2019年9月30日月曜日

神戸元町みなと古書店


101日(火) 〈神戸元町みなと古書店〉OPEN
こうべまちづくり会館 
オープン記念イベント 〈もふもふ堂展覧会 元町昭和40年代〉



 

(平野)
 9.28 本屋さんで注文品を受け取り、ギャラリー島田「古巻(こまき)和芳展 降り積もる、言葉が見える」(109日まで)に。
古巻は「場の記憶」をテーマに作品を制作。「2017港都KOBE芸術祭」では神戸の街に関わる詩を港の風景に掲げる(透明なアクリル板に書かれた詩文を船上からの景色にかざす)「九つの詩片」を発表。
今回の展示は
(1)安水稔和「地名抄」の詩を国土地理院地形図の上に浮かべ上がらせる
2194041年、杉原千畝ビザで神戸に来たユダヤ人の痕跡を現在の北野町界隈に訪ねる
詩人・季村敏夫とのトーク聴講。
1003〉でグレゴリ青山「ナマの亀岡」(かめおか霧の芸術祭実行委員会)購入。花森書店のイベント時間待ちの古書愛好家さんと遭遇。
 

 
 
花森書林、高橋輝次『タイトル読本』(左右社)出版記念「高橋輝次・林哲夫トーク」。参加者はおじさんばっかり(?)と心配していたら、開演間近に古本女子たち到着して、ひと安心。
話は本のタイトルだけではなく、レコード、映画、絵画まで、さらに誤訳・意訳の蘊蓄も。紙モノおみやげいっぱいいただく。
記念の古本市も開催中(29日まで)で、初日は開店前に行列ができたと聞いた。
高橋本を買ったら財布はすっからかんで、おとなしく帰宅。
梅田蔦屋のブックトークイベント(10月14日)は労働日にあたるのであきらめていた。家人に、休日やんか、と言われる。あわてて予約。ヂヂイボケボケ相変わらず。

2019年9月29日日曜日

大江健三郎とその時代


■ 山本昭宏
『大江健三郎とその時代 「戦後」に選ばれた小説家』 
人文書院 3500円+税



 著者は1984年奈良県生まれ、神戸市外国語大学総合文化コース准教授、メディア文化史、歴史社会学。
 大江健三郎は小説家デビュー以来約60年、その文学と発言を通して戦後日本社会をたどる。大江に対する批評、研究文献にも目を配る。
 大江は60年安保、ヒロシマ、オキナワ、核兵器廃絶、憲法など戦後民主主義の問題を作品に取り上げ、社会的事件、災害にも着目した。メディアでも積極的に発言した。知的障害をもつ長男との生活を題材にし、私小説的な作品も書いた。老年に達し、「最後の小説」に向かって書き続けた。
 山本は「大江が一貫して保ち続けた関心」を2点あげる。「共同体」と「超越性」。

「共同体」。家族、友人、学校、会社、地域、国……、あらゆる人間がこれらについて問題意識を持っている。だが山本は、大江がほとんどあらゆる種類の共同体について書いてきたことを重視する。森の村落共同体、子どもたちの理想郷、若者たちがつくる集団、「性的逸脱者」たちの結社、障害を抱えた息子とその父を中心にした家族、知識人のサロン、四国の村のコミューンや教会など。
 大江は、〈共同体の成立と維持がいかなるメカニズムのもとに行われるのか、そこに個人はいかに関わり、そのように他人を取り込み、排除するのか。負の面は明らかなのに、人はなぜ共同体を求めてやまないのこ。理想の共同体を求める試みがいつも失敗に終わらざるを得ないのはなぜなのか――。〉を追求してきた。

「超越性」。大江作品は、少年期の戦争や天皇、また青年期のカタカナ固有名詞(外車や現代思想)、それらを「あおぎ見る」。それら対象につながろうと向こう側へ「ジャンプ」する。「救済」「祈り」という言葉が使われる。
 大江の小説は評価しても、戦後民主主義擁護・人道主義を「陳腐で優等生的」と多々批判がある。

……しかし、大江にとって「戦後憲法」は一種の超越的価値であり、それを「あおぎ見」て、そこに近づこうとしていると理解すれば、小説と評論の矛盾と見られていたものも、実は同じ態度の表れの差として理解できる。〉
 
