2021年4月27日火曜日

みんな泣いてしまわねば

 4.25 「朝日俳壇」より。

〈古書街の昭和の匂ひ荷風の忌 (川越市)益子さとし〉

 同じく「朝日新聞」の「星の林に ピーター・J・マクミランの詩歌翻遊」(日本の詩歌英訳と解説)で取り上げられたのは、寺山修司の詩の一節。

〈なみだは/にんげんの作る一ばん小さな海です〉

 


 寺山は俳句から離れるとき、ある詩を引用した。ドイツの詩人エルゼ・ラスカー=シューラーの詩「一つの歌」(富士川英郎訳)。

〈新しき血/私の眼のうしろに海がある/それをみんな私は泣いてしまわなければならない〉

 4.26 三宮ブックス事務所閉鎖の日。私もみんな泣いてしまわねば。





写真は村田耕平さんにいただいた『大阪圖書出版業組合記念史』(同残務事務所編集兼発行、1943(昭和18)年)のコピー。国家総動員体制のもと、1940(昭和15)年内務省から出版業者団体解消の内示あり。翌年大阪組合は日本出版文化協会に合流。本書は、組合の沿革、活動記録、解散後の残務処理を記す。

3枚目は解散時の役員一同。現在に続く出版社では、創元社・矢部良策の姿あり(後列右から二人目)。以前村田さんに解説してもらったところ、義父(文開堂、後列右端)と海文堂の番頭だった清水さんの父(瞭文館、後列左から三人目)もいる。

 吉田太郎 『神戸人形賛歌 よみがえるお化けたち』 日本玩具博物館協力

神戸新聞総合出版センター 2000円+税



 神戸で生まれたからくり仕掛けの小さな人形。スイカを食べたり、お酒を飲んだり、楽器を鳴らしたり。創始者は、野口百鬼堂、中村某、銀行員誰それなど不明。時期も幕末、明治中頃などと諸説ある。布引の滝の茶店で売られたことから「布引人形」と呼ばれたり、「おばけ人形」とも言われた。大正天皇が皇太子時代に購入してから「神戸人形」の名が定着したようだ。外国人観光客に人気があった。戦後作り手が亡くなり廃絶。郷土史家、愛好家や販売店が継承してくれる職人を探し復活させた。しかし、阪神淡路大震災後、次第に制作・販売が危機に陥る。

 著者は1969年元町生まれ、育ち。小学生時代に商店街の玩具店・キヨシマ屋で制作の様子を見ていた。現在人形劇工房・ウズモリ屋を営む。2015年から神戸人形を蘇らせるべく、制作・販売を開始。

 下記サイトで制作過程も見ることができる。

https://www.kobotaro.com/kobedoll/index.php

 人形に限らず文化は、平和な時代、平穏な気持ちであるからこそ楽しめる、守り続けることができる。

(平野)

2021年4月25日日曜日

さくらんぼ

 4.23 孫との生活は退屈しない。私は遊び道具、おちょくられ相手。ひとり遊びも、歌って踊って人形とお芝居までする。ヂヂバカちゃんりん。

  4.24 花壇のさくらんぼ摘み。ご近所におすそ分け。



図書館で孫の貸し出しカード作ってもらって、絵本6冊。緊急事態宣言発出でまた閉まるのか心配。夕方方針発表あり、閲覧・座席利用などサービスは制限、貸し出し・返却のみ。館によっては時間短縮も。

本屋さんも閉めるところあり。

 



「ちくま」5月号。蓮實重彦〈些事にこだわり〉新連載。

「オリンピックなどやりたい奴が勝手にやればよろしい」

 

 織田作之助 『六白金星 可能性の文学 他十一篇』 岩波文庫 2009

 古本屋さんで買った本。織田作戦後発表の短篇11と評論2

大阪の庶民、それも日陰の人たちが主人公。権力や因習への反抗、諦め、嫉妬、敗北、放浪……、それでも人は生きねばならない。ほんのわずかでも希望はあるのか、夢見ていいのか。織田作は「人間の可能性」を信じ、書いた。



(平野)

2021年4月22日木曜日

さよなら、三宮ブックス

 4.20 昨日、孫はパパさんママさんと神戸市立王子動物園に行ってパンダのタンタンを見た。この7月にタンタンは故郷に帰る予定だったが、コロナ禍で遅れている。そのうえ、本日の新聞報道では高齢で心臓に疾患があるそう。人間なら70歳を超える年齢、どうぞお大事に。パパは横浜に戻る。



 昨年末に読み終わっているはず、と自分で思い込んでいた本、まだ途中であった。

 尾崎真理子 『大江健三郎全小説全解説』 講談社 3500円+税

 著者は読売新聞文芸担当記者、編集委員を経て、早稲田大学文学構想学部教授。1993年から大江を取材。『大江健三郎全小説』(全15巻)の全解説を担当。大江の約60年間の全ての作品を解説。難解、と言われている大江作品。あらすじ、登場人物や状況設定、当時の時代背景・大江の置かれていた環境など、読解の手がかりを明かす。ネタバレになっても大江作品には何でもない、と言う。

