2020年3月29日日曜日

本は、おやつか、ご飯か、お魚か


3.25 職場で関係会社に連絡すると、皆さん即行動、処理してくださる。仕事速い、的確。我が身はどうか。毎朝ケータイで健康報告をするのだが、操作ミスあり届いておらず。

「朝日新聞」夕刊に大阪堂島の古本屋さん「本は人生のおやつです!!」記事。店主談、手軽に手に取っていずれご飯になればうれしい。「すべての本が、誰かにとっての人生のおやつです」。

3.26 元町事務局に原稿を届ける。図書館で資料を閲覧できないのは厳しい。あと2回くらいは何とかストックあるけど、長引くと「神戸本」紹介でお茶を濁すしかない。
 花森書林に古本20冊ほど買ってもらう。毎回お決まり「孫の魚代おめぐみを~」。本棚に「減った感」なし。
 夕刻、ご近所の長距離トラックドライバーさんからお土産いただく。

3.28 図書館に返却に行く。返却と貸し出しのみ、机と椅子は撤去されていて閲覧できない。借りる本を探すのもせわしないので、前回の本を継続にしてもらう。文化ホールで3月公演チケット(落語)払い戻し。午後買い物。外出自粛要請でも日常の買い物は必要。本屋さんで注文品受け取り、予算の関係上、2冊取り置き依頼。

駄場裕司『天皇と右翼・左翼――日本近現代史の隠された対立構造』(ちくま新書)読み終わる。
 
 

〈近現代日本を動かしてきたのは、幕末以来の天皇家と伏見宮系皇族(旧宮家)の対立と裏社会の暗闘である〉(カバー袖の紹介文)
 日本近現代史は、倒幕派、公武合体派、藩閥、親英米、反英米、親ソ連、親中国、血脈、姻戚、人脈、学閥、師弟、新宗教、労働団体、社会運動団体、暴力団などなどが複雑に絡む。支配層、エリートたち(政治家も軍人も学者も思想家も)の対立構造を膨大な史資料によって明らかにする。戦後の左右対立の真の姿に迫る。
 著者の示す図式では、現在の多数派は反天皇・反英米・現状破壊派(左右共)。親英米の有力政治家はおらず、天皇家は孤立状態。今の政治権力者はアメリカ追随ではないということか。世間の常識「右翼・左翼」の概念が覆る。
 書店員時代に不思議だったのは、皇室関係の記念写真集は「左」代表の「朝日新聞社」がダントツで売れること、新左翼系論壇誌のスポンサーが総会屋だったこと。この点は本書で納得がいった。

睡眠導入読書は、下川耿史『性風俗50年 わたしと昭和のエロ事師たち』(筑摩書房)。イヤラシイ本読んで、と眉をひそめる方もいらっしゃるだろう。戦後の悲しくもたくましい男たち女たちの話。
 
 
(平野)

2020年3月24日火曜日

暗い林を抜けて


3.21 大阪府知事の往来自粛要請もどこ吹く風、大阪通り越して京都大谷本廟。往復電車はいつもより空いていたが、街中は着物のカップルや袴スタイルの卒業式姿、春休み満喫学生や親子らでいっぱい。外国人観光客がいないだけ。滅多に有名人に遭遇しないが、今日は男優さんとすれ違い、デパート地下で政治家を見た。お参りすませて本屋さん、欲しい本はたくさんあるけど、資金不足は毎度のこと。古本1冊、新刊1冊のみ。

 京都出身、黒川創『暗い林を抜けて』(新潮社)読了。主人公は通信社記者。50歳目前にガン発病するも、本社に戻り戦中戦後秘史を執筆。重要人物、事件とそれに連なる現代史。そこに普通人としての人生が重なる。地方勤務、転勤、災害取材など多忙な記者生活、生い立ちから京都学生時代、生活変遷(結婚、離婚、新しい家庭)。秋の夜明け前、死を悟り暗い林の中に入る。家族に遺す言葉は……
 
 

