2020年4月30日木曜日

上方落語ノート(二)


4.30 桂米朝『上方落語ノート 第二集』(岩波現代文庫)。初版は『続上方落語ノート』(1985年、青蛙房)。
 第二集では、他に「落語と能狂言」「わらべ唄と落語」「原典あれこれ」などの論考をおさめる。また、米朝自ら解読した浄瑠璃本を整理して掲載。

「先輩諸師の持ちネタ」の項で「須磨の浦風」という噺が出てきた。YouTubeで視聴、笑福亭生喬。暑い時期、大坂の豪商の家に紀州の殿様がお忍びで遊びに来るというので、涼を味わっていただく趣向を考える。冷たい炬燵や雪景色、それに須磨まで人をやって「浦風」を長持ちに入れて運んで来る。帰る途中で人足たちが暑さに負けて長持ちを開けて涼んでしまう。代わりに人足たちが封じ込めたのは……。江戸落語では、将軍の饗宴で須磨まで風を取りに来る、らしい。

 
 

 古来須磨は畿内と山陽道の境、交通の要衝。「須磨の関守」の歌で知られる。貴族や社寺の荘園が置かれ、都を追われた有力者が隠棲することもあった。光源氏だって来た。風光明媚、今で言うリゾート地でもあった。気候温暖・空気清澄の環境により、明治には結核専門病院・保養院が設立された。海水浴も効果があるとされた。正岡子規も療養した。皇族の離宮や財閥や居留地外国人の別荘も建設される。
(平野)


「ほんまに」vol.20 取り扱い店 4.29現在
【神戸市中央区】
ジュンク堂書店三宮店  078-392-1001
1003(せんさん)  050-3692-1329
古書うみねこ堂書林  078-381-7314
花森書林  078-332-4720
【神戸市須磨区】
井戸書店  078-732-0726
【神戸市垂水区】
流泉書房  078-705-0911
【尼崎市】 
街の草  06-6418-3511
【大阪市】
MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店  06-6292-7383
清風堂書店  06-6312-3080
Calo Bookshop&Cafe(カロ ブックショップ アンド カフェ)  06-6447-4777
古書ますく堂  090-3747-2989
【和泉市】
浜田書店  0725-45-7699
【京都市】
レティシア書房  075-212-1772
【大和郡山市】
とほん  080-8344-7676
【名古屋市】
ちくさ正文館  052-741-1137 
七五書店  052-835-0464
【知立市】
正文館書店知立八ツ田店  0566-85-2341
【東京都】
往来堂書店  03-5685-0807
本屋Title(タイトル)  03-6884-2894
【秋田市】
乃帆書房  018-853-7330
【札幌市】
古本とビール アダノンキ  011-802-6837

2020年4月29日水曜日

さくらんぼ


4.28(続き)花壇のさくらんぼの実がなった。毎回野鳥が啄みに来て、ヂヂババの口には入らない。
 
 

ギャラリー島田社長から電話、休廊中でも文化支援基金の活動に忙しい様子。本の友だちからメールやハガキ、時短営業や自宅待機、週一出勤。元気でいて、としか言えない。

雑誌と孫の絵本を求めて本屋さん。本日発売の女性雑誌は67月合併号になっている。取材も広告もままならないのでしょう。

元町鯉川筋沿い、黄色の花が美しい。ブラジルの「イペ」というそう。2008年神戸市のブラジル移民顕彰事業「海外移住の道」整備により植樹された。駅前の交番はブラジルの教会を模している。記念碑もある。
 

 

『タコとミカンの島』を読み進めている。タコ漁や畑作業のない冬の時期、夫の勝美は独身時代神戸に出稼ぎ、御影の酒樽店に住み込んだ。流行のおしゃれをし、映画や演劇を楽しみ、バクチも覚えた。島で遊び人ヤクザもんと陰口を言われ、青年団除名騒ぎもあったが、腕力も知力も漁の腕前も島一番。妻スミエは遊びも働くことも人一倍の勝美に惚れ込んだ。昭和40年頃から豊かな瀬戸内の海に変化が起きる。海の汚染は漁だけではなく、島の植生にも影響が出た。

4.29 近所の小さなスーパーは入場制限していた。カレーを作る。

(平野)

2020年4月28日火曜日

タコとミカンの島


4.27 新聞に古本屋さんたちの取り組みが紹介されている。
 高松市の〈なタ書〉が始めたのは自転車での配達、市内限定。よく見かける宅配サービスをもじって、「Uber Books」。郵送もできる。朝日新聞4.22夕刊より。
 京都〈古書善行堂〉は従来からネット販売をしている。このたび予算に合せて選書・配送するサービス「善行堂倶楽部」を開始。
 伊丹市〈古書みつづみ書房〉は今月初めから夜間の無人販売を始めた。また、一箱古本市の仲間とネット上の「みんなのひとはこ」をオープン。56日までの限定。朝日新聞4.27夕刊より。


 4.28 ギャラリー島田のDM発送手伝いは自粛、スタッフさんたちゴメン。

「くとうてん」がお手伝した本、倉掛喜八郎『タコとミカンの島 瀬戸内の島で暮した夫婦の話』(シーズ・プランニング)


 

