■ 安田謙一 『神戸、書いてどうなるのか』 ぴあ 1500円+税
著者は1962年神戸生まれ、神戸在住「ロック漫筆家」。
《ポップカルチャーを中心にさまざまな媒体で執筆を行うほか、CD監修、ラジオのディスクジョッキーなど多岐に渡って活動。》(著者プロフィールより)まちを歩く。食べ呑む。本を買い読み、映画を観て、音楽を聴く。今のまちの風景を語り、なくなってしまった場所に思いを寄せる。
本書予告PV。
書名は見て気づくとおり、歌謡曲「そして、神戸」の歌詞「神戸、泣いてどうなるのか」から。この歌についても書いている。
《神戸を舞台とした、いわゆるご当地ソングだが、何度聴いても神戸の“画”を思い浮かべることはない。(中略)
にも関わらず「そして、神戸」が大好きだ。この曲の神戸という町への思い入れの薄さが、薄情を通り越して非情な世界を成立させている。歌詞は徹底的に乾いている。(略、女は棄てられ、靴を投げ落とし、花を踏みにじり)…と自暴自虐なアフェアを経て(比喩でないのかもしれないが)、夢の続きを見せてもらうために新しい恋を求める。》第二章 ぶらぶら歩く、神戸
第三章 神戸を読む、観る、聴く、買う
第四章 神戸の記憶
第五章 神戸育ちのてぃーんずぶるーす
イラスト・マップ 山内庸資 写真 永田收
第四章では海文堂書店のことも書いてくれている。閉店のときのことを「悲しい、残念、それより先に、困った、という言葉が出た」と。
《海文堂書店のいいところを説明するのは少し難しい。たとえば京都の恵文社一乗寺店のように、誰の目にも分かる特性はない。少し人口のある町ならどこにでも一軒はある(あった)、普通の大型書店である。気楽な面構えをしながら、それぞれの棚にはしっかり気が通っていた。親しさと頼もしさがあった。恵文社は京都ならではの本屋であり、海文堂もまた神戸ならではの本屋だった。》
独立した項目で取り上げている本屋は、トンカ書店、ちんき堂、勉強堂書店、口笛文庫と、古本屋さんばかり。文中にも古本屋さんが多く登場する。
(平野)
元町商店街WEB更新。