「最後の小説」『晩年様式集(イン・レイト・スタイル)』(講談社、2013年)は「3.11」後の日本。主人公=大江は近しい女性たちから異議申し立てをされる。特に娘からは、家族に敬意を払ってこなかったのではないか、と。長男も怒る。娘と長男は主人公のもとを離れて、四国の森に移住。小説の最後、自作の詩「形見の歌」を掲げる。初孫の人生を思い、森の伝承を語り、先に逝った人たちを憶う。人は「自分の木」を持つ。死ぬと魂は「自分の木」のもとに着地する。魂は赤ん坊の胸に入る。

〈私は生き直すことができない。しかし/私らは生き直すことができる。〉

妻は〈ともかく希望がかんじられる〉(原文傍点)と言った。
(平野)
 9.24 灘のワールドエンズ・ガーデン、ゴロウさん「ほんまに」取材に同行。老舗新刊本屋店主、女子の古本屋さん、ブックショップ&ギャラリー店主、ワールドエンズ店主に「本を売る」のテーマで鼎談していただく。さて内容は? 「ほんまに」を待っていただきたい。いつできるか? 最後に野次馬参加の私に書店員の給料について質問あり、現役時代の給料を正直に答えた。微妙な反応。原稿からはカット願いたい。
 9.26 中断していた調べ物を再開。我が坂本村(現在の神戸市中央区楠町、橘通、多聞通)出身の日本画家のこと。これもいつ発表できるか? 午後元町商店街事務局に原稿届けて、散髪、買い物。あちこちに体格のでかい外国人グループが目立つ。神戸でラグビーの試合あり。元町通4丁目のまちづくり会館では古本屋さんたちが棚詰め中。しばらくウインドウ越しに眺める。

2019年9月22日日曜日

天丼かつ丼牛丼うな丼親子丼

 飯野亮一 
『天丼 かつ丼 牛丼 うな丼 親子丼 日本五大どんぶりの誕生』  
ちくま学芸文庫 1200円+税
 
 

 著者は食文化史研究家。
 熱いご飯の上におかずをのせて食べる。おかずとご飯を別々に食べてもおいしいけれど、一緒に咀嚼するといっそうおいしい。
 うなぎの蒲焼をのせる、天ぷらをのせて天つゆをかける。牛鍋の肉をのせる。鶏肉を出汁と卵でとじてのせる。同じく出汁と卵でとじたとんかつをのせる。おかずをご飯にのせるまで長い時間がかかった。熱々のご飯のおかげでおかずも保温された。おかずの旨みがご飯にしみてさらにおいしくなる。
 私たちの先祖は仏教の教えで肉食の習慣がなかった。キリスト教伝来と共に肉を食べるようになって、禁教でまた食べなくなった。
 鳥類では野鳥は食べていたが、鶏は食べなかった。でも、鶏卵は高級品だった。徳川吉宗の時代、野鳥が減り、代わりに鶏が食用になったが、養鶏技術は未発達だった。食用では鶏卵のほうが格上だった。「鶏と鶏卵は身分が違っていた」のだ。身分違いの親子が出会うのは明治になってから。身分制度と親子丼誕生に関係があるのか? 
 日本歴史上、確実な証拠のある「親子丼」登場は、神戸元町のうなぎ屋「江戸幸」。明治1796日「大阪朝日新聞」に広告が出ている。
 池波正太郎の小説で、うなぎは裂いて蒲焼になる前はぶつ切りで焼かれていた、と知った。蒲焼になったことがうな丼誕生の第一段階と言える。天丼の前には天ぷら茶漬けがあった。牛丼ブームのきっかけは関東大震災。かつ丼の場合は、まず洋食の普及が不可欠だった。一旦普及すると洋食屋だけではなく、町の安い食堂、そば屋、家庭料理にも進出、とスピードアップ。丼物のエピソードがたくさん。うまいのが勝ち!

