2014年12月5日金曜日

「本が売れない」というけれど


 永江朗 『「本が売れない」というけれど』 ポプラ新書 780円+税 201411月刊
 書店勤務、編集者経験もある人。「哲学からアダルトビデオまで」幅広く執筆。
 
プロローグ ベストセラーは出したいけれど
第1章     日本の書店がアマゾンとメガストアだけになる日
第2章     活字ばなれといわれて40
第3章     「街の本屋」は40年間、むしられっぱなし
第4章     「中くらいの本屋」の危機
第5章     電子書籍と出版界
第6章     本屋は儲からないというけれど
第7章     「話題の新刊」もベストセラーもいらない
エピローグ どこから変えるべきか

 
 
 
 長い長い出版不況。本も雑誌も売れない。でも、出版社・取次・本屋の人たちは忙しい。
 本を読む人はそんなに減っているのか? アマゾンと巨大書店だけあればいいのか? 小さな本屋は潰れるしかないのか? 電子書籍は? ……
 流通改善、本屋の利益増、自主的仕入れ、返品、本屋開業……、業界の諸問題について提言をする。とはいえ特効薬はない。本と読者にとって何が重要かと、考えを立て直す。

 いちばん重要なのは「本」だ。(略)まず「本」を大事にしよう。「本」が生き延びるためにどうするか。
 次はその「本」を生み出す「著者」と本を読む「読者」だ。(略)
 すべては、この「本」と「著者」と「読者」のために何ができるからから問われなければならない。(略)出版社も書店も取次も、「本」を「読者」に手渡すためにある。
 現在の「本」を取り巻く状況はそのようなものになっているだろうか。著者が10年かけて書いた本が、書店の店頭から1週間で姿を消し、多くの読者が知らないうちに断裁されパルプになってしまう状況は、「本」と「読者」のためになっているだろうか。それどころか、出版社と書店と取次の経営のために、「本」と「読者」がないがしろにされているのではないか。

 出版業界の歴史と現状を考え、現在の「本」のことだけではなく未来の「本」も含めて「本」について考える。

(平野)
【海】閉店についても第4章で言及してくださっている。「ショックを受けた」そう。「閉店」について【海】スタッフは取材を受けていないはず。永江さんが情報を確認した「関西の出版社の社長」について2人ほど心当たりはあるが確信はない。
 最新の出版統計分析は[出版状況クロニクル]をご覧ください。
http://d.hatena.ne.jp/OdaMitsuo/20141201

2014年12月4日木曜日

露天商人の歌


 林喜芳 『詩集 露天商人の歌』 1958年(昭和3310月 B6 本文49ページ

目次  あるお客さんに 足を見てくらす毎日 照る日もあれば、くもる日もある さばくをあるく日々 いやな季節 なんのこともない一日 詩にならぬ商売 くさる日の詩 古本を売つてみる たいくつな日 はじめて夜店にでる 露天商人になれるか

『詩集 続露天商人の歌』 19599月 B6 本文32ページ

目次  足うらの如き顔 やれやれ人生 もの言えば唇さむい 雨にやられる 地べたの生活 この風景 坐つてゐる考え 大人のオモチャ 阪急電車で うすぐらい太陽の下で 或る日、休んで

いずれも自費出版100部発行

 
「露天商人になれるか」

裸 で
むき出しのボクが
商売人になれるか
なれないか
皿に
のつて
陳列される
街の片隅

 
陽にてらされて あつい
風にさらされて さむい
何か言はうとして 唇がいがむ
皿の上の
ボク
 
じーつとしてゐる

書影は『神戸の詩人たち』(神戸新聞出版センター、1984年)より。
大倉山中央図書館の郷土資料コーナーにあり。館内閲覧のみ。
林については本ブログ[2014.2.10]で紹介。
(平野)

2014年12月3日水曜日

言葉なんかおぼえるんじゃなかった


 田村隆一(語り)・長薗安浩(文)

