◇ 【海】史(10)―7
■ 『月刊神戸 読書アラカルテ』(7)
市井仁(いちいひとし)その1
外部寄稿者、ペンネーム。現在、活動の第一線からは引いておられるが、関西出版界のまとめ役・相談役というべき人物、Kさん。執筆時は仏教書・教育書版元在籍。
第14号 『本棚の片隅から 雑誌篇(Ⅰ)「ぶっく・れびゅう」(創刊号)』
第15号 『同上 雑誌篇(Ⅱ)「落丁」――書店読書誌の先駆――』
第16号 『同上 雑誌篇(Ⅲ)「面白半分」臨終号』
情報があふれ、個人誌から巨大マス雑誌まで、数多くの雑誌が生まれ消えた。情報化社会=「情報禍」社会と言われたのはひと昔前。その時代に神戸で「呱呱の声をあげた雑誌」があった。
それが『ぶっく・れびゅう』。
市井の紹介。
――厚口クリームコート紙の白い表紙の変型判、本文84ページ、特集は“ジョン・レノンと小野洋子”で両人の日本の首相へ宛てたメッセージや滝口修造、草森紳一、秋山邦晴といった筆者が特集頁に並んでいます。れびゅうにとりあげられているのは4冊、次がそのタイトルと書名と執筆者名です。
サヴィンコフの死 『牢獄』川崎浹訳・白馬書房 彦坂諦
釜ヶ崎と東大 『爆弾と銀杏』マイケル・ギャラガー/太田浩訳・講談社 仲村祥一
美術批評試論 『反体制の芸術』坂崎乙郎著・中公新書 川桐信彦
ロジェ・カイヨワについて 『人間と聖なるもの』小苅米晛訳・せりか書房 井上俊
そして、今は亡き辻まことの「石族譜」①溶岩という画文と、竹薮のあるじ富士正晴氏の主宰する雑誌についての興味深い裏話ともいうべき「同人誌『VIKING』小史」がともに連載の緒についています。――
市井は大学時代のサークル活動で発行人に会い、「雑誌の内容分析をしてみませんか」と言われ預かった。
――雑誌の瀟洒な体裁とエディトリアル・デザイン、あるいはタイポグラフィの扱いの新奇性に魅せられたことは憶えています。――
その後、発行人との接触はなく、雑誌がどうなったかも知らなかった。しかし、出版を志す若者に大きな刺激となったことでしょう。
――文化都市神戸では、今日もタウン誌をはじめとして、ユニークな版元の出版活動や、新聞社の出版事業も旺盛に続けられています。そうした中のひとつの思想表現活動として、『ぶっく・れびゅう』誌があらわれ、そしていつしか消えていったということを、神戸を愛する一読書人として記憶にとどめておこうと思います。――
市井は、雑誌は時代を写す鏡、と言う。
――1970年という年を、いや、1980年という年を知るのには、その年の主要雑誌の目次を繙けばいいんです。――
『ぶっく・れびゅう』について補足。
北沢夏音『Get back,SUB!』(本の雑誌社)に詳しい。
――『ぶっく・れびゅう』創刊号の特集「ジョン・レノンと小野洋子」は、アヴァンギャルド芸術の守護天使であり「精神上の父」である、瀧口修造の全面的な協力を得て、それまでまともに知られていないばかりか、スキャンダルに貶められてきた二人のアーティストの本質を、日本で初めて誠実に伝えようとする壮挙だった。――(同書、9P~12P)
特集=ジョン・レノンと小野洋子
ヨーコとジョンにおくる歌 瀧口修造
ジョン・レノンの残酷物語 植草甚一訳
なんて幸せなご時世だ――やりきれないものの殺意 草森紳一
詩集 GRAPEFRUIT 小野洋子
パイクの“ヨーコ・オノ論”について 秋山邦晴
……
第2号は同年7月発行、特集「チャーリー・ブラウンとスヌーピー」。
第3号は9月予定で原稿も揃っていたが、発行元が突然休刊とした。編集の小島は誌名を改め再出発。そのまま『SUB』創刊号として12月発行となった。
“伝説の雑誌 SUB”誕生前史。
『ぶっく・れびゅう』の書影はこちらで。
http://kanabaka.exblog.jp/14586928
「くとうてん」の在庫が少なくなってきました。ありがとうございます。
『ぶっく・れびゅう』の書影はこちらで。
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◇ 『ほんまに』新規取扱い店
【東京】
ジュンク堂書店池袋本店 03-5956-6111
読売新聞神戸総局K記者が取材してくれました。記事になるやろか?
(平野)