2014年5月10日土曜日

昭和詩鈔


 萩原朔太郎編 『昭和詩鈔』 冨山房百科文庫 1977年(昭和5211月新装


昭和15年発行昭和詩アンソロジーを復刻。
表紙・扉 瀬川康男  解題 安藤元雄

序言 萩原朔太郎

伊東静雄、岩佐東一郎、春山行夫、萩原恭次郎、立原道造、中原中也、村野四郎、安西冬衛、北園克衛、中野重治、小熊秀雄、草野心平、三好達治、竹中郁、宮澤賢治、西脇順三郎、金子光晴、高橋新吉 ……(48名、180篇)。

詩形の変遷と昭和詩風概説 萩原朔太郎
序言より
 日本の現代詩は、和歌、俳句等の伝統詩に比し、発生以来まだ極めて日が浅い。(略、60年くらい、短期間で急速に進歩)しかし文学や芸術のことは、人間の情操に根をもつ限り、政治や国勢の変化に雁行しない。世界の地図が三度塗り代へられる間にさえも、芸術は徐々として無関心に歩いてゐるのだ。(略、後世の文芸史は半世紀の詩の歴史を1ページに書くだろう)しかし今日、僕等はその一頁中の一活字として生活してゐる。……

 朔太郎は時代を6期に分類する。

1 新体詩開明時代  歌謡、軍歌
2 浪漫派時代  鉄幹、藤村、泣菫
3 象徴派時代  有明、白秋、露風
4 口語自由詩勃興時代  柳虹、犀星、朔太郎
5 社会主義詩時代  民衆派、プロレタリア派
6 芸術詩復興時代  最近詩壇

 昭和詩を編纂するにあたり、年号の変化だけにとらわれず、「芸術詩復興時代」を主流に、「社会主義詩時代」に孤立していた詩人、社会主義運動に属した人でも本質に芸術家の節操を持った詩人は入れた。しかし、本書と同時に日夏耿之介編「明治大正詩鈔」が計画中(出版は実現せず)で、そちらに入るであろう詩人は入れなかった。
 やはり人選について批判があったよう。朔太郎は、洩れた人がいる理由として、
「文献の欠乏と、住所不明等による応答困難」を挙げている。編者の苦労。


「海」の字で目が止まる。1篇だけ。

「夕方私は途方に暮れた」  津村信夫

夕方、私は途方に暮れた。
海寺の磴段で、わたしはこつそり檸檬を懐中にした。
――海はつかれやすいのね。
女が雪駄をはいて私に寄り添つた。
帆が私に、私の心に還つてくる、
記憶に間違ひがなければ、今日は大安吉日。
海が暮れてしまつたら、私に星明りだけが残るだらう。

それだのに、
夕方、私は途方に暮れてしまつた。

(原文は旧字・旧かな)

(平野)
 どうして「海」の字が気になるのか? 海文堂の詩を作ってくれている詩人さんがいるから。発表できることを祈っているのですよ。

 発表できそうですよ。
“海文堂生誕まつり「99+1」”をお楽しみに!
記念展 5月31日(土)~6月11日(水)
ギャラリー島田 1階deux
海文堂ギャラリー&ギャラリー島田ゆかりの芸術家作品展(展示と販売)。
海文堂書店の歩みを写真と資料で紹介。
海文堂書店関連の出版物販売。
○100周年記念ポストカード作成・販売。
土日限定「古本市」。

 今月東京から移住してきた仙台出身編集マンが「なんか昨日いっしょにメシ喰って馬鹿話してたおっさんが、俺が故郷に帰るたびに馬鹿話しているおっさん相手に手紙を書いている」とつぶやいてくれていたスケベ面=私と四角四面顔=荒蝦夷土方の往復書簡神戸新聞5/85/9


「ほんまにWEB」奥のおじさんさすらい月報第2回アップ。
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