2024年4月18日木曜日

本の背骨が最後に残る

4.14 「朝日歌壇」より。

〈文庫本持つ三人 夏の大三角 そんな星座を車内に生み出す (京都市)長谷川恵子〉

〈吾は読書小犬は玩具(おもちゃ)咥え遊ぶ一人と一匹の宇宙更けゆく (山口県)庄田順子〉

 図書館でさっと調べ物。

4.16 家事すませて、用事に出る。買い物ひとつ忘れに気づく。ボーっとしていたら本屋さんから予約本入荷メール。受け取りの楽しみは来週にする。

 みずのわ一徳に宿題を送信。

 

 斜線堂有紀 『本の背骨が最後に残る』 光文社 1700円+税



 書名が気になって読む。表紙、妖しい。読み出したら、怖い話7篇。先日の帯引用文「読まないほうがいい。云々」は本書から。

表題作は「本」が主役。                            〈本を焼くのは最上の娯楽であるように、人を焼くことも至上の愉悦であった。〉

その国では何かの事情で焚書が行われた。紙の本の代わりに口伝によって物語が受け継がれる。「本」は物語を語る人間。物語が「本」によって違いがあると、どちらが正しいか、審判の場=「版重ね」が設けられる。間違い=「誤植」。それぞれが正当性を主張しあう。ディベートの場が民衆=読者の娯楽となる。

 異国の旅人が出会った「本」は両眼を焼かれている。一冊の「本」が語る物語は原則一つだが、その「本」は十の物語を語る。代償として両眼を失った。「本」の名は「十(とお)」。論争の題材は、『白往き姫』(続篇では『姫人魚』)。相手は、女王が毒林檎で姫を殺した、と語る。「十」は、姫が毒林檎で女王を殺した、と。軍配はいかに?

 二冊の「本」は鉄の籠に入り、吊り上げられる。下には火が焚かれている。炎は両者を照らし、舌を乾かし、喉を灼く。籠の格子を摑めば火傷する。

〈けれど、その苦しみに気を取られて言葉を紡げなくなれば、焚書が待っている。(略、敗者の籠は火の中に落ちる)/絶命後も本は焼かれる。炎が消し止められるのは、本の肉がすっかり焼け落ち、鉄の籠に骨が積もってからだ。大抵の場合、焼け残るのは背骨であった。背骨は淡いクリーム色をしていて、美しい。〉

 他に、死後動物に転生すると信じている世界、ヴァーチャルで自分の複製を虐待、肉体的苦痛をすべて引き受ける美女たち、などなど。残酷シーン、苦痛描写、こわいこわい。

(平野)