■ 君本昌久・安水稔和編 『神戸の詩人たち 戦後詩集成』 神戸新聞出版センター 1984年7月刊
山村順 諏訪山金星台
竹中郁 動物磁気
坂本遼 遺書その二
林喜芳 露天商人の歌
足立巻一 雨
富士正晴 小信
杉山平一 声 伊勢田史郎 廃れた運河から
多田智満子 花火
久坂葉子 りんご
小林武雄、亜騎保、青木はるみ、和田英子、季村敏夫 ……(48名、256篇)
神戸戦後詩年表 1945年~1983年
安水稔和 「わたしたちの街」
わたしたちの街では、道を歩くということは、坂をのぼること・坂をくだることを意味します。
まっすぐ歩いていても、いつのまにか、のぼっていくのです。くだっていくのです。いつのまにか、さっきの街を見おろしているのです。見あげているのです。
うっかり、なにかに気をとられると、とたんに、街が傾き、空が傾き、転げ落ちそうになります。海まで転げ落ちそうになります。
だからわたしたちは、風船とか、パンの入った紙袋とか、空っぽの旅行鞄とかを持つのです。わたしたちは、レモンを、ナイフを、ポケットに入れるのです。錆びた鉄管をかくしもったりするのです。心に鉛を流しこんだりするのです。
なにしろ、油断のならぬ街です。さて、いこか、もどろか、どちらへ曲がろか。
(平野)