2014年11月24日月曜日

明治大正 神戸のおもかげ集


 荒尾親成編 『明治大正 神戸のおもかげ集――写真、版画に見る明治・大正の神戸(第一集 第二集)』 中央印刷株式会社出版部
 

 

 荒尾のコレクションをまとめたもの。「第一集」は19699月初版、752月再版。「第二集」は717月発行。「第一集」再版時に改めてセット組で販売したよう。

「第一集」。 1869年(明治2)の写真で北野から撮影したものがある。生田の森を中心に競馬場、西国街道、神戸港沖の外国船が見える。一帯はのどかな田園だった。南蛮美術蒐集で有名な池長孟の遺品から見つかった。
 明治初めの異人館、湊川神社、布引、元町など、町並みと観光名所。

「神戸港の大津波」(明治4)では汽船が陸に打ち上げられている。
「六甲山の鳴動騒ぎ」(明治37)、半年間にわたって不気味な地鳴りが続き、有馬温泉の湧出量が多量になり、大地震、大爆発かと大騒ぎになった。地震学者の調査で「心配なし」とわかり、市民は安心した。神戸新聞が「六甲探検記」を連載して読者が増えた。担当記者は江見水蔭(尾崎紅葉門下で当時有名な文人、関西に来たことが話題になったが、在籍期間は2年)。

「第二集」。新コレクションと荒尾の著書『神戸に来た史上の人々』(中外書房)を併録。
 明治初めの福原遊郭、幕末の居留地海岸、県庁舎、開港五十年祭など。
 インドの詩人・タゴール来神の写真(大正55月)がある。

 おもしろいのは村上華岳先生(当時29才)がいち早く船内にタゴール翁を尋ね、たいへん気に入られて歓談し、翁の見事なスケッチ画を残していることで、元来華岳先生は大の印度人びいき、晩年まで健康がゆるせば一度は印度へ行ってみたいと言いつづけられていた方。

(平野)〈くとうてん〉蔵書から拝借。