■ 『REAR 芸術批評誌[リア]』NO.32 リア制作室 450円+税
特集 本をとどける
制作から流通、そして後世へ――
さまざまな人の手を介しながら、その想いも伝えられていく。電子化が進む現代において、
物として残る「本」の未来について考えたい。
目次
対談:菊地敬一&古田一晴 本をとどける――芸術と通俗という葛藤の中で
コラム:ぼくたちの時代 島田潤一郎コラム:本を配達する――二年目の取次 川人寧幸
インタビュー:鈴木宏 ~知の方向を示す出版社~「読む」ことは考えること
古本屋の窓から見上げる空模様 鈴木創
雑誌記事データベース、芸術系大学図書館、月刊絵本と母親向け月刊誌の歩み、学術書、アーカイブ、美術館と出版活動 ……
菊地・古田対談 (進行)石橋毅史
(石)ネットのサイトで本の所在を知って、ネットで買わずにその古本屋に出向くというように、本そのものを探しに行くというよりは、人に会いに行くというのが、本屋に行く動機になっている気がします。そして、本屋の楽しみ方って、菊地さんが薦めるもの、古田さんが薦めるのはどういった本なんだろうというのが、ヴィレッジヴァンガードやちくさ正文館に行く動機になるのではないでしょうか。
(菊)最後は俗人性がいちばん克つと思う。品揃えもさることながら。(ハワイで見たおばさんの本屋が理想、レジで挨拶して人間的交流がある)もちろん品揃えはあるんだけど、それを超越するくらいの人間的な繋がりが、もし本屋でできるなら最高。(略)本屋って極めて人間的な職業ですよ、小売業で他にない。たとえば「上司に悩む本」とか「恋愛に悩んでる本」が出されれば、「はぁ~そうですかぁ~」(笑)。挨拶の本を聞かれたら、「今度スピーチされるんですか」ってね。そういう商売なんですよ。それは、他にはない。
菊地がヴィレッジヴァンガードを作ったきっかけになった(運命を変えた)という言葉を紹介する。
――本の真の実質は、思想にある。書店が売るものは、情報であり、霊感であり、人とのかかわりあいである。本を売ることは、永久に伝わる一連の波紋を起こすことである。(略)――(アメリカの書店経営者、ロバート・D・ヘイル)
(古)僕には座右の銘がないんですよ。つまり、経験知を捨てることができるのが経験知というか……。同時代意識と言ってもいいけれど、変わらない何かを守っているのではなく、いかに同じことをしないかが大事。僕の現場性っていうのは、店にじっとして居るんじゃなくて、様々な表現の現場に足を運んで、今起こっているムーブメントに立ち合うこと。そして、本屋での仕事の中で、僕が捉えた表層だけでない関連性を選書に還元していく。まだその途上、現在形にいるんだけどね。
(平野)
名古屋が活動拠点。ツバメ出版サービス経由で取次・一般書店に入ります。HP取り扱い書店にまだ【海】の名がある。寂しい。