2021年2月25日木曜日

さくらんぼ咲く

  2.22 今年も壇のさくらんぼ咲く。最近近所の猫がウンチしていく。うちの花壇が気に入っているのか。



図書館、西東三鬼周辺が気になる。トーア・アパート・ホテル創立者「西川荘三(しょうぞう)」調べ。海運業界の重鎮、各種団体の役員を務め、経済雑誌にたびたび寄稿している。市会議員、同副議長、孫文支援。美術コレクターの顔もある。旧秋田藩藩主・佐竹家所蔵の「佐竹本三十六歌仙絵巻」が市場に出たとき、経済界の美術愛好家が海外流出を恐れ、切断・分割して所有することを計画。西川はその抽選会に参加し、「壬生忠岑」を入手している。引退後は地域活動、阪神大水害では復旧・復興の先頭に立った。ただの「船成金」ではない。没落(?)――ホテルや「忠岑」を手放すことになった経緯は不明。

もうひとつ山本通にあった「富士ホテル」。三鬼が神戸移住前に純愛の恋人(本人が強調している)と宿泊。その後、歯科医の仕事も家族も俳句も捨て、トーア・アパート・ホテルに流れ着いた。大空襲を予感した三鬼は富士ホテル近くの洋館を借りていた。いよいよ、という時に転居。トーア・アパート・ホテル住人たちも避難してくる。戦時中富士ホテルは海軍が使用。敗戦後は進駐軍が接収。場所は旧神戸女学院敷地内のよう。

2.24 孫がLINE電話で 絵本を読め、と指令。2冊、ねむいくせに聴いている。こっちもねむいけど、ヂヂバカちゃんりん。

自分の読書は、

 田中優子 松岡正剛 『日本問答』 岩波新書 2017年刊

先月出た『江戸問答』(同)を読む前に、こっちを先に。

江戸文化研究者と編集工学者が日本文化の多様性を語り合う。「日本という国がどんな価値観で組み立てられてきたか」(松岡)。「日本にあったはずの方法、しくみ、それを支えていた理念を、これからつかうために言語化しよう」(田中)。

キーワードは「デュアル(二重)」な思考。日本を語るための視点は、天皇と将軍、和風と漢風、雅びと鄙び、ケガレとキヨメ、公家と武家などなど。これらは「日本人がいきいきと愉快に生きていくためのデュアル(二重)で、リバース(表・裏)な関係」(松岡)。

「日本文化と言えるものが成立したそのはじめから真名と仮名、漢語と和語、学問と和歌、正と狂、伝統と俳諧、儒と仏、神とほとけ……かぎりなく挙げることができるこれらの対照性を帯びたものの共存が、そのまま日本文化であった。だとすると、単一性のなかに日本文化はない」(田中)。



日本エライ! 日本すごい! で高齢化社会や温暖化や大災害やコロナやバカバカ政治を乗り越えられない。

(平野)

2021年2月21日日曜日

半藤一利の昭和史

 2.18 何度目だ! また図書館休館日に来てしまった。いくら近所とはいえ、我ながら呆れる。カレンダーに先々まで印入れる。61012月第3木曜日は図書整理のため休館!

 予定変更して早めに買い物に出る。ひとり留守番なので食料少なめ。本屋さん、注文品他。

 2.19 職場マンションの廊下に通販荷物が置き去り。居住者に宛名の人はいないし、何より住所が違う。通販会社は電話通じず、メールせよ、の案内。宅配業者あちこち問い合わせるが、不明。地図で宛名住所を調べたら近所なので届ける。わて、ヒマなん?

 2.20 しろやぎさんからメールがついた。神戸新聞記者さんのコラムを送ってくださる。

 図書館調べ物。西東三鬼周辺人物、トーア・アパート・ホテルオーナー「西川荘三(しょうぞう)」のこと。神戸政財界で活躍したが、三鬼が神戸に来た頃にはホテルを手放していた。

 2.21 横浜みやげ。孫からおりがみチューリップ、手紙。書けるようになった「じいじ」と数字。東京メトロでもらえるフリーマガジンから、神保町記事と「いか文庫」コラム。

 


 文藝春秋特別編集 『半藤一利の昭和史』 文春ムック 1500円+税



 半藤少年は東京大空襲に遭い、生死の淵を経験した。背中に火がつき、川に飛び込んだ、溺れた、船に引き上げてもらった。川岸の人が燃え死んでいく姿を見た。焼け跡で考えた。

〈俺はこれからの生涯、二度と「絶対」という言葉は使わないぞ。「絶対に俺は人を殺さない」「絶対に自分の家は焼けない」「絶対に日本は勝つ」なんて言えない。そんなのすべて嘘だと思ったんです。川で溺れかけた時に、たしかに私は誰かの手を振りほどいてしまったんですから……。(中略)それと「なぜ、こんなことが?」という問いが、小さな炎を上げて私の身体をつき動かしました。(後略)〉

