◇ 【海】史(23)
■ アート・エイド・神戸(2)
○アート・エイド・神戸美術展
初期の活動資金は「亀井純子文化基金」から40万円の助成と、チャリティー美術展の売り上げ。3月1日から4月14日、13名の美術家が【海】ギャラリーで美術展を開催。海外からも出品があった。
売り上げ金の処理について、全額を義援金として神戸市に寄付すべき、という申し入れがあった。一つの“見識”である。しかし、実行委員会は、非常事態のなかでは必ず文化は後回しとなる、という立場。このような非常時にこそ、心を癒し、希望や勇気を与えるというアートの持つ一面が是非とも必要、と考える。資金管理のための「神戸文化復興基金」つくり、プールすることにした。公的基金への寄付も検討したが、民間からの寄付を受け付けなかったり、支出について議会の承認が必要など、自分たちの目的とは違うと感じた。「アート・エイド・神戸」はあくまで「文化による復興」を目指す。
「芸術で救えるのか?」という批判に答える。
それは無理や。でも人は空気だけでも、水だけでも生きられへん。「心」の問題は、どんな状況においてもっとも重要な事だ。(「報告 きんもくせい 2000年5月号 阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワーク発行」より)
美術展の経費(会場提供、人件費他諸経費)は【海】が負担。一部額装製作費のみ差し引き、売り上げ金560万円を「神戸文化復興基金」に入れることができた。
○壁画キャンペーン
「今、神戸は空から見ると、ブルーシート一色。街を歩けば、白い工事仮囲いばかり目につきます。あの美しい神戸はどこへ行ったのでしょう」
建設現場の仮囲いに絵を描こうというキャンペーン。新聞に発表すると、全国から30名以上の応募があった。3月4日、元町で第1弾。神戸在住のイラストレーターWAKKUNが2.5×8mの壁に描いた。「見えへんとこにもおりまっせ。友だちがいてよかった」
WAKKUNの作品はこちらで。
ゴールデンウィークにはJR三ノ宮駅構内で開催。その後、市役所、神戸国際会館など大規模な壁画制作も神戸二紀会や大学美術部の協力で実現した。
○芸術関係者緊急支援
文化復興活動に先例があった。94年1月のアメリカ・ノースリッジ地震での芸術家救援事業を、ニューヨーク在住の塩谷陽子さんが朝日新聞に紹介していた。少額だが持続可能な支援。
「バブルのはじけた今、不幸な事故にあった芸術家たちに数件、5万円なり、10万円なりの救援金を交付していくことは、低成長時代の日本にとっておあつらえ向きの、しかも長期間できそうな芸術支援……」島田はすぐに実行委員会にかけ、決定された。
緊急支援の対象として、今回の震災で住宅やアトリエや楽器や稽古場に大きな被害を受けた芸術関係者(照明や音響やマネージャーなど裏方さんを含めて)のうち
1 芸術家としての活動歴が十年以上であること
2 被害の状況、活動歴について確認できる同一ジャンルの二人の署名3 一年以内に活動を再開できる予定があること
この三件だけを要件とした。これもアメリカの例に学んだ。
募集の告知は新聞によった。第一次募集 平成七年四月実施 対象三十名 三百万円
第二次募集 平成七年五月実施 対象三十名 二百三十万円
一次募集に続いて、すぐに第二次募集に入ったのは、三十名の枠ではとても被災芸術家をカバーできないと判断し、また募金の集まりも順調であったことによる。基本的に一人十万円の支援金だが、夫婦で申し込まれたり、相対的に被害が軽微と思われる場合には五万円とさせていただいた。
(平野)
春の天気。ギャラリー島田「須飼秀和個展」(4月2日まで)、ギャラリーロイユ「戸田勝久展
春の星」(3月29日まで、木曜休廊)、KIITO「川西英が愛した神戸」(23日で終了)。「須飼」「川西」は紹介済み。
戸田勝久展はこちらを。http://g-loeil.com/galerieloeil/home.html