3.22 京都の古本屋さんで買った新刊、柳田國男『名字の話』(土曜社)595円+税、四六版48ページ。明治44年雑誌「斯民家庭」に発表。私など凡人は名字の由来や先祖の由緒に興味を持ってしまう。その前に、なぜこの国に多くの名字ができたのか、柳田の古代社会研究。
 

 

3.24 映画「漫画誕生」、イッセー尾形主演、元町映画館。日本最初の漫画家と言われる「北沢楽天」のこと。風刺からスタートしたが、その表現力で時代時代に売れるものを描いてきた。戦争中は引退状態。内務省の検閲役人に呼び出され、これまでのことを語る。「あなたが描きたかったものは何?」と挑発されて、描いたのは……
平日午前のうえ、この時節、館内は他の人と十分すぎる間隔。
(平野)

2020年3月20日金曜日

呪われた詩人たち


 3.17 彼岸の入り、早めに墓参り。午後買い物、デパート休み。予告あったのに、アチャー。元町駅前で「BIG ISSUE 379 移民社会を生きるヒント」。
 ポール・ヴェルレーヌ『呪われた詩人たち』(幻戯書房)。原著初版は1884年、新版1888年。登場する詩人は6名。ヴェルレーヌからも文学からも去ったアルチュール・ランボー、同時代の代表的詩人ステファヌ・マラルメ、19世紀前半の女性詩人マスリーヌ・デボルド=ヴァルモール、作家ヴィリエ・ド・リラダン、1冊の詩集を残して無名のまま生涯を終えたトリスタン・コルビエール、それから「哀れなルリアン」=ヴェルレーヌ。未知、無名、無視、隠れた存在、みんな評価されていなかった詩人たち。

〈波風を立てないためには「絶対的詩人たち」と名付けるべきだった。だが近頃は平穏無事など三文の値打ちもないうえ、『呪われた詩人たち』というタイトルは、筆者が抱く憎しみと、またこれは確実だが、ここに語られる「全能者」の生き残りたちが抱く憎しみ、優れた読者の蒙昧な大衆に対する憎しみに釣り合うという面がある――憎しみを投げ返す手ごわい軍隊(ファランクス)である。〉
 
 

 3.19 ギャラリー島田DM発送手伝い。コロナ影響で休廊中、スタッフさんは総出で書庫・倉庫の整理。

 3.20 映画「マルクス・エンゲルス」(2017年、フランス・ドイツ・ベルギー合作)、神戸映画サークル協議会主催、兵庫県民会館。ふたりの出会いから『共産党宣言』誕生まで。鑑賞者に若者の姿なし。
 
 ヨソサマのイベント
「上村亮太『アネモネ戦争』出版記念展」 ギャラリー島田 
328日~415
http://gallery-shimada.com/?p=6797

 


(平野)

2020年3月16日月曜日

離人小説集


 3.13 編集工房ノアからPR誌&目録「海鳴り 32届く、感謝。
 本屋さんでもらったスタジオジブリ「熱風(GHIBLI)」3月号の特集は「渡辺京二、ファンタジーを語る」。



 3.14 コロナ不安、街は既に春休み気分なのか、ホワイトデーの買い物か、先週末と比べると人出多い。ずっと引っ込んでばかりはいられない。

 3.15 「朝日歌壇」より。
〈若き日の君のアルバムめくるよう三月書房の引き戸はありき (西宮市)佐竹由利子〉

 神戸のフランス文学者・ソウ様の本、鈴木創士『離人小説集』(幻戯書房)。芥川龍之介と内田百閒、ランボー、稲垣足穂、アルトー、小野篁、他に私の知らない文学者たち。著者は作家たちと幻想の世界を漂う。作家たちの作品の文章や関連する芸術家たちが語られるが、あいにく私の知識では追いつかない。でもね、藤圭子や芦屋小雁も出てくる。

〈この小説集で取り上げた作家たちに私は会ったことがない。現前するもののなかにはいつも不在がある。またその逆も。作家たちは自分の作品から出たり入ったりする。私もまた同じである。(中略)
 離人。近すぎるものは遠ざかる。彼らは遠くの国にいながら、彼ら自身から離れ、私は私から離れる。そうであれば、書くことによって誰が誰から離れたのであろうか。(後略)〉(「跋」より)
 

