2021年4月10日土曜日

泳ぐ者 なんの仕事

   4.9 二日続けて息子が夕飯食べに来る。なんの仕事か不明だけど、髭面。三宮のビジネスホテル泊まり、弁当は出る。休日もある。姫路に移動予定。孫(彼にとっては姪)と仲良くLINE電話している。

4.10 台所工事開始。電気機器、食器棚から調味料、食器他、隣の部屋に。既にどこに何があるのか不明。食事は当分弁当かインスタント。

 青山文平 『泳ぐ者』 新潮社 1600円+税



 時代小説ミステリー。

主人公・片岡直人は半席と言われる御家人。将軍御目見が叶う旗本昇進を目指す。今は徒目付。幕臣の監察が役目だが、仕事は多岐にわたる。江戸城警護、探索、裁判・刑罰の立ち会い、幕府公金を使う橋や寺社など普請の吟味など。遠国にも出張る。海防の仕事もある。さらに外からの頼まれ御用という裏の仕事がある。これは余録が多い。しかし、上役・内藤が直人に持ち込むのは奇妙な事件、不可解な事件の真相究明。なぜその事件が起きねばならなかったか、人が死なねばならなかったのか。

 内藤が海防の職務に就き、ロシアやイギリスなど異国船への備えを語る。上役から直人も海防に、と話がある。内藤は直人に考える時間をくれる。

直人は表の仕事でも「なぜ」を追う。元百姓の夫は有能、代官所勤めから御家人、旗本になり、勘定組頭に出世。妻は容姿端麗・頭脳優秀ながら、家庭は冷えていた。夫は65歳になって妻を離縁。3年半後、妻は病の夫を刺殺。直人は夫の真意をつきとめ、妻に解き明かすが、獄内で妻は縊死。なぜ? がいっぱい。

 表題の「泳ぐ者」は物語の後半に登場。初冬というのに毎日大川を泳いでいる男、いまにも溺れそうな泳ぎ。橋の上からの見物人が増える。橋崩壊の恐れもあり、直人が乗り出す。男は、願掛け、満願まであと2日、と言う。直人は見逃すことにする。翌日、男は直人の目の前で武士に斬られる。男はその瞬間笑っていた。なぜ? 手がかりを得て、さらになぜ? なぜ? なぜ?

 事件の裏に広がる人の心の闇。人は鬼にも化物にもなる。謎を見抜いても、直人には苦味が残る。苦味を嘗め続け、「なぜ」を繰り返す。

(平野)