■ 栃折久美子 『装丁ノート』 創和出版 1987年1月刊
目次
Ⅰ 本のいのち Ⅱ 五百年後の友に Ⅲ 装丁ノート
一九八六年――あとがきにかえて――
装丁 著者
「五百年後の友に」
図書館の蔵書がボロボロになって500年後まで残せないという問題。
パルプ紙に含まれる酸による紙の変質もあるが、製本の影響もある。“無線とじ”で、紙の寿命よりも先に本が壊れてバラバラになってしまう。日本には再製本の技術をもつ人が少ない。
本格的なルリユールという製本技術は大きな機械が必要だが、栃折はベルギーで習得したルリユールと和本の製本を結びつけた。
本というのは、いくら丈夫に作ったって、いずれは形を失うものだと思ってますけれども、(略)パルプ紙だって何十年かはもつわけだから、図書館で開けたりひろげたりを毎日やっても、紙の寿命がくるまでもつような製本方法を考えてあたり前だと思うの。
「装丁の意味」
……装丁という言葉の意味は、本当は「製本のしかた」ということ……
装丁=本をかたちづくること。その方法。
装丁(装幀、装釘、装訂)を表紙の絵やデザインなど見た目だけのこと考えていた。そう言えば「造本設計」と書くデザイナーもいる。
「日本のルリユール」
ルリユール(製本工芸)というフランス語も、いくらか定着してきたようだが、まだ違和感をもつ人も少なくないらしい。
洋本の歴史が版元製本からはじまった日本では、厳密な意味でこの言葉に相当する訳語はない。(略)和本の時代にさかのぼって考えると、どの辞書にもでている通り「製本・装丁」と訳したくなる言葉だということが良く分る。……
国宝「平家納経」などは日本の代表的工芸品。また、昔の人は手仕事で帳面(大福帳など)を製本して使っていた。
(平野)