 

(平野)

2020年3月12日木曜日

大事なのは、


3.7 来週予定のギャラリー島田DM作業、時節柄延期の連絡。次回展示も順延。ヂヂ、またも行くあてなしのひっこもり決定。
 本屋さん、文芸書、風俗史、思想史。いつものバラバラ。

3.8 高槻親戚一行来神。受験生父娘は留守番して勉強、いつもより寂しい。その受験生から幼少時に遊んでいた玩具が届く。

3.9 音楽誌「BURRN!」編集長・広瀬和生『21世紀落語史 すべては志ん朝の死から始まった』(光文社新書)。著者はほぼ毎日ナマの高座に接している落語ファン、落語会プロデュースも手がける。21世紀初めの年に志ん朝が亡くなる。さらに02年小さん、09年圓楽、11年談志、エースやリーダーたちが世を去った。落語の危機だった。ところが、次世代の綺羅星が続々出現。ファンの立場から「激動の時代」を記録する。
 
 

ギャラリー島田の作業日連絡あり。妹から荒蝦夷社主の新聞記事もらう。

 3.11 東日本大震災から9年。
 職場ではメールで毎日健康状態報告開始。
 花壇のさくらんぼが次々開花。春は確かに来ている。コロナは先が見えない。高校野球も中止に。

柳広司『太平洋食堂』(小学館)読了。デタラメ・ウソだらけの大逆事件で幸徳秋水らと共に処刑された医師・大石誠之助の生涯。太平洋食堂とは紀州新宮で誠之助が開いた食堂。正確には食堂ではなく、青年たちのための集会所(娯楽、教養、飲食の場所)、また貧民救済の場。子どもたちに食事を提供し、マナーを教えた(作法にうるさすぎて大人は敬遠)。誠之助は貧しい者、虐げられている者、苦しんでいる者の側に立った。そのために権力から主義者とされ、迫害された。逮捕前、なぜ迫害されるのか、自分たちは本当に正しいのか、と同志が問う。誠之助は正しいかどうかはわからない、と答える。
「自分が自分自身でありつづけるために、こうせなアカンと思うことをやっとる。(中略)それが社会主義かどうか関係ない。何と呼ぶかは他人の勝手やでな」

 NR出版会から「新刊重版情報」届く。連載「本を届ける仕事」は福島県いわき市の鹿島ブックセンター・八巻明日香さん、「大事なのは、これからのこと。」。こちらで読めます。


 


(平野)

2020年3月6日金曜日

戦争と検閲


3.2 労働は奇数月に1日ある休み。午前中は「ブラジル移民」次回原稿準備。
 午後、元町映画館「エセルとアーネスト」。絵本「スノーマン」で知られるレイモンド・ブリッグスが両親の人生を描くアニメーション。牛乳配達人・アーネストがメイド勤めのエセルと結婚、つかの間の平和な時代にレイモンド誕生。ヒトラー台頭、第二次世界大戦、ロンドン空爆、終戦……、激動の時代と庶民生活・文化の変遷が語られる。普通の労働者一家、子育てで悩み、戦火を乗り越え、夫婦なかよく生きた40年。静かに生涯を終える。

 本屋さんで注文していた詩論と小説を受け取り、棚から落語論。読書一貫性なし。
 買い物して帰り道、雛まつりの花を選んでいる家人と遭遇。

 ひなまつり女のまつり花まつり (よ)



 前日の「朝日歌壇」から。2月入選の長野県本屋店主のご家族だろうか。
〈継ぐ継がぬ家庭争議もありにけり結局兄は生涯本屋 (横浜市)沓掛文哉〉

 3.3 デパートはしばらく週1日休んだり、時間短縮したり。私はそれと関係なく行くところがないので終日引っ込む。録画の映画2本見て、落語3本目途中で晩飯準備の時間、中断。

 ひなまつりLINEで届く孫の歌 (よ)