(平野)親子丼の鶏肉卵とじとご飯を別の器に入れて出すのを「親子のわかれ」と言う。「他人丼」なら「他人のわかれ」。はじめて聞いたときはそのセンスに驚いた。
 
 9.21 午前中、図書館。午後、三宮ブックス村田社長からギャラリー島田での本販売の請求書を預かる。昔馴染みのうどん屋さんでランチご一緒、ご主人も女将さんもお元気。本屋さんで文芸評論と古書ミステリー購入し、編集工房ノアの本を注文。
 9.22 請求書持ってギャラリー島田。島田社長も村田社長も昭和戦前生まれながら現役経営者だ。心身と強い、お元気。私は先輩方の間でウロチョロしている。

2019年9月19日木曜日

須賀敦子の手紙


 『須賀敦子の手紙 1975―1977年 友人への55通』 
つるとはな 2850円+税
 
 

 20165月初版、私のは同年93刷。
 須賀は19983月死去。生前出版された著書は5冊だけだったと知り、驚く。死後も出版が続き、200001年には全集が刊行された。その後も単行本が出た。全集が文庫化された。さらに手紙まで。
 心許す友人夫妻に宛てた手紙。仕事の愚痴、研究の喜びと苦闘、著書出版の不安、友への感謝、私生活(恋も)のこと、病のこと。

 私はこれまで須賀に縁がなかった。自らの意思では読むことはなかっただろう作家だった。ギャラリー島田の大竹昭子写真展で本販売係という縁ができた。3冊だけ読んだ。須賀と親しくした大竹と武谷が彼女の素顔の一部を語ってくれた。写真展観覧者がそれぞれの縁を話してくれた。
 それだけの縁しかないヂヂイが彼女の私信を読んでもいいのか、そう思いながら読んでいる。
(平野)

9.14 午前中、図書館で「みなと元町タウンニュース」調べ物。午後、花森書林にイベント参加申し込み、高架下プラネットアース「竹内明久切り絵展」、トアウエストのギャラリーロイユ「林哲夫展 写実と幻想」を駆け足で周る。花森で懐かしい元書店員さん、ロイユで詩人さんに遭遇。本屋さんで丼物(食文化の本)。

9.16 「朝日歌壇」より。
〈私も絶滅危惧種か車内にて山本周五郎読んでいる (横浜市 椎名久美子)〉

9.17 お彼岸は天気下り坂の予報なので、早めに墓参り。午後、ギャラリー島田で写真展の本販売精算作業。会期最終日、展示の「須賀敦子本」が行方不明になって、スタッフさんヤキモキしていたのが、見つかり、ひと安心。娘から孫写真とお江戸商店街PR雑誌が届く。「BIG ISSUE」367号はリトルプレス特集。

9.18 赤ヘルから勤務書店のイベント案内あり。豪華なメンバーで参加したいのだが、生憎労働日で残念。ゴロウさんから「ほんまに」原稿校正、いつ出したものか忘れるくらい前の。

ヨソサマのイベント
アカヘルさんからメールが着いた 本のイベント。
 蔦屋書店梅田店 1014日(月)ブックトークフェスティバル

全日通し
https://store.tsite.jp/umeda/event/humanities/9669-1211420916.html

第一部
https://store.tsite.jp/umeda/event/humanities/9688-1816280917.html

第二部
https://store.tsite.jp/umeda/event/humanities/9677-1058280917.html

第三部
https://store.tsite.jp/umeda/event/humanities/9681-1214190917.html

 

2019年9月13日金曜日

スズキコージ 寺門孝之


ギャラリー島田のイベント 9月14日(土)~25日(水)

1Fにて
 スズキコージ そもそもオリンピック展
絵本原画+巨大キャンパス画などなど




B1にて
 寺門孝之 間(あわい)の天使 
ANGELS of AWAI


 

詳細はこちら http://gallery-shimada.com/

平野)
 9.10 ギャラリー島田、本販売係しながらDM発送作業。女子古本屋さん来廊。
「みなと元町タウンニュース」原稿準備、明治の元町周辺を調べている。島崎藤村が恋愛問題で逃げて来た。相手の女性も家族も苦しめ、勿論自分も苦しむ。けど、懲りない。明治のダメンズ。正岡子規は日清戦争従軍の帰途、喀血。神戸病院に入院して、須磨の保養所で静養。そんなこんなことなど。

