◇ 誓いと夢
■ 『自選 谷川俊太郎詩集』 岩波文庫 より
「年頭の誓い」
禁酒禁煙せぬことを誓う
いやな奴には悪口雑言を浴びせ
きれいな女にはふり返ることを誓う
笑うべき時には大口あけて笑うことを誓う
夕焼はぽかんと眺め
人だかりあればのぞきこみ
美談は泣きながら疑うことを誓う
天下国家を空論せぬこと
上手な詩を書くこと
アンケートには答えぬことを誓う
二台目のテレビを買わぬと誓う
宇宙船に乗りたがらぬと誓う
誓いを破って悔いぬことを誓う
よってくだんのごとし
■ 坪田譲治 『新百選 日本むかしばなし』 新潮社 絶版 (私が持っているのは昭和48年16刷)より
「初夢と鬼の話」 福島のむかしばなし
金持ちの主人、正月三が日だけは使用人たちと一緒に食事。2日のこと、主人が「今晩見る夢の話を一分で買う」と言い出す。3日の朝、皆に尋ねるが「夢を見ず朝までぐっすり寝た」。一番下っ端の小僧だけが、「見ましたがお売りできません」。主人、買い値を上げてついに20両、それでも「売れぬ」の返答に立腹。小僧を舟に乗せて海に流す。餅だけやる。小島に漂着、サルに襲われるが餅を投げて逃げる。次は鬼の島で食われそうになる。餅では許してくれず。「初夢の話で勘弁してくれ、20両でも売らなかった話、だが、ただでは教えない」と言うと、鬼は千里万里の車と人の命を助ける針2本を交換条件にする。小僧はまんまと手に入れ車で逃げる。針で長者のお嬢さんふたりの命を助けて両方の家に婿入り、半月ずつ過ごす。両家の間を流れる川に虹のように光る金の橋が架けられた。
――小僧さんの初夢というのは、にじのような金の橋をわたってゆく夢だったそうであります。では、これでおしまい。めでたし、めでたし。――
装幀 町春草
(平野)
「晩鮭亭日常」に“アカヘル”の話が。左上リンクからどうぞ。