2014年3月10日月曜日

足穂 月球儀少年


 稲垣足穂 『月球儀少年  極美についての一考察』 

企画 高橋康雄  造本・装画 羽良多平吉  立風書房 1988年刊

 タルホ「少年」世界。全736ページ。

「少年愛の美学」「A感覚とV感覚」ほか……

夢がしゃがんでいる  鼻眼鏡  かものはし論  Aと円筒  RちゃんとSの話  きらきら草紙  彼等  ジッドの少年愛論  南方熊楠児談義  明治大正少年気質  ミシンと蝙蝠傘 ……

 



 ドイツの現代作家クルト・クーゼンベルクに、『壜』という好短編がある。老船長が、アラック酒の空きびんの内部に、パテで以て海や陸地をつくるというお話である。海は緑色の上に白い波頭をつけ、海岸には、家屋、塔付きの教会等々が設けられ、おまけに精巧無類の三本のマストのスクーナー船「オルナ号」が入江に浮かんでいるという趣向で、壜は飾り棚の上に載っけられたと。

 だれか、神戸港をこんな壜中に作ってみないか。もっとも閑静な神戸村時代でないのだから、神戸市はアブストラクト風に仕上げてもいい。さてこの美術品をストーヴの棚やピアノの上に載せるというのは、古風だ。では、どこへ飾ろうか。いっそ人間の体内に入れたらよかろう。すなわち美女のヴァギナか、美少年のエイナスの内部へ収めるわけだ。そして覗きメガネで覗かせたら金儲けになる。この「人体神戸館」の内部にはもちろん、無数の灯が灯らねばならない。

 僕だったら、BAGDAD:MAGIC CITY OF THE EAST と、お尻の入口に看板を掲げるであろう。そして何処からか賑やかな銅鑼と笛の音が聞えて、立ち並ぶミナレットやモスクの円蓋の上をバクダットの盗賊とお姫様が、こちらへ向って手を振りながら、飛行絨氈に乗って、三日月をかすめて通過する。

 HAPPINESS MUST BE EARND

 さあ、お次の方と入れ代わって下さい。 
「神戸三重奏 附録 内部バグダッド」
 
 A・O君からの長い手紙。
 東武鉄道で起きた通勤電車運休事件は、車掌室の非常弁を誰かがいたずらしたためだった。
 中学時代、ぎょう虫検査セロファン配布で『ウォー』という歓声。
 20歳のとき新聞配達のアルバイト。幼なじみの家に配達した時見た彼のショートパンツ姿。
「永遠の少年」的素質を持った友人のこと。
 それに「月球儀少年」のこと。
「子供の科学」に掲載された月球儀広告に写っている少年の「比類のない美しさ」。リーフレットも所有。写真は劣るが鉛筆で修正することで、「少年の持つ何故か極めて清潔な少年美に圧倒される」と伝える。

 なおその少年美にもとづいてある創作を考えましたが、題名だけで止まっています。ボクの力量不足が原因です。
『君の微笑のティコの光り(輝り)』
 なおこの月球儀少年は少し猫背のようです。かえってその方が惹かれるのはどうしたことでしょうか。  
「附録 月球儀少年」

(平野)