昭和史研究の芽ばえを語る。

半藤は最後の原稿に、趣味や楽しみがなく歴史研究に取り組んできた、と書いた。しかし、落語、短歌、版画、日本舞踊などかなりの腕前。ただ謡の師匠には、あなたのは浪花節、と言われた。

(平野)

2021年2月18日木曜日

あきない世傳 金と銀(十)

 2.14 地震一夜明けてのニュース、10年前の東日本大震災の余震、と知る。

 孫からヴァレンタインのチョコレートとメッセージ届く。字書けるようになった。ヂヂバカちゃんりん。お雛様におすそ分け。

 


 2.15 今回はわくわくしながら読めた。

 髙田郁『あきない世傳 金と銀(十)合流篇』(ハルキ文庫) 620円+税

主人公・幸(さち)は妹の裏切りと呉服商断念のどん底。いくらサディスト著者でもここまで落としたら這い上がらせるしかない。頼りになる友・仲間が江戸に集う。幸はあせらずじっくり知恵を絞り、商品を開発。仲間を信じ、彼らに支えられ、共に精進する。作る者、売る者、買う者、世のタメになる商いを目指す。

 いつもながら卯月みゆきの表紙カバーは美しい。著者の帯イラストはファンサービス。

 


 2.16 歯医者さん、買い物、BIG ISSUE401



 社会運動団体機関誌(季刊)に年3回本の紹介をしている。次号の校正ゲラで、担当さんから意見あり。私の舌足らずの断言で読者に誤解させてしまう箇所があった。恐縮して訂正。きちんと読んでくださっている。深謝。

 2.17 「月刊みすず 読書アンケート特集」(みすず書房)。毎年自分の学力不足(今更どもならん)を思い知る。私の知らない出版物が数多ある。それらを著し、出版し、販売し、紹介し、熟読しておられる方々がおられる。皆さんの努力に黙礼。自分が読んだ本が出てくるとうれしい。


(平野)

2021年2月14日日曜日

文字渦 禍ではない

 Web「元町マガジン」更新しています。拙稿は「諏訪山界隈(5)」。神戸女学院草創期。

https://www.kobe-motomachi.or.jp/motomachi-magazine/townnews/

 2.5 暖かい日が続いて、報道されるコロナ感染者数もどんどん減って、ちょっとゆるんできたかな。昼ご飯の後、本持ったままウツラウツラ。

 円城塔 『文字渦』 新潮文庫 710円+税



 単行本は2018年新潮社刊。川端康成文学賞、日本SF大賞受賞。

 書名にひかれる。ジャンルとしてはSFなのでしょう。漢字が主役と思ったら、かな、ルビも。仏典や老子、中国史から生物学やコンピューターの話まであって、私には難解。でもね、ポケモンバトルやら横溝正史・犬神家のパロディもある。ギャグ(?)もチラチラ。初めて目にする漢字がたくさんあるが、実際にある漢字なのか、著者考案・創作漢字なのか、私には自信を持って判断できる学力なし。たとえば表題作に「嬴(えい)」という人物が登場、その字の一部を変えた漢字が次々出てくる。刻々変化する人体・精神を表現しているだろうが、その漢字たちは存在するのか? まあ私が何かで使うことはないけど。わからないことはいっぱいある。そのままにしておく。わかる人はたくさん快感があると思う。時間を置いて読んだらわかることもあるだろう。

 読めない漢字を辞書で調べることはあっても、書くときは変換機能頼り。読めても書けない。

 コロナ禍が頭にあって、本書の「渦」を「禍」と書いていた。読んでいるときも「禍」と思っていた。はずかしい。

  睡眠読書は、黒川博行『騙る』(文藝春秋)。美術品ミステリー、いわゆる詐欺もの。年末年始ゴロ寝用だった本、今頃。

 


 2.6 「朝日新聞」書評欄で、柳原一徳『本とみかんと子育てと』(みずのわ出版)紹介。評者は武田砂鉄。「土地に根付いたものを更新し、同時に守り抜く、その姿勢に心を打たれる」。勝手に社主(著者)に成り代わって御礼。ありがとうございます。



 図書館、西東三鬼関連の神戸富豪のこと。大正・昭和海運業の資料に名前がよく出てくるが、出身とか出生など不明。亡命中の孫文に講演依頼、美術コレクターの顔もありそう。

 本屋さん、髙田郁『あきない世傳 金と銀(10)』(ハルキ文庫)出ていた。



 三宮神社,梅美しく開く。

 夜、寝床からテレビ。福島・宮城はじめ東北関東で地震のニュース。津波の心配はないようだが、不安な夜を過ごしていることでしょう。

(平野)

2021年2月7日日曜日

七人の旋毛曲り

  2.5 坪内祐三『慶応三年生まれ七人の旋毛(つむじ)曲り』(マガジンハウス、2001年)ようやく読み終わる。夏目漱石、宮武外骨、南方熊楠、幸田露伴、正岡子規、尾崎紅葉、斎藤緑雨。文学史、文化史に名を残す7人、慶応31867)年生まれ。

