2019年4月28日日曜日

すごい言い訳!


 連休中なかよしの小学生は韓国旅行にディズニーランド。忙しい。
 PR誌『ちくま』5月号(筑摩書房)、巻頭に橋本治がいないのは寂しいが、連載はどれも楽しみ。
 4.28 北野坂インフィオラータ(花と緑のイベント)に古本屋さん・愛書家が出店する「百窓市(ひゃくそういち)」、29日まで。拙著を一押しにしてくださり、感謝感謝。京都善行堂・山本さんとの対談本『漱石全集を買った日』(夏葉社)を出したばかりの清水さん(ゆずぽん)さんが来場。後日紹介。
 
 中川越 『すごい言い訳! 二股疑惑をかけられた龍之介、税を誤魔化そうとした漱石』 新潮社 1600円+税

 作家の言い訳というと、まず原稿遅れが思い浮かぶ。本書では、恋、金、無作法を詫びる、依頼を断る、失態を乗り切る、なども。
 一般人でも、切羽詰まったとき、また少しでもいい人と思ってもらいたいとき、言い訳めいたことを口にしてしまう。ホラをふくし、ウソもつく、責任を回避したり他人のせいにしたり、保険をかけ、ずる賢く、逃げようとする。
「記憶にない」は「言い訳界の横綱」だそう。

……まわしの色は玉虫色で、得意技は卑怯なネコだまし。「記憶にない」ことにしてしまえば、その事実があったかどうかについては、何も答えずにすむので、後で事実とわかっても責めは受けません。(後略)〉

本書は、〈……言い訳は言い方次第で、味わい深いものに変化するのも事実です。/その実例を文豪たちに求めました。彼らの手紙のなかに見受けられる奇想天外、痛快無比、空前絶後の言い訳を〉紹介する。イメージとは異なる文豪の素顔と文章の魅力が現れる。読書案内にもなる。

芥川龍之介の「二股疑惑」とは、フィアンセ文さんがいるところに、夏目漱石長女との結婚噂話が持ち上がったこと。文さんに手紙を書いた。
「夏目さんの方は向うでこっちを何とも思っていない如く、こっちも向うを何とも思っていません……僕は文ちゃんと約束があったから夏目さんのを断るとか何とか云うのではありません 約束がなくっても、断るのです」
 さらに、
「神様の前へ出ても恥ずかしくはありません (中略)死さえも愛の前にはかないません」
 と、疑惑を打ち消す。フィアンセと無事に結婚できた。
 芥川の箴言、
「言行一致の美名を得る為にはまず自己弁護に長じなければならぬ」(『侏儒の言葉』)

 他に、メルヘンチック白秋、謝罪プレー谷崎、恋のモンスター林芙美子、ビッグマウス菊池寛ら。裁判所の出頭要請を断る猛者もいる。
 定番の原稿依頼・督促では、相手を傷つけない、詩的かつ美文、挑発あるいは同情、信・疑、意味も意図不明など。凡人にはとてもマネできない言い訳の数々。

(平野)反省、謝るより言い訳している自分が見える。