2013年11月24日日曜日

イーハトーボの劇列車

 
 

◇ 日記 11月23日 土曜日
 日記に「妻」と書くと怒られるのでと西宮北口・県立芸術文化センター。

「イーハトーボの劇列車」井上ひさし作、鵜山仁演出 

出演、井上芳雄、辻萬長、大和田美帆、木野花、他 
井上ひさし版「宮沢賢治」評伝。
パンフレットより
……
 賢治は、東京に理想郷を求めては挫折を繰り返し、九度の上京の中でいつしか花巻に理想郷を見いだす。東京での出来事と上京する列車の中で賢治の童話から抜け出たような人物たちと織りなす夢のような時間が交差する。そして挫折の度に突然現れる背の高い、赤い帽子の車掌から手渡される「思い残し切符」とは……

……

 文学、音楽、農業・肥料研究、理想郷、エスペラント、法華経……。父の重圧と父への依存、妹の病……。賢治の才能、思想、苦悩。現在も続く食と農、それに「東北」の問題。

 最後に死の世界に旅立つ農民たちが語る。

 出稼ぎ農民。都会に行って金を稼いで納屋に耕作機械が並んでいる。

「この鉄の塊のために、おれは一年の半分近くも家を留守にしなければならなかったのか。……

機械めがけて頭をぶつけた。

妻たちは半年後家、男女の誤ちで自殺。

「百姓のおかみさん、冬も父ちゃんと一緒にいるように!」

米が高いと、テレビで都会の主婦が言っている。美容院やレストランで高いお金を使うのに。農民たち、口惜しくて酒飲んで灰皿ひっくり返して焼死。

「もはや米を必要としないのだ。必要じゃないから高いと思えて仕方がない。日本人はもう農村を必要としない」

寿命をまっとうした老人、「思い残すことはない。いや、待てよ。わしの寿命の三分の一を倅に、三分の一を妹にわけてやりたかったな。倅は二十歳で戦死した。妹は女郎に行った。兵隊と女郎と米、それから工員、これを村はいつも中央へ提供しておった。もう、やめた方がいい」。

賢治と思われる男、
「ひろばがあればなあ。村の人びとが祭をしたり、談合をぶったり、神楽や鹿踊をたのしんだり、とにかく村の中心になるひろばがあればどんなにいいかしれやしない……。日本では永久に無理かな」

死の世界の女車掌が答える。
「どんな村もそれぞれが世界の中心になればいいのだわ。そして農民がトキーオ(エスペラントで東京)やセンダード(仙台)やモリーオ(盛岡)の方を向かなくなる日がくれば、自然に、村の中心に広場ができるわ。だって農民は村をみつめるしかなくなるもの」

賢治らしき男、
「なるほどね。これからは百姓も頭がよくならなければだめだな」。
 
 本は単行本・文庫とも絶版。読めるのは『井上ひさし全芝居 その三』(新潮社)。



「みなと元町TOWN NEWS (みなと元町タウン協議会発行のフリーペーパー、A44ページ、商店街各所で配布)NO.256から連載開始しました。
「【海】という名の本屋が消えた」 
(平野)