■ 稲垣足穂 『生活に夢を持っていない人々のための童話』
第三文明社 1988年刊
解説 高橋康雄 造本・装幀 大塚惠子 カバー・扉写真 戸田智雄
天文学集。
私の耽美主義 童話の天文学者 フェヒナーの地球意識 朝日山の山桃の木に思う 須弥山さわぎ 私はいつも宇宙の各点へ電話をかけている 密教的なもの 男性における道徳 生活に夢を持っていない人々のための童話 物質の将来 糸屑巻きタルホノオト ……
表題作は1973年「海」に発表。
友人・山内は哲学、数学、物理学に詳しい。足穂は彼と東京天文台の辻技官を訪ねる。機械や観測の話のあと、辻が足穂に国際天文協会の特種パンフレットに書かれてあったインドの幻術家について質問する。幻術家は、地球の代わりに「須弥世界」=不思議な神の世界の実在を唱えた。パンフには、現代の物理学者がその「須弥世界」の可能性を論じ、さらにそれを建設した、とある。
これはあなたには多少参考になることだろうから、記されていたままにお話するがと、彼は前置きしました。
(お伽の須弥山では、五色の雲に乗った菩薩たち、修羅族、人面鳥身など天体のお化けが出没。目鼻のついた月、笑い転げる太陽、思索に耽る土星、威張っている木星がある。深海魚のようなホウキ星が住民に捕獲され、星々は灯火の代用になり食用になり幻覚剤になり……)
申す迄もなくこんな次第は、私が『一千一秒物語』を手はじめに次々発表してきた天体物の世界に甚だ似通っています。同様なことが当の辻氏にも思い当られた結果が、上記の質問となったのでしょう。彼は、天文学関係の新着文書中に見付けたその異質の小冊子を披いた時、私が書いてきている文芸作品も、てっきりこの伝統にヒントを得たのだと考え、天文学の専門家の自分に今日やっと知らされたニュースを、どうして私が夙くから知っていたのだろう、そんな不審を起こしたかのようでした。……
(平野)
◇ 特報 海文堂書店100周年企画
■ 海文堂生誕まつり「99+1」
記念展 5月31日(土)~6月11日(水)
ギャラリー島田 1階deux
○海文堂ギャラリー&ギャラリー島田ゆかりの芸術家作品展(展示と販売)。
○海文堂書店の歩みを写真と資料で紹介。
○海文堂書店関連の出版物販売。
○100周年記念ポストカード作成・販売。
○土日限定「古本市」。
【海】は昨年9月に閉店いたしましたが、本年6月1日が創業100年に当たります。
無くなってしまったものをあれこれ言わしてもらいます。ジタバタドタバタいたします。負け犬の遠吠えはしつこいどえす。
春です。GFたちからもメールがきはじめました。花咲く乙女たちよ!