2014年11月27日木曜日

小村雪岱


 『小村雪岱――物語る意匠』 埼玉県立近代美術館監修 大越久子著 東京美術 2800円+税 20148月刊

 小村雪岱18871940)、埼玉県(現・川越市)生まれ。東京美術学校日本画科卒業、美術雑誌「國華」の口絵(古画の模写)、資生堂意匠部。1909年(明治42)泉鏡花と知り合い「雪岱」の画号を授けられる。14年(大正3)、鏡花『日本橋』の装幀で世に知られるようになり、その後鏡花本を数多く装幀。里見弴、大佛次郎、長谷川伸、子母澤寛ほか、生涯で手がけた本は二百数十冊に及ぶ。新聞・雑誌連載小説の挿絵でも人気を博し、舞台美術でも活躍した。

目次

小村雪岱――物語る意匠家
一 鏡花本の世界
二 ふたりの女
三 装幀の仕事
四 挿絵の仕事
五 雪岱のわすれがたみ
雪岱と蝶



「小村雪岱――物語る意匠家」より
……雪岱がその才能を発揮した装幀や挿絵、舞台美術は、作家や脚本家などの引き立て役に徹した分野であり、表現者として一歩引いているように見えないでもない。だが雪岱は、熟知した型を組み合わせたり図案化したりする展開力、すなわち「意匠」こそが、型を超えた個性に至ることを知っていたのではないだろうか。そのような意味で本書では、雪岱のどの分野の仕事にも共通する天性の魅力を「意匠」ととらえ、その才能を最も開花させた装幀と挿絵の世界を中心に紹介することとした。手がけた仕事はいずれも、まず「物語」ありき。作家や脚本家が提示する世界観を壊さずに、どのようにして視覚的に魅力ある造形を作り上げるか、そこが腕の見せどころである。写生と写実には興味がなく、人の手で拵えられた物が好き、と本人が語るとおり、時には潔いまでに説明を省略し、むしろ計算し尽くした構図の工夫によってみずみずしい驚きを与えようと心を尽くした。その心意気を意匠――今日で言うデザイン感覚――と呼ぼうというのである。……

(平野)
「朝日」11.26朝刊「リレーオピニオン 女と女(8)」に髙田郁さん登場。



 大学時代の友、遠く離れて暮らしていても助けてくれる。しばらく会っていない。
……でも何かあったら一番に駆けつける仲だと、お互いにわかっている。友達は自分の鏡のようなものだと思っています。……

その思いは「みをつくし料理帖」の澪と野江の物語にも反映されている。