2015年10月24日土曜日

初日への手紙Ⅱ


 古川恒一編集 井上ひさし著 

初日への手紙 『紙屋町さくらホテル』『箱根強羅ホテル』のできるまで  白水社 3400円+税 

『紙屋町さくらホテル』は1997年新国立劇場柿落とし公演。『箱根強羅ホテル』は2005年上演。本書は、井上が台本完成まで劇場プロデューサー・古川に書き送ったファックスや手紙や、打ち合わせの内容を公開する。

「遅筆堂」を自称する作家には、「遅れる理由があった!」。創作の過程は、まさに骨を粉にし身を砕くもの。

『紙屋町~』は、築地小劇場出身の丸山定夫が率いる劇団「さくら隊」が広島で被爆した史実をもとにする。天皇の密命を受け各地を視察する元海軍大将、彼を監視する陸軍将校、日系二世のホテルオーナー、彼女を見張る特高刑事らを登場させる。彼らが劇の稽古に参加し、演劇の魅力に引き込まれていく。
 井上は、戦時下で弾圧された演劇人の立場、指導者たちの戦争責任、新劇の舞台手法、戦争に翻弄される庶民など、さまざまなテーマを喜劇に仕上げる。
 台本ができあがるまでの井上の奮闘、俳優・スタッフの苦労、加えて演出家は闘病しながらの作業。古川にとっては「修羅場」の連続だった。

《ひとり書斎に籠り、必死かつ真摯に戯曲創作に努める井上さんに身近で伴走する一方、稽古場で、これも必死で舞台作りに格闘する演出家や俳優さんたちにも間近に接している唯一の人間として、井上さんにも、稽古現場の演出家や俳優さんたちにも、何とか役に立ちたい、責任をはたさなければと思う毎日でした。》

(平野)
 本屋のブックフェア選書にイチャモンをつける人がいて、また引っ込める本屋があって。堂々と売ればいい。
http://www.asahi.com/articles/ASHBR5JQTHBRUTIL03R.html
http://news.livedoor.com/article/detail/10739594/