2023年9月26日火曜日

落語がつくる〈江戸東京〉

9.23 図書館で元町原稿の資料探し。大正67年の神戸新聞、「西村貫一」の名は時々出てくるけれど、記事小さい。

 花森書林、店内に古本屋さん2軒出店。

 本屋さん、文庫2冊。

9.24 「朝日歌壇」より。

〈ぎっしりの本描かれたシャッターに「週休七日」三月書房 (京都府)島多尋子〉

小百合様の映画。親子、組織のなかの人、それに老いらくの恋。東京大空襲の記憶も。

本屋さん、雑誌2冊。

9.26 市のある施設に行くも、休館日。公の施設は月曜休みと思い込んでいた。出直し。無駄な動き多いヂヂ。

 

 田中優子編 『落語がつくる〈江戸東京〉』 岩波書店 

2500円+税



 法政大学江戸東京研究センター(工学系と人文系の研究者)による「新・江戸東京研究」の一環。

「落語における長屋やさまざまな場所と人間関係が『事実そのまま』ではなく、江戸時代の現実を要素としながらも、その後の時代に物語としてつくり上げられてきたのではないか、そして今も、作り続けられているのではないか、という問い」が出発点。

書名の「つくる」とは、「私たちが何らかの形で日々『つくっている』江戸東京とはなんなのか、という意味」。

 超近代都市東京。華やかで賑やかでおしゃれで、人もお金も集まる大都市。古い歴史もあるが、江戸時代以前の建造物・形あるものは火災、地震、戦災によってほとんど残っていない。現存するのは江戸城の石垣と濠くらい。

東京の歴史性は、「有形の遺産ではなく物語・伝承、記憶や慣習あるいは日常生活のありようなど無形のものごとによって支えられている」。書物・文献であり、習俗や祭りなど行事であり、芝居であり、落語である。 地名、江戸っ子気質、長屋や銭湯という空間、そこでの庶民の暮らし、人間関係などが語られるが、「事実そのまま」でもない。熊さん八っつあん、大家に隠居、与太郎、若旦那、おかみさん、泥棒……、強情っぱりに見栄っ張り、ケチンボ、迷惑をかけ、世話を焼き、助け合って、貧乏を笑って暮らす。お客も笑って、同じ噺を何度聴いても飽きない。不便でも貧乏でも、いいなあ、と思うから聴いている。物質的豊かさに頼らない世界がある。

(平野)

 

2023年9月21日木曜日

アルテリ 渡辺京二追悼

9.18 孫から敬老プレゼント届く。姉が描いた絵を刺繍したハンカチ。ヂヂババ大喜びのチャンリン踊り。

9.19 墓参り、夏草伸び放題。

 

 『アルテリ 十六号 渡辺京二追悼』 

田尻久子責任編集 アルテリ編集室発行 1200円+税

https://zakkacafe-orange.com/free/aruteri


 

 熊本市の書店「橙書店」が編集、発行する文芸誌、年2回刊。2016年渡辺が呼びかけ、人がつながり創刊。本号はその渡辺追悼号となった。若い人たちにヒントをあげ、書くことを奨励した。時に叱り、激高することもあるが、それでも人が集まってくる。

〈渡辺さんが最後の仕事に選んだのは、西洋化と近代化の波にのまれながら、自分の世界を作って生きようとした名もなき「小さきもの」たちを掬いあげ、新しく維新史を紡ぎ直すという壮大な連載だった。「あー、きつい。本当にきつい」と言いながらも膨大な文献を読み込み、毎週、原稿用紙6枚、約2400字を書き続けた。90歳を過ぎていた渡辺さんにとっては、おそらく命を削りながらの作業だったに違いない。(略)〉浪床敬子「渡辺京二は何者だったか」より。

 熊本日日新聞連載「小さきものの近代」は未完のまま死去したが、50本の原稿が書き上げられている。

(平野)絵や写真が美しい。原稿によって字体が違うのはなんでか?

 

2023年9月17日日曜日

マロン彦の小冒険

9.10 「朝日俳壇」より。

〈風鈴の音の遠のく読書かな (茅ヶ崎市)藤田修〉

 孫のメッセージ入り宅配便到着。

 しばらくぶりに覗いた本屋さん。古本も新刊も扱い、リトルプレスや直販出版社の本が揃う。仙台イラストレーターの新刊と熊本発のマガジン。

9.14 野球終盤。阪神虎組優勝決定。関西は大盛り上がりで、テレビ番組やかましい。18年ぶりだから喜びひとしおでしょう。我らが燕組は来年に期待。

 中学時代友人大怪我と連絡あり、仕事帰りに見舞う。

 親戚がコロナ発症、遠くの農家でも家族発症。あまりニュースにならないけれど、またまた蔓延しているらしい。お大事に。

9.16 BIG ISSUE463。スペシャル企画「ジェーン・バーキン」。特集は「有事を防ぐ」。



 本屋さん、落語と都市文化論。

「ひょうご部落解放」と「みなと元町タウンニュース」原稿校正して送信。

9.17 家人親戚4名来神。今春大学生になったサキちゃん帰省して、にぎやかに我が家で昼ご飯。孫用にアンパンマン玩具いただく。

 

