2014年5月26日月曜日

燈火頬杖




5.24(土) 久しぶりに神戸市立中央図書館神戸ふるさと文庫。調べることはいろいろあるはずなのに、ふらーっと来たのでぼやーっと棚を見て回るだけ。
「浅見淵著作集」の第3巻だけが棚にあるので、「な~んでかっ?」と手に取る。パラパラめくると、R山とかK港、元町、居留地など地名が出てくる。「神戸」という文章もある。年譜を見ると「神戸市生田区中山手通」生まれ。ざーっと読ませてもらう。家に1冊だけこの人の本があるはず。未読。

 藤田三男編 『新編 燈火頬杖――浅見淵随筆集』 ウェッジ文庫 200812月刊
 
新刊本屋で入手可能。743円+税。

 装丁 榛地和(編者の別名)

 浅見淵(あさみ・ふかし 18991973)、神戸市生まれ、文芸評論家。父親の仕事で釜山、東京、神戸で育つ。神戸二中から早稲田大学。

(帯)徳田秋聲、瀧井孝作、井伏鱒二、梶井基次郎、尾崎一雄……親しくまじわった小説家たちを回想する芳醇な文章。

 忘れられた作家・作品を発掘し、時評では新人作家に目配りする。

「忘れられた作家たち」より
 日本の作家たちは、海外の大作家だけではなく無名の作家の作品からも影響を受けている。日本の文学全集は、「現代に栄えている作家の作品に重点」が置かれて「充分文学史的には」編集されていない。

……後世に至って消える作品もあろうし、これらの全集に収録されていない作家の作品で、案外、後世の作家に影響なりヒントなりを与えるものがあるかも知れぬ。……厳密な意味での文学史的編集をしたならば、商売にならないかも知れぬ。ぼくのいいたいのは、これらの全集のたいてい最後のほうにくっついている「大正小説集」とか「昭和小説集」とかいった巻に、その他大勢で収められている作品を、せめて文学史的に収録して欲しいということである。

 一般の人々に関心が持たれず、何かの理由で一流と二流の相違ができる。この二流作品を「できるだけ拾って置いて貰いたい」。それに、その時代に「一応嘱望されるなり、愛好された」作品も入れてほしい、と。「例えのちに立枯れの運命に遭っているとしても、当時はそれまでに無かった、なんらかの新鮮な新しい芽があったに違いないからだ」。
 浅見が参考に、と挙げる大正の作家たち。園池公致(きんゆき)、三宅幾三郎、関口次郎、松本泰、山崎俊夫、小島政二郎、木村庄三郎……藤沢清造。
 昭和では、中島直人、佐々三雄、古木鉄太郎(こき)。
 伊藤整『近代日本の文学史』でも名の出る人はわずか。

(平野)
5.25(日) J堂三宮店、白石一文サイン会。『快挙』(新潮社)に【海】を出してくださったことのお礼と、あえなく閉店してしまったことのお詫びを申し上げた。