっている。
「4DX」(シーンに合わせて座席が動いたり、水・風・煙・光などを体感させる)や「IMAXシアター」という高画質・高音質・特大画面やら、新しい施設や映写システムが登場している。上映もDJ付きとか、「爆音上映会」とか館内で踊ったりし声援していい「ライブ型」というのもある。
《……ネット配信で家のテレビやパソコン、スマートフォンで手軽にいくらでも映像作品が楽しめる今の時代、映画館もあの手この手を使って観客に足を運んでもらう工夫をしないとやって行けなくなっているわけです。》
これから映画・映画館はどうなっていくのか? 内海は、
《……実は設備(ハード)や趣向の目新しさで客を呼ぼうという発想は、今に始まったことではなく、映画界はその草創期から繰り返し行ってきたことなのです。》
と冷静に現状を認識している。
映画における数々の仕掛けや工夫、開発の歴史を紹介する。たとえば、1905年に登場した「ヘイルズ・ツアーズ」(遊園地の擬似列車体験装置)は「4DX」の原型だ。1950年には3Dも「立体映画」の名前で登場した。巨大画面は1950年代には「シネラマ」、60年代には「スーパー・シネラマ」が開発されている。DJ付きというのは昔の「弁士」でしょ?
「ライブ型」なんて、私が子どもの頃、ヒーローが駆けつけるクライマックスでは必ず声がかかったし、拍手も起きた。観衆がストーリーに興奮するというか、「映画」を楽しんでいた。
《そんなこんなを見てみると良くも悪くも映画界に新しいものは無いなとつくづく思います。だからその時代にしかない趣向はその時代に楽しむとして、本来の意味で真に新しいものはやはり映画の中にしか無いわけです。作り手も演じ手も、新しい才能は日々生まれています。》
作っている者が言うのもなんなんですが、特集・連載とも良い書き手ばかり(編集部は別にして)です。ミニコミにこのメンバーが協力してくれ、地元メディアが取材してくれるというのは恵まれています。ありがとうございます。
販売してくださる本屋さん、古本屋さん、それに他業種の皆さんにもお礼を申し上げます。
今号の特集について、年代の差というか、「陳舜臣」認識が編集部内でも温度差があります。40代になると関心がグッと落ちます。今号では私(60代)のわがままを通してもらいました。
『ほんまに』の立場上、やっぱり「神戸」という地域性は前に出したい。次号はどうするのか、ウダウダ話し合います。(平野)