■ 『佐々木マキ アナーキーなナンセンス詩人』
小原央明(こはら・ひろあき)編
河出書房新社 らんぷの本 1700円+税
「はじめに」より。
……
「佐々木マキ」という名前を聞いて、みなさんはどんなイメージを思い浮かべますか?
男性? 女性? (正解は男性です)
この不思議で中性的な響きを持つ名前は、聞く人によってさまざまに異なるイメージを呼び起こすことでしょう。
……
私は長いこと“女性”と思っていた。『やっぱりおおかみ」(福音館書店)の絵本作家で、村上春樹作品のイラストレーター、くらいの認識だった。
佐々木マキは1946年神戸市生まれ。京都市立美術大学中退。66年『ガロ』でマンガ家デビュー。69年『朝日ジャーナル』連載開始で上京。72年から京都在住。73年初の絵本『やっぱりおおかみ』。
短い東京生活だったが、『ガロ』の長井勝一はじめ周辺の人々は貧乏でも「気持ちのいい人ばかり」。林静一、勝又進、滝田ゆう、南伸坊ら。『朝ジャ』の連載も長井の推薦。しかし、マンガの仕事で食べることができたのは『朝日ジャーナル』連載の10ヵ月間だけ。『ガロ』はすでに原稿料の出ない雑誌だった。
発表するあてもなく絵を描いていた。美大の恩師秋野不矩が福音館の松居直を紹介してくれる。
理論社の編集者が、一時だけ目をつぶって童話の挿絵を描け、と言う。
「実はみんな佐々木さんに絵を描いてもらいたがっているんだけど、頼んで断られるのが厭だから言い出せない。ひとりやったらあとは芋づる式に依頼が来るから」
目次
1 マンガ世界 2 絵本の世界 3 イラストレーションの世界
4 絵本の世界 その2 5 資料編
コラム 林静一、俵万智、夏目房之介、南伸坊
4 絵本の世界 その2 5 資料編
コラム 林静一、俵万智、夏目房之介、南伸坊
植草甚一編集『宝島』の表紙(77年)や『思想の科学』連載(69~70年)の仕事もあった。
多彩な活動を編者・小原はこう紹介する。
「ひとことで言い表すことはできない」「正体を捉えることはできない」
……
でも、固定したイメージにくくることのできないこの軽やかさ。
捕まえようと思うとさっと身をかわして走り去っていくこの自由さ。(略)
この底抜けの自由は、世間の日常的な常識(コモンセンス)の世界に対して、「なんせんす」の旗印のもとに徹底抗戦をしかけています。
その闘いぶりの可笑しいことといったら!
ナンセンス&アナーキー。
それがマキさんの世界に入るための、秘密の合言葉です。
……
アカヘルが『うみべのまち』(太田出版)を
担当の【芸能】コーナーでずっと積んでい
た。その編者も小原。
◇ 日記 11月17日 日曜日
みずのわ出版『宮本常一離島論集』(全5巻、別巻1)完結。
刊行開始から5年、準備期間を含めると12年がかり。
地方の一人出版社の「志」。
F店長から「退職挨拶状」が私にも。律儀。
(平野)