■ 頴田島一二郎(えたじまいちじろう)
『ふるさと名作散歩』 のじぎく文庫 1968年(昭和43)2月刊
頴田島(1901~1993)は東京生まれ、歌人。歌集の他、小説や菓子職人評伝『カール・ユーハイム物語』(新泉社)など。戦後尼崎在住、神戸新聞に長くエッセイを寄稿。
本書は、兵庫県を舞台にした小説作品を紹介。話の中で風物がどのように描かれているかを鑑賞し、現在との違いや知られざる一面に触れて、原作を読んでほしい、という思い。
鼠(城山三郎、神戸)、垂水(神西清、神戸)、仙石騒動(海音寺潮五郎、出石)、城(阿部知二、姫路)、乱菊物語(谷崎潤一郎、播州)、三ノ宮炎上(井上靖、神戸)、うたかた(田辺聖子、阪神間)、贋学生(島尾敏雄、神戸)、義理(太宰治、伊丹)、天国荘奇譚(山田風太郎、豊岡)、千姫春秋記(円地文子、姫路)、散華(高橋和巳、淡路)……全45篇。
五味康祐の作品に『麻薬3号』(1957年、文藝春秋新社)がある。終戦直後の麻薬犯罪物。ここに我が家の近所の風景がある。
暴力団の事務所。
「神戸市北長狭通りにある。元町駅と神戸駅の間だ。……」生まれ育ったのは、北長狭通7丁目。
「省線のガードと下山手六丁目筋の交叉するあたりに、鉄筋コンクリートのモダン寺がある。モダン寺と六丁目すぢと距てて、中山組の事務所がある。……」
小学校が坂を上ってこの真北。モダン寺は「浄土真宗神戸別院」で遊び場のひとつだった。
花隈周辺も出てくる。
(平野)