■ 広瀬安美 『神戸異人館』 保育者カラーブックス 1977年(昭和52)12月刊
当時北野町周辺と居留地、須磨・塩屋に残っていた異人館約50軒を、イラストと写真で紹介。
神戸における外国人居留地整備、洋館建築はイギリス人の土木技師・建築家たちの功績によるもの。その作業に直接携わったのは日本人の大工・左官・石工たち。彼らは外国人技師の要求に応えられるだけの技術をもっていた。
……日本人職人のあまり得意としていない石材を外国人建築家はふんだんに使っている。これは従来の日本民家にはないことで、基礎部分はもちろん一階ベランダの床材として花崗岩を磨きあげ、階段の装飾や暖炉まわりの大理石細工などは、恐らく日本人石工にとっては初めての経験であったろう。にもかかわらず外国人建築家たちはクレームのつけようのなお出来栄えに舌をまいたと思われる。……
大工にしても、社寺建築とはまったくちがう柱や腰板の装飾など、苦労はあったろうが見事に仕上げている。
本書刊行から40年近く経ち、異人館はさらに老朽化。震災で壊れた建物もある。個人の所有で処分されるものもある。減っていくばかり。地元の保存運動にも限界がある。
(平野)
10.31(続き)
すずらん通り〈キントト文庫〉で。表紙の絵は、旧E・H・ハンター住宅(ハンター邸)。