……なぜなら、結末が終わりではなく、そこから始まる複雑な感興こそがこの作家を読む醍醐味であり、結末の解釈は読者の数だけ存在し、読み返すごとにそれは更新されるはずだから。〉

 年譜、参考・引用文献、作品書誌、索引含め520ページ超。


 

 4.22 三宮ブックス、26日で事務所閉鎖予定の知らせあり、訪問。竹さん、日販・河さん、児童書・田さん、会えてよかった。お疲れ様。さよなら、三宮ブックス。

あとは村田さんの家族が会社整理の由。

 

(平野)

2021年4月18日日曜日

文字踏むな

 4.14 朝刊にお相撲さん・麒麟児訃報。北の湖、二代目若乃花ら「花のニッパチ」(昭和28年生まれ)の一人。大錦もいた。私も同年生まれ、「花のニッパチです」とよく自己紹介に使った。私は咲かなかったけど。お相撲さんでもないけど。

 4.16 昨日みずのわ一徳社主がメールで故村田耕平さんの思い出を書いてくれた。そのせいか夢枕に村田さんが立ち、レジで私は税込み表示で右往左往した。

 4.17 家の工事終了。こちらの予定優先で、工務店さん職人さんたち急いでくださった。感謝いたします。

午後落語、「桂吉弥独演会」(けんみんホール)。高齢者が多い割にはマナーの悪い人が多い、いや高齢者ゆえか。おしゃべりピーチク、携帯電話はあちこちで鳴る。

 娘一家が出産準備で帰省。ヂヂババ買い物していたら、元町商店街の魚屋さんの前で孫とパパの散歩に出会う。姫路で仕事中のヒゲ面息子も来て、晩ご飯。

 4.18 「朝日歌壇」より。

〈文字踏むなご飯残すなそれのみを躾けし母に絵本贈る (中津市)瀬口美子〉

朝、孫と湊川神社参拝。お宮参りの家族続々。孫と、本殿、天神さん、お稲荷さん、楠公のお墓、黄門像と境内一巡り。孫が一生懸命家族の健康を祈願している。誰に教わったのか。この姿こそがありがたい。


 

BIG ISSUE405号、表紙写真はソフィア・ローレン。



(平野)

2021年4月13日火曜日

高瀬庄左衛門御留書

 4.12 台所工事進行中。仕事は休みもらった。隣の狭い部屋、必要なものを坐って手の届く所に置いてある。もし万一、私一人の生活になったら日常はこうなるのだろう。きっとテーブルの下に万年床。

 本日孫幼稚園入園式。でもね、家庭の事情でしばらく休まなければいけない。残念だろうけど、その分ヂヂババと遊ぼう。

 


 砂原浩太朗 『高瀬庄左衛門御留書』 講談社 1700円+税

「たかせしょうざえもん おとどめがき」。著者は1969年神戸生まれ。

 庄左衛門は神山藩の下級武士、郡方。息子も同役だが、見回り中に事故死。息子の嫁とその弟と絵を描きながら、勤めを続ける。誠実に倹しく過ごす。彼の周りに年齢かかわりなく人が集まり繋がる。上層部の政争に巻き込まれ窮地に陥る。助け支えるのは家族と人脈。息子の死の真相も判明し、剣友と闘うことに。嫁は江戸勤めとなり去るが、新旧の使用人に加え、新しい家族が増えそう。

 第1章のみ「小説現代」掲載、他は書き下ろし。シリーズ第1弾、とあるのでこれから楽しみ。

(平野)

2021年4月10日土曜日

泳ぐ者 なんの仕事

   4.9 二日続けて息子が夕飯食べに来る。なんの仕事か不明だけど、髭面。三宮のビジネスホテル泊まり、弁当は出る。休日もある。姫路に移動予定。孫(彼にとっては姪)と仲良くLINE電話している。

4.10 台所工事開始。電気機器、食器棚から調味料、食器他、隣の部屋に。既にどこに何があるのか不明。食事は当分弁当かインスタント。

 青山文平 『泳ぐ者』 新潮社 1600円+税



 時代小説ミステリー。

主人公・片岡直人は半席と言われる御家人。将軍御目見が叶う旗本昇進を目指す。今は徒目付。幕臣の監察が役目だが、仕事は多岐にわたる。江戸城警護、探索、裁判・刑罰の立ち会い、幕府公金を使う橋や寺社など普請の吟味など。遠国にも出張る。海防の仕事もある。さらに外からの頼まれ御用という裏の仕事がある。これは余録が多い。しかし、上役・内藤が直人に持ち込むのは奇妙な事件、不可解な事件の真相究明。なぜその事件が起きねばならなかったか、人が死なねばならなかったのか。

 内藤が海防の職務に就き、ロシアやイギリスなど異国船への備えを語る。上役から直人も海防に、と話がある。内藤は直人に考える時間をくれる。

直人は表の仕事でも「なぜ」を追う。元百姓の夫は有能、代官所勤めから御家人、旗本になり、勘定組頭に出世。妻は容姿端麗・頭脳優秀ながら、家庭は冷えていた。夫は65歳になって妻を離縁。3年半後、妻は病の夫を刺殺。直人は夫の真意をつきとめ、妻に解き明かすが、獄内で妻は縊死。なぜ? がいっぱい。

 表題の「泳ぐ者」は物語の後半に登場。初冬というのに毎日大川を泳いでいる男、いまにも溺れそうな泳ぎ。橋の上からの見物人が増える。橋崩壊の恐れもあり、直人が乗り出す。男は、願掛け、満願まであと2日、と言う。直人は見逃すことにする。翌日、男は直人の目の前で武士に斬られる。男はその瞬間笑っていた。なぜ? 手がかりを得て、さらになぜ? なぜ? なぜ?