 佐藤ジュンコ 『マロン彦の小冒険』 ちいさいミシマ社 

2400円+税



 仙台在住イラストレーター。ミシマ社のウェブマガジンに5年間連載。これまでの作品はご自身の周辺で起こる出来事をイラスト・コミックで描いていた。本作品ではマロン彦が主人公だけれど、本人の分身でもある。連載が進むにつれて世の中の問題が作品に現れてくる。

〈私の感じて言葉にできずにいるもやもやを、マロン彦が代わりに悩んで、考えて、憤り、抗い、祈る。そんな場面も増えていきます。いま振り返ってみると、マロン彦の小さな冒険は、この五年間の世界と私の記録、私にとっての小さな冒険でもありました。〉

(平野)

2023年9月9日土曜日

岩波茂雄伝

9.1 関東大震災から100年。

「みなと元町タウンニュース」379号着。Web版はまだ。

 

9.3「朝日俳壇」より。

〈絵本では眼鏡してをりきりぎりす (三郷市)村山邦保〉

〈図書館の利用もちゃんと避暑である (小平市)本多達郎〉

〈籐寝椅子ボードレールと寝転がる (武蔵野市)相坂康〉

「朝日歌壇」より。

〈戦争を知らない人ほどしたがると願いはむなしく森村さん逝く (岡山市)伊藤次郎〉

 本に関係ないけれど、

〈人間の値打ちを言っているようで聞くのが苦しい「最低賃金」 (観音寺市)篠原俊則〉

 ヂヂのパートタイムも最低賃金。

 

9.4 今週は仕事不規則。本日休み。国立国会図書館のデジタル資料で西村貫一の雑誌「アンティーク」を見る。1919(大正8)年1月号の新年広告に元町の商店や新聞社、海運会社、料亭に混じって、「文藝評論雑誌 放浪者」を発見。発行「神戸市平野上祇園九一 林黄花」。これも兵庫県の文学史では見たことなし。

BIG ISSUE462。インタビューは羽生善治、特集は「古気候学と気候危機」。


 

9.7 ときおり元町原稿のことで会いたいという連絡がある。お会いして話しても、ヂヂの知識・情報は原稿に書いていることが全部で、それ以上のネタはない。薄っぺらい。何度もがっかりさせていると思う。失礼ながら今回はお断わりする。

 本日臨時仕事で初めてのマンション。蛇が出る。

「みなと元町タウンニュース」Web版更新。拙稿は、西村貫一25年ぶりの上京。友人知人100名集まり、すき焼き会。牧野富太郎が命がけの挨拶。

https://www.kobe-motomachi.or.jp/motomachi-magazine/townnews/

 

 安倍能成 『岩波茂雄伝』 岩波文庫 1560円+税



 岩波書店創業者・岩波茂雄(18811946年)の評伝。安倍能成(よししげ、18831966年)は哲学者・教育者、戦後幣原内閣で文部大臣、学習院院長。岩波とは一高で同級(岩波は一浪したうえ、落第)。出版事業、性格、人間関係など、長所はほめるが、欠点・短所も隠すことなく述べる。「岩波にとって一番無遠慮な友人」。

……岩波は私を信用してはいたろうが誰よりも親愛していたというのではなく、又私の方も岩波を尊敬していたが好きなところばかりではなかった。〉

 1913年、岩波は高等女学校教師を辞め、古本屋を開業。

「私が商売を始めたのは、いわば市井に隠れ家を求めてのことであって、責任の軽い、心の苦しみのない、気の済む生活をしたいという、極めて消極的な気持ちから出たのであります。日本の文化に多少でも貢献しようとか、学術の振興に寄与しようなどと云う抱負をもって始めたのではありません。私の青年時代から苦しんで来た人生問題は、畢竟死生の問題であり、この年になっても、まだ私には、人に語るほどの信念はありません。(後略)」(「懐古三十年感謝晩餐会」での弁)

 謙遜であり、正直な気持ちだろう。開店案内に付した詞がある。

〈桃李云わざるも下自ら蹊をなす。/低く暮し高く想う。/天上星辰の輝くあり、我衷に道念の蟠るあり。/此地尚美し人たること亦一の喜なり。/正しき者に患難(なやみ)多し。/正しかる事は永久に正しからざるべからず。/正義は最後の勝利者なり。〉

(平野)

2023年8月31日木曜日

契り橋

 8.31 元町原稿「西村旅館」関連で、大正78年神戸で西村貫一が発行した芸術・文学雑誌「アンティーク」を調べている。これまで兵庫文学史の本には紹介されていない雑誌。創刊号がいきなり発禁になっている。

