4.30 桂米朝『上方落語ノート 第二集』(岩波現代文庫)。初版は『続上方落語ノート』(1985年、青蛙房)。
第二集では、他に「落語と能狂言」「わらべ唄と落語」「原典あれこれ」などの論考をおさめる。また、米朝自ら解読した浄瑠璃本を整理して掲載。
「先輩諸師の持ちネタ」の項で「須磨の浦風」という噺が出てきた。YouTubeで視聴、笑福亭生喬。暑い時期、大坂の豪商の家に紀州の殿様がお忍びで遊びに来るというので、涼を味わっていただく趣向を考える。冷たい炬燵や雪景色、それに須磨まで人をやって「浦風」を長持ちに入れて運んで来る。帰る途中で人足たちが暑さに負けて長持ちを開けて涼んでしまう。代わりに人足たちが封じ込めたのは……。江戸落語では、将軍の饗宴で須磨まで風を取りに来る、らしい。
古来須磨は畿内と山陽道の境、交通の要衝。「須磨の関守」の歌で知られる。貴族や社寺の荘園が置かれ、都を追われた有力者が隠棲することもあった。光源氏だって来た。風光明媚、今で言うリゾート地でもあった。気候温暖・空気清澄の環境により、明治には結核専門病院・保養院が設立された。海水浴も効果があるとされた。正岡子規も療養した。皇族の離宮や財閥や居留地外国人の別荘も建設される。
(平野)
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