■ 碧野圭 『書店ガール3 託された一冊』 PHP文芸文庫 660円+税
解説 島田潤一郎(夏葉社)
本と書店への熱い思い。書店を舞台にしたお仕事シリーズ。
真剣に仕事に取り組む二人は時には周囲と衝突もする。似た者同士の頑張り屋書店員、西岡理子と小幡亜紀。仕事のこと、家族のこと、それにいつもの舞台・吉祥寺と被災地をつなぐ物語。理子は今や大手の新興堂書店吉祥寺店店長兼東日本地区統括マネージャー。店を離れていることが多い。
亜紀は出産後、吉祥寺店に復帰。文芸書担当をはずれ経済書に。新米ワーキングマザーという立場は負担が大きいし、経済書にはあまり気が入らない。うるさいお客に苦手意識も。文芸書で張り切っているバイト学生をうらやましく思ったりする。
理子は新たに新興堂チェーンに入った宮城県の老舗「櫂文堂書店」も担当。店名はそのままにし、スタッフを残し、現場をはずされていた元店長を店長代理に抜擢して、リニューアルオープンに備える。老舗の伝統とスタッフの力量に懸けた。沢村は期待通りの働きをしてくれるが、理子に心を開いてくれない。沢村の被災地訪問――図書館、仮設住宅――に同行、彼の心の影を知る。
理子は“震災3周年フェア”を企画するが、沢村が推薦する被災者が製作するグッズを扱うことを躊躇していると、亜紀が背中を押してくれる。
「ただの本屋が被災地支援をする必要があるのか、という見方もあるわ」
「支援が第一目的じゃないです。本屋だから、うちの店で売れそうなものは売るということです。(略)売ってうちの儲けになって、おまけに人助けまでできるなら、最高じゃないですか」
副店長・市川はフェアに反対するが、亜紀たちの賛同と協力でフェア開催。
亜紀も選書に加わる。子どもの麻疹騒動を機に異動を受け入れる。
私が言うのはナニですが、碧野の本屋愛・書店員愛、それから【海】への思い、ありがたく拝読いたしました。
【海】のエピソードを取り入れてくれている。何より宮城県の書店ながら、船に関係のある「櫂」の字にして“かいぶんどう”を登場させてくれている。もちろん彼女が全国書店訪問で得た数々の話も生かされている。
本屋の閉店・廃業について、主人公たちは勤めていた店の幕引きを経験しているし、通っていた店の閉店も知っている。
棚作り、本にこだわる沢村と、売上げ重視の市川は対照的に見えるが、それぞれの経験で本を売ることの大切さを知っている。優秀な書店員はどちらも兼ね備えている……、と私が書くとおかしい。自分で思う。
解説の島田は営業で全国をまわり、本屋を愛し、書店員に愛されている。私、読んで、また鼻のあたりがムズムズした。
副題「託された一冊」については読んでください。決して“一冊”だけのことではないです。
それから、亜紀が理子を説得する部分、私の意見はもっと単純。
売りたい本(グッズ)は売る! それから、亜紀が理子を説得する部分、私の意見はもっと単純。