『言葉なんかおぼえるんじゃなかった 詩人からの伝言』 ちくま文庫 880円+税 201411月刊
 1996年刊『詩人からの伝言』(メディアファクトリー)を再構成。
 田村隆一(19231998)東京生まれ、詩人。アガサ・クリスティーの翻訳でも知られる。長薗は『ダ・ヴィンチ』元編集長、創刊から2年「詩人からの伝言」を連載。解説・穂村弘。俳優・山﨑努「田村の隆ちゃん」寄稿。山﨑と長薗の対談も。
 結婚、別れ、美人、酒、教養などをテーマにして若者に語りかける。

「第四話 酒」
 旅先では地酒を飲んで土地の文化を知る、酒は愉しく飲むなど、酒についての信条を語り、酒に対しての礼儀を話す。

……酒を愛するということさ。男が女を愛するごとく。女が男を愛するごとく。だから、酒を愛するコツは、酒と会話することさ。(略)
 あなたも、愛する人と言葉をかわすように、酒とつきあってください。そうすりゃ、嫌でもマナーは良くなるんです。
 愛する人の前では、そうそう無礼はできない。そうだろう。
 なっ。

 この「なっ」で締めくくられる。
 

 書名は田村の詩「帰途」から。

言葉なんかおぼえるんじゃなかった
言葉のない世界
意味が意味にならない世界に生きていたら
どんなによかったか
 
あなたが美しい言葉に復讐されても
そいつは ぼくとは無関係だ
きみが静かな意味に血を流したところで
そいつも無関係だ
 
あなたのやさしい眼のなかにある涙
きみの沈黙の舌からおちてくる痛苦
僕たちの世界にもし言葉がなかったら
ぼくはただそれを眺めて立ち去るだろう
 
あなたの涙に 果実の核ほどの意味があるか
きみの一滴の血に この世界の夕暮れの
ふるえるような夕焼けのひびきがあるか
 
言葉なんかおぼえるんじゃなかった
日本語とほんのすこしの外国語をおぼえたおかげで
ぼくはあなたの涙のなかに立ちどまる
ぼくはきみの血のなかにたったひとりで帰ってくる
 1956年『ユリイカ』に発表。
(平野)
J堂で元町の老舗社長に遭遇。気さくに話をしてくださる。
「あんたとこがなくなって困ってんねんで!」
そんなん私に言われても~。

2014年12月2日火曜日

兵庫の素顔



 朝日新聞神戸市局編 『兵庫の素顔』 海文堂書店発行 1977年(昭和529月刊(¥1500の表示) A5判
 771月から6月にかけて、朝日新聞「第二兵庫版」「第二阪神版」に連載した「兵庫の顔」を改題して出版。



……港、山村、島、川、平野、山、海を、シリーズで追った。自然ではなく、そこに土着するひとびとの生活の諸相である。
 人生は環境と切れては営まれ得ない。人の営みには風土の顔が鮮明であった。何十年、何百年と受けつがれ、そこに住むひとびとが愛おしんで育ててきた生活の型が、生まなかに変るものではないことを、このシリーズの仕事で改めて知らされた思いである。……「あとがき」より

もくじ
神戸港  はしけ炎上 新幹船 独航船主 はしけの不安 岸壁の武士 最後の沖売り 通船の客 視界不良 海上都市 ……
雪の但馬  温泉町 とんど 夏ダイコン むらの企業家 途切れた道路 地縁選挙 杜氏組合 最小集落 牛と若者 ……
淡路島  ツバキたばこ 厄の宴 農民車 かけ橋音頭 防風最前線 土帰月来 一人芝居 海峡国道 若衆宿 ……
武庫川  ヤマメの里 オアシス ある自治 名塩紙 元漁師 民営水道 砕石 護岸のかげに ……
播州平野  炭坑節 城の番地 浜の祭り 山田錦 白鷺湖 柳田精神 七曲がり峠 ……
六甲山  外人墓地 人間灯台 軍艦ホテル 望郷 旗振り山 初代所長 風浴 ……
日本海  新鋭船 青い世界 浜の対立 分家の奨励 魚見場 村長さん 海の神社 栽培漁業 ……