 8月も終わりだが、まだまだ暑さ厳しい。皆様、お身体大切に。

 

 髙田郁 『契り橋 あきない世傳 金と銀 特別巻(上)』

ハルキ文庫 700円+税



 昨年夏完結した人気シリーズの特別巻。多彩な登場人物から4人を主役にした短篇集。

「風を抱く」 五鈴屋当主ながら出奔した惣次が江戸で再登場した時は驚いた。その惣次がどのように両替商としてのし上がったのか。

「はた結び」 五鈴屋江戸本店(ほんだな)支配人・佐助の恋。

「百代の過客(はくたいのかかく)」 当主・幸を支えるお竹が老いを自覚、引き際を考える

「契り橋」 五鈴屋の元大番頭・地兵衛の息子で幼い時から幸に仕える賢輔の秘めた思い。

 本篇愛読者は気になっていたであろう物語とその後。登場人物たちもそれぞれ歳をとる。下巻では誰を取り上げるか。

 でもね、やっぱり著者のサディストぶりは不変。惣次の女房と義父、佐助の過去の恋人を天に召す。

(平野)

2023年8月29日火曜日

わんちゃ利兵衛の旅

8.27 孫たちはニイニイ(叔父)が大好き。そのニイニイがLINE電話に出ない、と姉は怒るし、妹は大泣き。居眠りしているニイニイを起こす。孫の機嫌直る。ヂヂバカチャンリン。

 英文学の先生から元町原稿の感想をいただく。楽しんで読んでくださり、文章作法指導や資料探索ヒントまで。ありがたいこと。ヂヂの能力が追いつかない。

 

 神崎宣武 『わんちゃ利兵衛の旅 テキヤ行商の世界』 

ちくま文庫 880円+税



 神崎宣武(のりたけ)は1944年岡山県生まれ、民俗学者。宮本常一に師事、陶磁器の技術伝播、食文化など研究。郷里の神社神主も務める。本書は1984年河出書房新社より出版。

 ヤシ、テキヤと呼ばれる露天商人を取材・調査。フーテンの寅さんの世界。神社・お寺の祭りや縁日をまわって商売。客集めに口上・タンカを切る。寅さんの「粋な姐ちゃん~~」「四谷赤坂六本木、チャラチャラ流れるお茶の水~」が思い浮かぶ。寅さんのは古本を商う人のタンカらしい。また、ヤシとは薬草、歯磨き、おしろい、線香など広義の薬品を扱う商人のこと。薬師、香具師。テキヤの象徴・信仰は中国神話の農業神「神農」。薬学の神でもある。

さて、旅まわりの商売となれば、地元との交渉、同業者とのトラブル防止が必要。

〈……その調整のために、まず、露天商人同士の統制が必要となった。各地方ごとにテキヤ組織が生まれたのである。〉

 神崎が取材した利兵衛はわんちゃ=ちゃわんなどセトモノ専門の露天商。明治の末からこの道60という長老。寅さんは毎回様々な商品を扱うが、利兵衛のようにセトモノ専門で60年通すのは稀なこと。

〈ということは、利兵衛が生きた時代は、総じてセトモノの商品価値が高く、セトモノが全国的に広まる時代であった、ともいえる。〉

 旅に生き、商品知識を蓄え、商売の工夫をし、話術を磨き、土地土地の風俗習慣を知る。仲間内の仁義を尊ぶ。無名の商人の一生と彼ら流浪の民から見た世間が語られる。

(平野)

2023年8月26日土曜日

三人書房

8.25 孫電話。神戸から帰って、別の親戚宅に行って、夏休みの行事ほぼ終了。二人共熱出ず、カゼひかず、食欲モリモリ、体調良好。歌って踊っておしゃべりして、やかましい、うるさい。けど、元気でよろしい。

8.26 髙田郁新刊『契り橋』(ハルキ文庫)購入。人気シリーズ「あきない世傳 金と銀」特別巻の上巻。テレビドラマ化、12月放映。またもラッキーなことに宣伝用ポップが挟まっていた。いつもの本屋さん、土日はレジの列が長いなあ。

 柳川一 『三人書房』 東京創元社 1700円+税



 若き日の「江戸川乱歩」、東京団子坂で弟2人と古本屋「三人書房」を開業。鳥羽の造船所で同僚だった井上も上京して来て居候。古本屋はわずか2年で閉店するが、探偵小説好きが集まり、さまざまな謎も持ち込まれる。女優の手紙、浮世絵の真贋、怪盗「謎の娘師」、江戸の浮世絵師と秘仏、ブロンズ像連続盗難。「乱歩」周辺の人々が「乱歩」の事件解決を語る。まだ「乱歩」以前、無名の「平井太郎」。

井上の言、「わたしは断言できる。当時、彼は既に、江戸川乱歩だった」。

同時代の有名人たが多数登場。宮沢賢治、宮武外骨、横山大観、高村光太郎らが「乱歩」と交流。

(平野)