◇ 【海】史(23)
■ アート・エイド・神戸(3)
○アート・エイド・神戸文学部門 “鎮魂と再生のために”
文学部門では、詩人たちが震災体験を発表することになった。伊勢田委員長を中心に、和田英子他6名が呼びかけ人になり、3月12日から活動を開始した。詩誌発行人に趣意書を送り、発行人は同人・会員に呼びかけると、月末には155人から作品が寄せられた、4月17日「出版」というスピードだった。
『詩集・阪神淡路大震災』 詩画工房制作 海文堂書店発売 初版1500部 971円+税
表紙の絵 長尾和「二月十四日須磨大池町」
この詩集は大きな反響を呼び、最終的には、この種の詩集としては異例の四千部まで増刷された。難解だと言われた現代詩が平明となり、それぞれが命がけの体験をするか、目の当たりにするかで、いわば自分たちの詩作活動を問い直す意気込みで書かれており、説得力がある。
冒頭の詩は、杉山平一「1月17日 暁暗」。
1月17日 暁暗
導入部もなく 伏線もなくいきなりクライマックスがきた
往復ビンタさながら右から左から
何ものかに叩きのめされて
ゴー ドターン グワーン バリバリ の大交響楽を
伴奏に
ドラマは終わった
阪神の一変した すがた
一瞬のカットバック
何ということだろう在ったものが消え 在るべきものが無くなって
いまや 隠れていたものに気付かされた
水やガスが ひそかに地の中に走っていたことに
世界に開いた日本最大の窓が神戸港だったことに
日本中が神戸の靴で歩いていたことに
日本中の自動車が神戸の部品で走っていたことに
その神戸が止まった 足元を失って
危いかな ニッポン
だが神戸は支える 支えるだろう
無礼な若者 暴走の少年の隠れていた優しい心も見えてきた
鎮静と秩序を支える文化を持っていることも見えてきた
イギリスの放送は
神戸とは神の戸口の意味だと解説した見るがよい
戸口には早くも光が見えてくる
和田の「編集メモ」より。
阪神間の詩誌発行所・発行人、詩人宛に趣意書を30通郵送、それに電話。「避難先不明」で返送されたところもあった。当初はワープロ印刷の予定であったが、詩画工房・志賀英夫が「活字で出そう」と。
今日も被災地の公園のテント村に雨が降りつづいていた。「愛をありがとう」と書かれた手書きの横幕は、いつ外されるのであろう。青色のビニールシートはいつまで屋根屋根をおおっているのであろうか。心が揺れるのである。
5月27日、音楽部門主催のコンサート「こころの響き・大江光作品集から」で、詩人による自作朗読会が行われた。その後も朗読会が開催されるようになった。NHKラジオを通じて世界にも流れた。詩に曲がつけられ、96年1月13日「よみがえれ神戸 はばたけ兵庫の音楽家たち」で発表された。
詩集は、96年1月「第2集」、97年1月「第3集」と出版。さらに、96年1月には、画家と詩人が協力して、詩画集『鎮魂と再生のために 長尾和と25人の詩人たち』(風来舎)出版。売り上げ収益金は「神戸文化復興基金」に寄付。原画と詩はコープこうべに寄贈され、全国を巡回した。
『第1集』の寄稿者に、灰谷健次郎、寺島珠雄、多田智満子、栗原貞子を発見。
NR出版会HP連載「版元代表インタビュー」 新泉社 石垣雅設(まさのぶ)さん
http://www006.upp.so-net.ne.jp/Nrs/memorensai_42.html
「書店員の仕事 特別編 震災から三年」 いわき市鹿島ブックセンター 高木徹さん
http://www006.upp.so-net.ne.jp/Nrs/memorensai_43.html『ほんまに』第15号、増刷するそうな。大丈夫か?