 兵庫は広い地域で、異なる気候・風土・歴史がある。土地土地の人間の暮らしをルポ。
「神戸港」では、近代化する港の姿と、その一方、消えていくはしけ、肉体労働者、外国人労働者たちにもスポットをあてる。
「岸壁の武士」とは? 港湾労働者にはいろいろな職種がある。ネコ車(一輪車)で荷物を運ぶ「ネコひき」。陸上げした荷物を手カギでネコ車に乗せる「鉤(かぎ)」。ネコ車が運んできた荷物をかついで倉庫に運び込む「肩」。賃金が違う。岸壁や倉庫など陸の仕事が「沿岸」で、船での仕事が「船内」。「肩」は1回に60100キロの荷をかつぐ。ある日雇い労働者Aさん(当時50歳)に取材している。既に仕事は減り、月に5日あるかどうか。

……一日に百キロの袋を千個、百トンを運んだこともあった。港で「肩は武士」といわれ、一目置かれた。Aさんはいまでも日に四十トンはかつぐ。(コンテナ化で日雇い労働者の新規登録受付はなくなっていた)コンテナ基地には日雇い労働者の入り込む余地はほとんどない。それ以外の岸壁でもネコ車は姿を消し、ベルトコンベヤーがとってかわった。とりわけ、これまで特殊技能者として幅をきかせてきた肩の仕事は決定的に少なくなった。……

 執筆者の中にニュース番組のコメンテーターをしていた加藤千洋の名を発見。
(平野)
ギャラリー島田蔵書から借覧。
「ほんまにWEB」の月1連載、すべて更新。「お道具箱」はカバー折り。「しろやぎ・くろやぎ往復書簡」は山ガール・くろやぎの「精進」。「奥のおじさん」はいつもどりのふらふらブラブラ。http://www.honmani.net/ 
元町商店街HPも更新。「【海】という名の本屋が消えた」は村上華岳。
http://www.kobe-motomachi.or.jp/

2014年12月1日月曜日

須飼秀和展


 須飼秀和展 1129日~1210 12001900(火曜日は1800まで、最終日は1700まで) ギャラリー島田1F 078-262-8058

 案内DMより。
須飼秀和さんの充実した仕事には脱帽する。かつて郷愁を描く画家として谷内六郎、原田泰治をあげて、次代を担うと紹介したが、そういう俗流文言は不要であり、独自の須飼の世界を築き上げている。……島田誠

 
 
 
 


ギャラリー地下では「石井一男展」を開催。

  


初日、開場前から多くの方が詰めかけたそう。平日はゆっくりご覧いただけるはず。

(平野)
日曜日、ポストカード販売係おじゃま虫してきました。

2014年11月30日日曜日

戦争の教室


 『戦争の教室』 松本彩子、臺宏士、渡辺久浩、中島浩、神林豊編集
月曜社 20147月刊 1800円+税

 あの戦争を直接体験した人、その人たちの体験を聞いた人、各地の戦争現場に立ち会った人、戦争の不安を感じている人、災害体験を戦争と重ねる人、直接体験していないのに戦争の傷を背負わされている人、画家、作家、学者、建築家、ジャーナリスト、会社員、留学生……元慰安婦。戦前生まれの人から1990年代生まれの人まで80人が、「戦争」について様々な角度から語る、表現する。
 来年2015年は敗戦から70年目。当然のことながら戦争体験者はどんどん減っている。

……富国強兵を目指した旧憲法(大日本帝国憲法)下の約六十年間、日本兵の死者は膨大な数に上る。一方、日本国憲法下で創設から今年で六十年になる自衛隊員の死者はゼロである。もちろん、交戦していないのだから他国の兵士を殺害したこともない。「不戦社会」を長く実現できたのは、日本国憲法が三大原則の一つとして掲げている「平和主義」にあることは言うまでもない。前文には「平和」の言葉が四回も繰り返し登場し、九条が定めた戦争放棄は、日本国民が選択したそのための手段だ。不戦状態は、戦勝国の軍隊が占領した状況下で施行された憲法と言え、平和は当時の日本人自身が憲法に掲げた理想で、それを維持して来たのは、積極的に意識してきたかは別にしても、この社会の大半を占める戦後生まれの日本人であることは紛れもない事実だ。しかし、社会が戦争体験と縁遠くなるにつれて戦前の「戦争社会」が忍び寄っているという現実も一方にある。…… 臺宏士

