■ 髙田郁 『美雪晴れ みをつくし料理帖』
ハルキ文庫 620円+税
ハルキ文庫 620円+税
大人気シリーズなのであらすじ紹介はしない。
主人公・澪の料理人としての決意が固まる。
「食は、人の天なり」
毎回鼻をすすりながら読んでしまう。今回もそうなのだけれど、第4話「ひと筋の道」で涙ズクズクに。
つる家常連の版元・坂村堂嘉久(かきゅう)の嘆き。
……
「坂村堂よ、もう海文堂のことで何時までもそうくよくよと悩むな」
時分時を過ぎたつる家の入れ込み座敷からそんな声が聞こえる。
この刻限に版元と一緒に座敷に上がるとすれば、戯作者の清右衛門しかいないはずが、声を聞く限りそうではない。
「海文堂は実に良い店だったのですよ。清右衛門先生の本も、随分と沢山商ってくれていましたのに、あんなことになって。私はもう、無念で無念で……。今日、店の前を通りかかったら、既に薬種問屋に様変わりしていました」
……
「私には懇意にしていた物之本屋(もののほんや)を助けられなかった悔いがあり~」の文章もある。
大切な作品の中で、話には何の関係もない21世紀の小さな本屋のことをあえて書いてくださっている。私たちにはただただありがたいことですが、こんなことで作品や髙田の評価が下がってしまっては申し訳ないです。
(A)
そやけど番頭とか丁稚どんの行く末を案じてくれる一文があってもよかったんちゃう?
(B)
お前、さっきと言うてることちゃうゾ!
髙田さん、担当編集氏、春樹事務所の皆さん、心から御礼申し上げます。
(平野)