2014年7月6日日曜日

神戸の詩人たち


 君本昌久・安水稔和編 『神戸の詩人たち 戦後詩集成』 神戸新聞出版センター 19847月刊


山村順 諏訪山金星台  
竹中郁 動物磁気  
坂本遼 遺書その二  
林喜芳 露天商人の歌  
足立巻一 雨  
富士正晴 小信
杉山平一 声  
伊勢田史郎 廃れた運河から  
多田智満子 花火  
久坂葉子 りんご

小林武雄、亜騎保、青木はるみ、和田英子、季村敏夫 ……48名、256篇)

神戸戦後詩年表 1945年~1983

 
 
 
 安水稔和 「わたしたちの街」

 わたしたちの街では、道を歩くということは、坂をのぼること・坂をくだることを意味します。

 まっすぐ歩いていても、いつのまにか、のぼっていくのです。くだっていくのです。いつのまにか、さっきの街を見おろしているのです。見あげているのです。

 うっかり、なにかに気をとられると、とたんに、街が傾き、空が傾き、転げ落ちそうになります。海まで転げ落ちそうになります。

 だからわたしたちは、風船とか、パンの入った紙袋とか、空っぽの旅行鞄とかを持つのです。わたしたちは、レモンを、ナイフを、ポケットに入れるのです。錆びた鉄管をかくしもったりするのです。心に鉛を流しこんだりするのです。

 なにしろ、油断のならぬ街です。さて、いこか、もどろか、どちらへ曲がろか。

(平野)