 9.12 「大竹昭子写真展」最終日。海文堂の顧客さん来廊。しまきよさん、ののさま、しおさんと旧交を温める。別の方から、「海文堂にいらした?」と問われる。覚えていただいて感激。『須賀敦子の手紙』(つるとはな)購入。大竹さんから著書『個人美術館への旅』(文春新書)いただく。大竹さん、『海の本屋のはなし』(苦楽堂)を読んでくださり、WEB「海の本屋アーカイブ」もご覧の由。
 読書は藤沢周平『一茶』(文春文庫)。後世に名を残す俳諧師・一茶でさえ、漂泊の果ての野垂れ死にを恐れた。最期は畳の上で往生したが……。
「映画批評」第18号(神戸映画サークル評議会)よりお送りいただく。

2019年9月9日月曜日

アウシュヴィッツの図書係


 アントニオ・G・イトゥルベ 小原京子〈訳〉
『アウシュヴィッツの図書係』 集英社 2200円+税

 

 20167月初版。私のは20184月第11刷。
 著者はスペインのジャーナリスト。実話に基づいた小説。
 アウシュヴィッツ強制収容所に子どもたちのための秘密の「学校」があり、秘密の「図書館」があった。たった8冊の本。図書係は14歳の少女ディタ。ナチの兵隊に見つからないよう、少女は命がけで本を守る。
 いつ殺されるか、病気になるか、栄養失調で倒れるか、食料も薬もない絶望の最中。本など必要なのか? 何の役に立つのか? 
 ディタは学校のリーダーに図書係を頼まれた。危険なことだと言われたが、「任せてください」ときっぱり言った。
 ページが抜けた地図帳、『幾何学の基礎』、H・G・ウェルズ『世界史概観』、『ロシア語文法』、フランス語の小説『モンテクリスト伯』、フロイト『精神分析入門』、ロシア語の小説、チェコ語の小説『兵士シュヴェイクの冒険』。どれもボロボロ。それから先生たちが覚えている物語を話す「生きた本」があった。
 リーダーが収容者移送選別(ガス室行きか強制労働か)の混乱のなか自殺(実は同胞による毒殺)、皆が動揺する。ディタは先生に、おびえて途方にくれる子どもたちのために本を読んであげるよう、頼まれる。どんな本を読めばいいのか。真面目な本か、数学か、世界史か……

〈八冊の中で一番くたびれている、バラバラの紙の束といってもいい本。この中では一番ふさわしくなさそうな本だ。全然教育的じゃないし、罰当たりかも。下品だ、不謹慎だとその本を認めない先生たちもいる。しかし、そんなふうに思うのは、花は花瓶の中でしか育たないとおもっている、文学の「ぶ」の字もわかっていない人たちだ。図書館は今や薬箱なのだ。もう二度と笑えないと思ったときにディタに笑いを取り戻させてくれたシロップを、ちょっぴり子どもたちの口に入れてやろう。〉

 以前、先生に許しがたい本、不謹慎、教育と品位を損なう本、と叱られた本だ。『兵士シュヴェイクの冒険』(第一次世界大戦中のチェコスロバキアのダメダメ兵士が主人公。戦争を風刺)。最初だれも聞いていなかったが、ディタは読み進めた。ディタを見つめる子、離れた場所から近づいてくる子、おしゃべりしている先生に注意する先生、子どもたちが笑う。
 更なる生死の選別で学校も図書館も閉鎖。死を免れた者は別の収容所に移される。ディタの運命はどう翻弄されていくのか。読んでいただくしかない。

(平野)
 西宮甲子園のリトル書房で本書が私を呼んだ。出版時から読むべきとは思っていたが、本屋さんの棚に手が届かなかった(高いところにあった、ということではなくて)。リトルで手が届いた。
 本が大きな悲しみにある人の癒しになる、と信じたい。だが、自分が明日をも知れぬとわかったとき、ディタのように行動できない、と思う。

 前回一日分消えていた。
 9.1 三宮高架下を歩いていたら古本店主と遭遇。いきなり「新しい店はじめました」とおっしゃる。2店舗共同出店「三宮駅前古書店」誕生。空港行きバス乗り場のすぐ近く。



