◇ 【海】史 (9)―5
■ 『神戸読書アラカルテ』(5)
従業員寄稿、たびたび登場するのが「つつみたかひこ」。週刊時代は計7回で島田社長に次ぐ。彼についても情報は少ない。
第11号「『久坂葉子作品集“女”』を読んで(1)」が初。
「つつみ」について、仏文学者鈴木創士から何度かその名を聞いている。中島らもたちと三宮のジャズ喫茶仲間だった。
――もう何十年も前のことだが、海文堂で最初にコアな文学書や思想書のコーナーを造ったのはTという男である。彼はたまにジャズ喫茶にやってくると、ストレートウィスキーをクィっと飲み干して、そのまま何も言わずに店からすぐさま出て行くような男だった。もうずいぶん前に不慮の事故で死んでしまったが、彼は私の友人であった。――鈴木創士『焚書』(『ほんまに第15号』くとうてん発行より)
久坂がボーヴォワール愛読者であったことから、富士正晴が「彼女はもう四ヵ月生き延びて『第二の性』を読むべきであった」と書いた。しかし、「つつみ」の意見は。
――彼女の自殺指向はボーヴォワールによっても救われない。「女」としての生き方としてなら、私であったらシモーヌ・ヴェイユをすすめた事であろう。その頃ヴェイユの著作が日本に登場していたかどうかは知らないが、久坂葉子という人間が持っている業というものと、ヴェイユの持つパッションというものが、私の心のなかで妙に合致する。
(20歳前後の女性に変に背伸びした人はたくさんいるが)久坂葉子のようにドロドロした精神で自らの青春を食いつぶしているような女性に出会ったことがない。彼女のような女性を、現在に見つけようとする事自体、私自身の失われた21才へのノスタルジアであろうか……。「20才。これが人生のもっとも素晴しい年齢だなどとは誰にも言わせない」とはポール・ニザンの言葉だ。
私は久坂葉子という女性も「誰にも言わせない」自らの痛みのなかで作品を書いていたことを、思い浮かべるのだった。――
他に、「文学雑誌『使者』創刊」、「『アンアン』VS『ノンノ』」、「『ユリイカ』VS『カイエ』」など硬軟とりまぜ書いている。
◇ 『ほんまに』新規取り扱い店
【静岡】古書店
水曜文庫 054-266-5376 http://d.hatena.ne.jp/suiyouu-bunko/
【神戸】元町高架下(モトコー2)カフェ
プラネットEartH 050-3716-3540 http://プラネットearth.jp/
ありがとうございます。
◇ ヨソサマのイベント
■ 加川広重 巨大絵画が繋ぐ東北と神戸 2014
1/5~1/17 会場:デザインクリエイティブセンター神戸KIITOホール
11:00~19:00 14(火)休館、17(金)は15:00まで
入場無料ですが、一部申し込み制、有料イベントあり。
http://gallery-shimada.com/kagawa/
(平野)