2014年8月1日金曜日

不参加ぐらし


 富士正晴 『不参加ぐらし』 六興出版 1980年(昭和552月刊  

装画・カットも著者。

 富士(19171987)、徳島県生まれ、作家、詩人、画家。父母の仕事で平壌、8歳の時神戸に。神戸三中から三高中退。様々な職業を経て編集者。31歳応召。47年島尾敏雄ら9人で「VIKING」創刊。芥川賞候補3度。自らの作家活動だけではなく多くの後輩作家を育てた。晩年は「竹林の隠者」「酒仙」などと呼ばれた。茨木市に記念館がある。
 本書はその「隠者」のエッセイ集。




「酒もつらいよ」

 庭にやって来る鳥たちの生態をながめながら。

 ヒヨドリとスズメとの合戦がどうやら終わったと思ったら、梟がホホホとなきはじめ、丘の端のわが家の便所の窓から見下ろすと、下の畑の上を燕が飛び交している。それをくたびれ果てた二日酔、三日酔、へたすれば四日酔かも知れない一向に冴えない目付で眺めている。
 毎日なまけて酒ばかりのんでいるみたいだが、これで結構いそがしい。用事をもってやってくる客が続々と連日やって来る。その用事を片づけつつ酒をのむ。酒をのんで酔っぱらいつつ用事を片づける。しかし、酔って眠ってしまった次の日にはすべて忘却のくせがあるので酔っている最中の勤労など覚えてはいない。又、来る客にも中々手強い酔っ払い振りをやるものがいるから、こっちも対抗してがんばらねばならない。(略、自分と客の豪傑ぶりと醜態を嘆く)
 自分の年を考えねば駄目であるなあと思うが、酒が入ると忘れてしまう。そのくせ、ひと月でもふた月でも、酒の瓶が目の先にあっても、てんからのまぬことがあり、しばしば酔っぱらい電話でなやましていた桑原武夫とか松田道雄とかの大先輩から、君、そんなに酒をのまんといるのは体に悪いで、などと忠告されているのだから訳がわからない。のんでもいかん、のまんではいかんでは、全く進退ここにキワマレリか。

(平野) 

 ヨソサマのイベント

 さんちか古書大即売会 

87日(木)~12日(火) さんちかホール

主催:兵庫県古書籍商業協同組合 078-341-1569 
ポスターは「もふもふ堂」。昭和の神戸市電風景、ここは元町商店街西側の入口、三越があった。

 

 

NR出版会HP連載・版元代表インタビュー
「若い世代が出版社をどう引き継いでいくか」 同時代社 川上隆さん
http://www006.upp.so-net.ne.jp/Nrs/top.html

子の帰省みやげ、タウン誌「かんだ」夏号。有名書店の新しい店長さん紹介記事がある。
 お客さんとのこと。尋ねられた本が売り切れたとわかっていたので即答したところ、お客は「なんで調べないんだ、パソコンを叩け」とおっしゃる。調べるまでもないことでもパソコンで検索しないと納得されない。
 でも、ひょっとしたらお客は、「売り切れです」だけではなしに、「次の入荷予定」とか、「再版未定」とかの答えがほしかったのかもしれない。
 接客対応はむずかしい。