 9.7 ギャラリー島田「大竹昭子写真展 須賀敦子のいた場所」で本販売係。くちあけ、売れてほしいと思っている本を買ってくださる。幸先よいスタート。展示写真「コルシア書店」に感動されている女性、海文堂のお客さんだった。大竹・武谷なおみ(イタリア文学者)対談聴講者は50人を超え満員。須賀ファンは教養深い上品な女性ばかり(悪意・皮肉なし)、男性は数えたら7名のみ(同じく悪意なし)。武谷は須賀のイタリア文学研究者時代を知る人、大竹は作家・須賀と交際。須賀の研究業績・作品・神学など硬い話から私生活のエピソードまで、しみじみと、熱く語ってくださった。おふたりとも須賀の人間性と作品の普遍性を信じている。
 9.8 本日も本係。暑い中、お客さんがハンター坂を登って来られる。今読んでいるナチ収容所の話、少女が図書係になり監視に見つからないよう苦労する話に比べ、なんと気楽な本屋さんごっこであることか。海文堂時代のごひいきさんたちがお見えで、うれしい。画家さんからは週末からの個展案内、元町の美術書専門店店長から名刺いただく。愛書家さんも。別の男性ファンは森まゆみの愛読者で、彼女が須賀追悼記で「どんなことでもする」と書いているので須賀作品を読むようになった、と。ちょうどギャラリーにその本『文藝別冊 須賀敦子 霧のむこうに』(河出書房新社)があった。曰く、須賀をゆっくり追悼したいが、彼女からもらったたくさんの宝物へのお礼と、彼女の仕事がしずかに伝わっていくためなら、「私はどんなことだってしよう」。私はこれまで須賀の熱心な読者ではなかったし、読んでもピンときていない。昨日の対談とこの写真展を頼りにまた読んでみようと思った次第。帰り道、「三宮駅前古書店」。
 
ヨソサマのイベント
 林哲夫展 写実と幻想



ギャラリーロイユ https://www.g-loeil.com/
9.14(土)~105(土) 13001900 水・木休み 最終日は18時まで

2019年9月3日火曜日

犬の目、人の眼差し


 竹内明久 切り絵・文 『犬の目、人の眼差し』 
波止場通信社 1800円+税
 
 

 竹内は編集者・コピーライター。故成田一徹に切り絵を学んだ。本書は元町高架下商店街(通称モトコー)の店主たち、風景を中心にした作品集。
 モトコーはJR元町駅から神戸駅の高架下約1.2キロの商店街。戦後の闇市の痕跡、昭和の風景を残す場所だ。古くからの店に加え、若者が新しい感覚で参入していた。
 古老は、「どんな階層でも外国人でも落ち着くのがモトコーや。戦後、裸一貫で再出発した日本人の原点や」と語る。

〈だが、その原点も消えていく。飢餓感を抱きながら徘徊した犬の記憶と、人間の弱さや悲しみも包み込む優しい人の眼差しをもつモトコーの戦後に、どうやらバイバイしないといけないらしい。〉

 JRの耐震補強工事とそれに伴う契約更新問題で既に多くの店が退去している。竹内もオフィスを閉めた。
 個性豊かな商人やアーティスト、ここにしかない商い、路地裏や通路の佇まい、年月の積み重ねで醸成される空気、匂い。消えてしまう(しまった)ものたちを切り絵に残す。
本書発刊記念展 
913日(金)~23日(月) 
Pocket美術館モトコー(プラネットEarth内)

(平野)
 モトコー(私たちは「こうかした」と言っていた)は中学時代通学路のひとつだった。友だちの家(商店で住居)が何軒もあった。外国の船員さんが中古の電化製品を大量に買っていた。目を伏せて通らなければいけない店があった。子どもながら、こんなもん売れるんか、と思うようなモノが並べられていた。
 
 9.3 三宮ブックス村田社長とギャラリー島田に「須賀敦子」本搬入。
「大竹昭子写真展 須賀敦子のいた場所」
7日(土)から12日 ギャラリー島田

716時から大竹昭子と武谷なおみのトーク(要予約・1000円)
申し込みはギャラリー島田まで電話かメールで。
078-262-8058
http://gallery-shimada.com/?p=6334