 3.4 神戸生まれの詩人がPR誌連載エッセイで神戸で創業した本屋の京都店・名古屋店閉店のことに触れている。回りくどい、最果タヒ「最果からお届けします 47」(「ちくま」3月号)でジュンク堂の京都店・名古屋店閉店のことに言及。
 ある対談で最果の本を苦手な人が確実にいるという話から、苦手な本とか良さがわからない本がネットなどで好意的に紹介されていたら、世の中全てが勧めているみたいでつらい気持ちになるのでは、という話になったそう。
……ああ、やっぱり本屋さんならその横に「私はこっちの方がいい気がする!」って思える本が並んでいるからいいよね、本屋さんはずっとあってほしいな、とふと思った。〈後略〉〉
 本屋で本と「偶然の出会い」。探す、求める、それから、ふと手を伸ばす瞬間が必要。

 30ん年前ジュンク堂が京都に出店するとき、神戸の書店員・関西出版社有志が壮行会をしたことを思い出す。

 PR誌「波」3月号では、10年連載の瀧井朝世「サイン、コサイン、偏愛レビュー」が最終回。「本を作る人たちの熱意」と題して、書肆汽水域、エトセトラブックス、サウザンブックス社の活動を紹介する。



 3.6 「ブラジル移民」原稿はようやく本丸、石川達三「蒼氓」に。石川がブラジル移民に同行した記録をもとにした小説。この作品が第1回芥川賞を受賞したことを多くの方がご存知でしょう。昭和の人気作家だが、文庫で読める作品はごくわずか。「蒼氓」は秋田魁新報社から復刊されているが、本屋店頭にはないだろう。図書館か古本屋さんを探してもらうしかない。

 本屋さん、雑誌と河原理子『戦争と検閲 石川達三を読み直す』(岩波新書、2015年)。何度も検閲で痛い目にあった「へそまがり社会派作家」のこと。石川は芥川賞受賞3年後、南京陥落(南京事件)後を取材し、「中央公論」で小説「生きてゐる兵隊」を発表する。戦争の凄惨な実態を知らせるもの。「戦争掃除」は終わっていたが、石川はあちこちで死体を見、戦場の兵士たちに接触した。「中央公論」は内務省の検閲で反軍的と即日発禁。石川と編集者は新聞紙法と陸軍刑法違反で裁判。翌年有罪(禁錮4ヵ月、執行猶予3年)決定。
「ブラジル移民」とは直接関係ないが、読んでおいてよかった。「蒼氓」は発表時芥川賞受賞後「文藝春秋」に掲載されたが、伏字部分がたくさんあったそうだ(最初に掲載された同人誌にも少し伏字部分あり)。


(平野)

2020年3月2日月曜日

春は来たけど


2.29 花壇のさくらんぼがちらほら開花。春が来た。



職場の営業担当さんから連絡メール、来週は自宅勤務の由。
 繁華街に出る。人出少ない。元町の場外馬券売り場閉館で、交通整理の警備員さんもいない。図書館も週明け3日からしばらく閉館らしい。これはたいへん困る。

 3.1 図書館しばらくお休み(市内全館、3.216)。読書人たち、自習室で勉強する学生諸君は2週間どうするのだろう。私は「ブラジル移民」に必要な資料を閲覧。1930(昭和5)年315日、石川達三がブラジル移民に同行した船「らぷらた丸」の記事を探す。この時の体験が小説『蒼氓』になった。残念ながら新聞に出航時の写真なし、人気画家が現地同胞慰問のために同乗した記事のみ。この時期の紙面は、ロンドン軍縮会議、不況による馘首や争議が目立つ。国緊張と市民不安という世相。
 そんななか、同年38日記事に「赤マントの朝やん」こと洋画家・今井朝路(18961951年)の個展案内があった。朝路は元町通5丁目にあった今井計量器店経営者の弟で、元町の名物男。今東光、菊田一夫の小説に実名で登場する。前年ヨーロッパ留学から戻り、個展はその成果発表。新聞の絵は「巴里(パリー)の思ひ出」。朝路は元町で画塾を開き、バー「ランクル・ブルー」(青い錨)を開店した。



ヂヂバカチャンリン、孫と絵本。『かめくんのさんぽ』(なかのひろたか、なかのまさたか、福音館書店)『とこちゃんはどこ』(松岡享子、加古里子、福音館書店)
 
 
(平野)