2015年12月25日金曜日

『ほんまに』連載(3)


 『ほんまに』連載から(3
 

市岡陽子 「新刊書店員 日々あれこれ 『ミナ ペルホネン』から見える、本の住所のこと」

 喜久屋書店阿倍野店勤務。店頭であれこれ考える日々。
『カーサ ブルータス』(マガジンハウス)という月刊誌について、

……おしゃれで、そして少し厄介な雑誌である。おしゃれ具合が多岐にわたりすぎて、メイン特集に応じて雑誌の置き場所が変わってくるのである。(中略、特集はインテリア、雑貨、旅、デザイン、建築、カフェなど)本屋の陳列にもちょっとしたセンスが試されるのである。》

 彼女が注目したのは同誌のムック版『ミナ ペルホネンと皆川明』(以下、ミナ)。ファッションブランドだそう(私はまったくわかっていない)。雑誌売り場のどこにあるのか探す。売り場を34巡してインテリア雑誌コーナーで見つけた。彼女にとって「ミナ」はファッションもしくはデザイン。ベストな売り場はどこなのか、近隣の本屋を回ってみる。
 最大規模店、情報誌棚で隣に『サライ』、『カーサ ブルータス』のバックナンバーもある。
 ファッションビル内の老舗は建築雑誌棚で平積み。
 セレクト系書店では入口で発見、隣に『つるとはな』、『マッシュ』。

……「リアル書店」の最後の砦は、担当者のセンスや気持ちの向け方が感じられるような並べ方であると思う。(中略)
……雑誌でも実用書でも専門書でも、本屋の売り場がジャンルを飛び越えた活発なクロス性や、基本を押さえた上での「遊び」や「余裕」が生まれれば、本屋はもっと楽しくなると思う。スタッフ総出で売り場全体を、クロスワードパズルを埋めるようにフォローしていけば、ジャンル担当者だけに任せきりで生じた穴ぼこもいつしか行き届くようになり、「自分が欲しいものを見つけに行く本屋」本来の楽しさをお客さまと共有できるのではないか。(後略)》

永田收 写真・文 「まちと古本屋と 〈春日野道・勉強堂書店〉」

 写真家、新連載。阪急三宮から東に一駅、「老舗の商店街の一つで戦前から戦後のある時期まで隆盛を極めた」場所。大工場がいくつもあって、工員さんの仕事は交代制、昼夜を問わず人通りが絶えなかった時代があった。阪神淡路大震災後、工場は移転し、集合住宅や公共施設ができた。

《その繁栄の余韻はいまでも商店街の喫茶店、飲食店の多さに感じることができる。だが、私の興味は商店街の中ほどにある古本屋・勉強堂さんにある。その昔、ふらっと入って郷土史関係の本が充実しているのを発見し、以来散歩の途中、立ち寄るのを楽しみにしてきた。》

 店主は二代目。先代が復員して露店から始め、昭和30年頃に店舗を構えた。二代目は昭和46年に家業を継いだ。高度成長の時期で深夜まで店を開けていた。しかし、商店街周辺の環境変化、住民の高齢化、本の世界もデジタル化が進むなど、店主は不安を覚える。

《しかし、客からすれば歴史を持つ店で、いつ言っても裏切らないものがあることは心の支えになる。勉強堂さんもそんな店の一つであり続けてほしい。勝手な望みかもしれないが。》

(平野)

『ほんまに』販売協力店追録  
【新潟市】 北書店  025-201-7466
【東京都】 MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店  03-5456-2111
【尼崎市】 街の草  06-6418-3511

 セ~ラ編集長からの情報。こんな本屋さん応援サイトができました。スタートしたばかりなのに、あっちこっち取材してはります。
「読読(よんどく)」 http://yondoku.jp/