大正51916)年、漱石死去直後、外骨は自らの雑誌「スコブル」に「七赤金星男は旋毛曲りと胃病」と題して記事。漱石、自分と同年生まれの男たち、紅葉、子規、露伴、緑雨の名をあげて、いずれも旋毛曲り、胃を患う、と紹介。

別の明治文学研究家は、露伴、紅葉、漱石、子規、緑雨他、同年生まれの文学者が多くいることに着目して、明治初期近代国家胎動の時代を重ね合わせる。彼らは明治の年号がそのまま満年齢。坪内はこの5人の作家に外骨と熊楠を加え、7人の青春時代――明治271894)年までを描く。

彼らは「世の中が直線的(原文傍点)に整備されて行く現実に違和感」を唱える。彼らの人生はつながり重なり交錯し離れすれ違う。この時点で、紅葉と露伴は既に売れっ子作家、緑雨も新聞小説連載開始、子規は新聞記者、外骨は憲法批判記事の刑期を終え新雑誌創刊、熊楠はロンドンで大英博物館通い、漱石は英語教師。まもなく日清戦争。

個性豊かな人物たちの評伝、ひとりずつでもたいへんだし、かかわる人びとや作品にまで言及することは膨大な作業。だが、坪内は楽しんで書いている。「もっとも旋毛の曲りぐあいが激しい」外骨と熊楠のことは特に嬉々として


 

2.6 図書館で西東三鬼調べ。Web「リファレンス協同データベース」で、1993年「神戸新聞」に、戦中三鬼が住んだトーア・アパートメント・ホテルの記事が掲載されているのを知り、閲覧、コピー。ホテルの支配人(三鬼の本では住人に「パパさん」と慕われている)の子息が語っている。昭和初めに富豪が邸宅をホテルに改装した。


 

2.7 「朝日新聞」の歌壇・俳壇欄のコラム「うたをよむ」、紅葉の弟子・泉鏡花の俳句作品を紹介。先の「旋毛曲り」の子規は俳人。紅葉、露伴、漱石、緑雨も俳句と縁が深い。

(平野)

2021年2月4日木曜日

戦前尖端語辞典

 1.31 お雛様御出座。

次回元町原稿に取りかかる。漱石・子規の後ゆえ相当強烈な人を持ってこないと。俳人・西東三鬼。戦中戦後、神戸トアロード・諏訪山で生活。『神戸・続神戸・俳愚伝』は悲惨な時代にあって外国人たち・日本女性たちのたくましい生活力を伝える。俳句を絶たねばならなっかった三鬼自身も彼らと共に生き抜いた。

本書も句集も読んだけど、忘れていること、読み落とし多々あり。三鬼は神戸移住以前に、恋人と諏訪山に宿泊。本人が、この女性とはプラトニック、と断わっている。両人とも肺を病んでいた。愛人や同棲相手のこともちゃんと書いているので信じよう。

〈滝の前処女青蜜柑吸ひ吸へといふ〉

〈神戸の獅子吠えたり別れ寝るホテル〉

「滝」は布引の滝、「獅子」は諏訪山動物園のライオン、「ホテル」は山本通にあった富士ホテル。

 


 2.2 節分の日が22日になるのは124年ぶりとか。テレビは「恵方巻き」の話題が多いように思う。新聞ちらしもデパート食品売り場も近所の魚屋さんも豪華な巻き寿司だらけ。うちは買わない。

 元町原稿届けて買い物。

BIG ISSUE400、表紙とインタビューは奈良美智。コロナの影響で海外での展覧会はすべて中止・延期になったそう。落ち着いたら北海道あちこちの小さな会場で写真展を開く予定。

 本屋さんで注文品受け取り。

 平山亜佐子編著 山田参助絵・漫画 『戦前尖端語辞典』 左右社 1800円+税

 大正8年から昭和15年にかけて出版された新語・流行語辞典約30冊から面白いことばを解説。いつの時代も新しいことばが生まれる。外来語、専門用語、略語、トンチ、隠語、学生ことばなどなど、世相・風俗が見える。イラスト・図版も当時の本から。

 巻頭の漫画から。

「ガッカリアイエン子が近頃すっかりデスペレートなのはそのエルが羅漢様だからですって?」

「そうなんだ全くとんだゲシュペンシュテルなんだよ」

 友だちがとんでもない男と結婚した、という話。なんたらギャルという人たちの会話がわからないのといっしょ。

「つんどく」『モダン新語大辞典』(大文館書店、昭和7年)の解説。「積んで置くの意。即ち愛読せずに円本等を多数申込んで買取り其儘に書斎に積んで置く意を諷したもの。其の人々をツンドク階級という」。

明治から使われていた。大正末からの円本ブームによって「積読」の現象とことばが普及した。



(平野)