■ 森隆行 『神戸港 昭和の記録 仕事×ひと×街』 神戸新聞総合出版センター 2014年11月刊 1600円+税
カバーデザイン:楠田雅史 イラストレーション:岩里佑也
著者は1952年徳島県生まれ。75年大阪商船三井船舶(現・商船三井)入社。2006年から流通科学大学商学部教授。著書に『神戸客船ものがたり』(神戸新聞総合出版センター)など多数。
本書では神戸港の発展を支えてきたさまざまな仕事を紹介する。かつての活気を思い返し、もう一度元気をと願う。
目次
神戸港の概要 航海士 神戸ポートラジオ 水先人 タグボート ラインマン 税関 沖仲仕と手配師 通船 艀 メリケン地蔵 バナナ埠頭 鳶と筏 神戸臨港線 シップチャンドラー 給水船 造船 外国人バー 海文堂書店 アリマ 土運船神戸港略年表
耳慣れない言葉がある。
「神戸ポートラジオ」は船と陸の情報交換の役割を果たす国際VHF海岸局、東洋信号通信社。
「ラインマン」、船の接岸・離岸時に渓流用のロープを掛けたり放したりする「綱取り放し作業」に携わる人。いわば“船の命綱”を握る縁の下の力持ち。「シップチャンドラー」は、船に食料品、日用品、雑貨を届ける事業者で、「船食」とも呼ばれる。最盛期には6~11社あったが、現在は3社。
【海】にもページを割いてくださっている。「神戸の大切なシンボルが消えてしまった」の言葉も。
「はじめに」と「あとがき」より
神戸の街は港を中心に栄えてきた。
……戦後、高度経済成長を背景に、造船業や海運業に支えられ、世界を代表する港として、活気にあふれていた時代があった。昭和三〇~四〇年代である。街は、港で働く人であふれ、朝から酒を飲む外国人船員の姿も多く見られた。
昭和40年代後半、コンテナ船が登場して沖荷役が減少し、艀もなくなる。日本人船員も激減する。コンテナ船は夜入港して朝出航。船員の上陸が減り、「外国人バー」が絶滅寸前など、船員相手の商売も難しくなった。
……神戸ならではの海事関係の書籍を取り扱っていた書店も、廃業してしまった。消え去らないまでも、かろうじて細々と続いている事業も少なくない。
港の仕事を支えた「人」、「熟練の技」があった。現在活躍するのは「高度にシステム化された港湾設備・機器」。
……神戸港を支えてきた名もなき人々の息遣いを感じ取ってくださることを願っている。
(平野)「ほんまにWEB」連載「さすらい月報」、今回はちゃんと更新。
http://www.honmani.net/