◇ 【海】史(21)
■ 島田誠 『無愛想な蝙蝠』(1) 風来舎
装幀・伊藤重夫 カバー写真・松元省平 表紙装画・佐野玉緒 1993年11月刊
装幀・伊藤重夫 カバー写真・松元省平 表紙装画・佐野玉緒 1993年11月刊
島田の初エッセイ集。既に本稿で参考図書として登場。
目次
Ⅰ 絵をめぐる 旅に出る スペインの旅 ゴッホをめぐって 四国の小美術館をめぐって 信濃デッサン館への旅 東北の美術館を訪ねて 埋蔵画家発掘物語 ……
Ⅱ まちをめぐる ある小児歯科医の死 借りを返す意味 下村光治氏のこと 場外馬券場反対運動と元町まちづくり顛末記 市民メセナ 亀井純子文化基金のできるまで ……
Ⅲ ぼくをめぐる ぼくの闘病記 信念と頑固 拝啓 万引き諸君! 五十歳にして心朽ちたり ぼくが無愛想なわけ 蝙蝠男の嘆き 成長から成熟へ ……
【海】「ギャラリー・インフォメーション」を中心に、PR誌や外部に発表したものをまとめた。
書名について。
“無愛想” しばしば他人様から、とっつきにくい、無愛想であると言われる。(なぜ?)他人様がぼくを見かけるとしたら、ほとんど仕事中の姿であって(ギャラリーの机でワープロを打ったり、電話していたり、企画を考えていたり、数字とにらめっこ……)、時には眉間にしわが寄り、頭から湯気が昇っていることだってあるかもしれない。
無趣味人間の典型のようにも思われている。自分では多趣味だと思う。
ギャンブルをしないのは、実生活(事業)がギャンブルみたいなものだから。外で酒を飲まないのは、家で飲むのが一番うまいから。“グルメ”を気取らないのは、そうなるには三代必要と考えるから。カラオケをしないのは、学生時代コーラス部で歌うのは飽きたから。他にも他人様が“趣味”とすることをしないのは、自分のやりたいことが山ほどあるから。本を読みたい、音楽を聴きたい、世界中の美術館を見たい、演劇も映画も……。
だから遊んでいる暇なんかまったくない。
“蝙蝠” “無趣味”ゆえ人づき合いが悪い。
商売人仲間からは完全に「この男、変わり者につき……」とレッテルを貼られ、商売下手をひやかすように「文化人」と言われ、かたや文化人の先生方からは「なんで商売人が」と言われ、動物の仲間にも鳥の仲間にもいれてもらえない蝙蝠みたいなものだ。
カバーの“豚”は? 版元が本書のタイトルに「木登り豚」を提案。その題のエッセイがある。あれこれ役職をさせられて、断わっても説得されて引き受けてしまう。「豚もおだてりゃ~」をもじって。
(平野)