2014年5月15日木曜日

大岡信 現代詩人論


 大岡信 『現代詩人論』 角川選書 1969年(昭和442月刊

 30年以上前、三宮・後藤書店で購入。

目次
現代詩の半世紀 序章
金子光晴  草野心平と高村光太郎  中原中也  吉田一穂
中野重治  小野十三郎  西脇順三郎  村野四郎  滝口修造
三好達治  立原道造  丸山薫  田中克己
鮎川信夫  田村隆一  山本太郎  吉岡実  清岡卓行  飯島耕一と岩田宏  谷川俊太郎  前田耕
あとがき
装幀 日下弘



 大岡は1932年(昭和6)静岡県三島市生まれ、詩人、東京芸術大学名誉教授。本書は雑誌などに発表していた詩人論をまとめたもの。執筆時は明治大学助教授。
 最初に、大正末からの詩の世界を概説。ヨーロッパの新芸術運動の影響、不況・関東大震災による社会不安、労働運動、社会主義思想、モダニズム、抒情派、戦争詩。

 戦後の詩は、戦争体験・敗戦体験を詩の問題として思想化するという課題を背負って出発した。
 詩をたとえば主知主義とか現実主義とか抒情派とかの「イズム」で考える以前に、もろもろの価値の崩壊を前にして、人間と世界の総体の意味が問われねばならなかった。

「歴程」など戦前からの雑誌に加え、「荒地」「山河」「列島」他多くの同人雑誌が活動開始する。

 金子光晴
 金子光晴の位置は今なお決定していない、といったら奇異な感じを人に与えるだろうか。(略、同年代の詩人たちと比べて)大正、昭和という時代区分をまったく無意味にするような複雑な一貫性があり、その全容を納得のゆくようにとらえることは、今なお非常に困難なのである。……これからどんな仕事をしようとするのか、まだ予断を許さない……1961.10

 谷川俊太郎
 谷川俊太郎といういかにも響きのいい名前をもった、ぼくと同い歳の青年の詩をはじめて読んだのは、たしか一九五〇年の初冬のことだった。ぼくはそれを本屋の店頭で読んだ。なるほど、こいつは切れ味のいい詩だな、と思い、おれはこういう風には書けない、と思った記憶がある。十八歳の青年にしては、彼の詩はすでに明らかなスタイルをもっていた。それは、もっとも目立つ特徴として、じめじめしたところ、感傷的なところのまるでない、一種幾何学的な清潔さ、無駄のなさという性質をもっていた。この特徴は、その後今日に至るまで、谷川俊太郎の詩の大きな特徴でありつづけている。……1968.12

(平野)