丸木位里 丸木俊  大逆事件
澤地久枝  七十年前 私は軍国少女だった
坂崎重盛  兄・幸太郎さんの残した一冊の本
岩永文夫  パンパン考
植松憲一  『難民』、祖国を喪うひとびと アフリカからの報告
高取英  明治維新と戦争
高橋智  戦争と書物
会川晴之  アンジェイ・ワイダ監督が語る 戦争と平和
渡部潤一  宇宙から考える人類
佐藤哲郎  靖国 小唄の師匠と中国人青年
浅生ハルミン  荷風さんいえやけた・これあげる
李台  初心者ヘアドレッサーの戦争
伊藤範  家族 東北にて
丘山源  厚生省創設と「健康ファシズム」 戦争と健康
河田真矢  酒と平和
神足祐太郎  私の知らない戦争 祖母と父の間に
……

 最年少は1990年生まれの中国人留学生・程思睿(筆者略歴ページでは「遠睿」となっている。どっちが正しい?)。中国では戦争も革命もその後の貧困も知らない世代、「赤色教育」も受けていないそう。「90後(チュウリンホウ)」と軽蔑のニュアンスを込めて呼ばれる。

……なぜ祖父母が抗日戦争を語るときに、あれほど敵意や憎悪をむきだしにするのか、理解に苦しむ。と同時に、自分がそのような悲痛な体験をもたないということにも、ほっと胸をなでおろしている。でないと、かつての「敵地」を留学先にえらんでやってくることなど、思いもよらなかったにちがいない。……
 われわれは歴史に束縛され、それにかこつけて宿怨の由来やら報復の口実やらにすべきではない。もちろんわれわれは歴史を銘記すべきで、その残酷さを理解してこそ、ふたたび同じ轍を踏まずにすむのだ。たとえわれわれが身を置く平和の基盤がいかに脆弱なものだとしても、僕たちは二度とふたたび、大量殺戮ほかならぬ現代戦争をえらんではならない。そうでないと、後代の人間がもういちど僕たちが犯した愚行を思い返し、みずからの祖先がみずからの家郷をどうして破滅させてしまったのか、まったく腑におちず、嘆息をもらさずにはいられないだろう――これもまた断じて僕の望むところではない。……

 日本人の最年少は根本綾香(1989年生まれ、金融機関に勤務)。同期の女子たちと旅行に行く。未知の世界、非日常の日々で、日本とは違う歴史や環境に直面する。日常の場面に戦争の緊張があり、地雷の被害があり、血なまぐさい記念碑がある。

 安息のひと時である女子旅。しかし旅に出ると、思いがけず「戦争」に触れる。厳しい世界の現実と自らの未熟さに向き合わざるを得ない。……

 日本でもそのような現実を知ることができる。報道写真展には毎年足を運ぶ。恋人や家族を戦争で失ったら……、自分の身に置き換え考える。

 戦争と平和は、表裏一体だと思う。軍事的な意味での戦争を体験していない日本の女子たちには、想像力が不可欠になる。想像力を膨らませるためには、思う存分、気のしれた仲間と語りあい、思いを吐露し、自分を知ることだ。そして世界に目を向け、見聞を深め、五感で感じることだ。……

 戦争の危機は深刻だが、将来のことは若者たちに任せて大丈夫だと思う。
(平野)

2014年11月29日土曜日

ひょうご部落解放


 ひょうご部落解放』 2014年秋号 vol.154 
特集 兵庫の障害者運動 
ひょうご部落解放・人権研究所 頒価700円 

直販定期購読制、お申し込みはこちら。http://blrhyg.org/index.htm

 

表紙はWAKKUN。トンカさんが絵本紹介。 私は新刊紹介「おじさん読書ノート」を担当。

(平野)