 事件の裏に広がる人の心の闇。人は鬼にも化物にもなる。謎を見抜いても、直人には苦味が残る。苦味を嘗め続け、「なぜ」を繰り返す。

(平野)

2021年4月8日木曜日

しんせつなともだち

 4.3 朝刊に著名人の訃報、著名俳優、ノーベル賞学者、キックボクサー。

家の直し前に、家人は整理に忙しい。不用品がどんどん出てくる。

買い物帰り、元町商店街で友人・福夫妻に遭う。私と違って交友広く情報通、同級生の消息を教えてくれる。

4.5 朝日新聞文化欄「語る人生の贈りもの」は平野レミ。シャンソン歌手、料理愛好家、和田誠夫人。私にとっては小学校の図書室で読んだ平野威馬雄の娘さん。混血児「レミ」の物語だった。

雨と風で桜が散って、担当マンションに花びらが吹かれて侵入してくる。桜掃きヂヂ、なら聞こえがいいけど、この季節は、黄砂拭きヂヂ、でもある。

4.6 図書館行って、本屋さん行って、しか楽しみがない。まん延防止が緊急事態になるのは困る。

買い物行って、頼まれ物を忘れている。

THE BIG ISSUE404、表紙なおみちゃん。


 

4.8 「みなと元町タウンニュース」Web更新しています。

https://www.kobe-motomachi.or.jp/motomachi-magazine/townnews/

神戸の詩人さん・安水稔和詩集『繋ぐ 続続地名抄』(編集工房ノア、2020年)。地名を題材にした詩集、3冊目。神戸では、垂水、塩屋、須磨、長田など。


 

孫がLINE電話で『しんせつなともだち』方軼羣[フアン・イッチュン]作、君島久子訳、村山知義画、福音館書店、1987年)を読んでくれる。「ヂヂにもかぶちょうだい」と言うと、「ダメー」。ヂヂバカちゃんりん。


 

 

(平野)

2021年4月3日土曜日

三月去って新年度

 3.30 午前中、図書館。次々回元町原稿は諏訪山最終回のつもり。諏訪山生まれ育ちの夭逝作家を取り上げる。



近所の公園や神社の桜満開。山の方は黄砂か、霞んでいる。

午後、三宮ブックスを覗く。竹さんと日販・河さん、いよいよ閉店・廃業に向けてラストスパート状態。注文品すべて揃い、雑誌もあと2日。私はなんにも手伝うことなく、時間つぶしぼんやりしていると、海文堂児童書・田さんも来た。会うのは数年ぶり。電話で話したのは一昨年の今頃だったか。竹さんが配達について来いと言う。帰り道なのでおつきあい。警察と予備校。

 月末に家の直し予定だったが、家庭の事情で早めてもらう。

 3.31 夜、孫とLINE電話。昼寝して元気なのだけれど、ママに本を読んでもらいたいから電話を切ろうとする。「まだダメー!」と叫んだら、余計面白がって切る。ヂヂバカちゃんりん。

 本、若菜晃子編著『岩波少年文庫のあゆみ 1950-2020』(岩波書店)。老人になっても読みたい本がある。



「ひょうご部落解放」179号着。私は、大岡信『詩人・菅原道真 うつしの美学』(岩波文庫)を紹介。

 

 4.1 「朝日新聞」で生物学者・福岡伸一が小説「新・ドリトル先生物語」連載開始。福岡はドリトル先生シリーズ愛読者、『岩波少年文庫~』にも寄稿。

 外を歩くと、真新しいスーツ姿の若者グループ何組か。新社員さんたち、初々しい。

久々の本屋さん。手帳を忘れて、書名も発売日もうろ覚え。雑誌と時代小説とコミック買って帰る。どうしても思い出せない本1冊、未完1冊、次回に。

 元町商店街、孫みたいなかわいい水仙の花を買う。ヂヂバカちゃんりん。



 息子が突然来て飯食って、宿泊先に戻って行った。仕事でしばらくこっちにいるらしい。

 4.2 「全国書店新聞」Web41日号に村田耕平さん訃報記事。

http://www.n-shoten.jp/newspaper/

「みなと元町タウンニュース」344号。「海という名の本屋が消えた」は諏訪山ゆかりの俳人・西東三鬼。何回も見たのにまた校正ミスあり。Web版は未更新。

 


(平野)