 倉掛は神戸在住のグラフィックデザイナー。港、船、働く人を描いていた。80年代から本四架橋の工事で変貌する瀬戸内の海と人の暮らしを取材。阪神淡路大震災で被災、スケッチもノートも一部失う。生活再建のため絵から離れたが、2017年から瀬戸内めぐりを再開した。
 本書は愛媛県松山沖の二神島(ふたがみじま)と由利島を取材したもの。19848月、初めて二神島を訪れ、漁師夫婦にタコは豊漁か、と声をかけた。

〈声をかけると、男はチラッと私を見て、一瞬まばたきしたような。やせ細り、面長のほおがこけてシワ深い。長袖木綿シャツをはだけた胸にはアバラ骨が浮き上がる。(中略)大病でも患ったのか、腰が「く」の字に曲がる。だが、日焼けして精悍な漁師の風貌だ。〉 
 奥さんは微笑みを返してくれる。小柄ながら、男のような大きなこぶしをしている。  あとで無住の由利島に渡してもらうため町役場で紹介されるのがこの夫婦。以前からの知り合いのように接してくれ、濃密な取材が始まる。漁、ミカン畑、島の歴史、子ども時代、夫婦の暮らしなど。両島は親子島、二神の島民は漁業組合員でみな平等。相互扶助の精神で貧しい者は由利島で畑を作る「困窮島の制度」がある。


 倉掛の作品。手持ちの本『えほん 神戸の港と船』(のじぎく文庫、神戸新聞出版センター、1981年)と海文堂のPR誌の表紙。PR誌は〈Web神戸元町「海の本屋」アーカイブ〉でご覧いただける。



 

(平野)

2020年4月26日日曜日

花森書林通信


4.24 元町商店街事務局の担当さんはコロナ対策で隔日の出勤に。私が持参できる日とテレコになっている。今回の原稿はメール送信。
 読書は、今野真二『振仮名の歴史』(岩波現代文庫)。初版は2009年集英社新書。


 振仮名は日本語独特の文字づかい。漢字の読みだけではなく、意味を記す場合もある。
 私は最近の日本語の歌詞を聴き取れないことが多いのだけれど、歌詞カードには漢字、平仮名、片仮名、外国語(アルファベット)が使われているそう。ヂヂイにもその表現法は理解できる。振仮名にもすべての文字が使われていて、アルファベット表記の単語に片仮名で振仮名をつける。それも理解できる。ところが、片仮名外国語単語にアルファベットで振仮名につけたり、日本語「あるがまま」に英語「let it be」と振仮名、という表現・発想は思いもつかなかった。日本語の表記はこれが可能、というより決まりがない。学校の国語の試験で不正解だが、書き手の自由な表現では「アイズ」「サイン」「sign」と振仮名を書いて、そう読ませても構わない。
 日本人は中国の漢字=表意文字を使い、そこから仮名=表音文字を生み出して、両方を使ってきた。漢語を説明するために振仮名を考えついた。振仮名を多様に使い、機能を拡大してきた。
 今野は、日本人は仮名を発明しても漢字を捨てることができなかった、捨てたくなかった、「漢字で書きたい!」という欲求が強く根付いていた、と考える。日本語表現、将来どんな機能が出てくるだろう。

4.25 花森書林から「花森書林通信 臨時創刊号」が届く。店舗休業中、出店していた神戸元町みなと古書店閉館、イベントも中止に。でもね、店主はへこたれない。A3用紙目いっぱいに神戸本を紹介。「ほんまに」や「みなと元町タウンニュース」のことまで。お嬢ちゃんの折り紙が入っているのは、私だけ! と思いたい。皆、もらってるやろなあ。
同店Webをご覧下さい。永田收写真展「誰もいない展覧会~猫の眼」開催中。


 

(平野)

2020年4月24日金曜日

喫茶店の時代


4.18 親戚法事中止になり、引きこもり。不義理と不養生、肩こりと筋肉痛。孫とLINE電話、元気で力強い姿と声でうれしい。友だちから電話やメール。離れていてもこの関係を保ちたい。

4.20 本は、林哲夫『喫茶店の時代 あのとき こんな店があった』(ちくま文庫)。初版は2002年編集工房ノア刊。コーヒー、茶の歴史から日本の喫茶店の移り変わり、店と店主の魅力、そこに集まる人たち。林は、喫茶店文化史を編むことが目的ではなかった、と書く。「喫茶店」の文字を見つけてはメモしたり、写真や絵を集めたりした「遊びの延長」、と。神戸の名喫茶店も登場する。初版に加筆・改稿して、コーヒー増量。初版は古書店でたまに見かけるものの、手が出なかった。大倉山の中央図書館にはなく、分館所蔵本を取り寄せてもらって読んだ。
 
 

4.21 フェイスブック投稿をサボっているが、「Sato」さんが本棚公開ゲームをしていて、私も指名された。逃げるわけにはいかない。思い切ってパンツを脱ぐ気合で「神戸本」棚の一部を見せた。恥ずかしっ! と言いつつここでも見せてしまう。
 
 

「古書片岡」に「ほんまに」を届けに行くも、コロナ休業中。

4.22 FB友だち神戸元町出身俳人さんも書棚公開。私、手に取りたい本多数、共通本を数冊発見。

4.23 ジュンク堂書店三宮店は平日営業と知って、そら行かなあかん。三宮センター街の人出は少ないが、店内は多くの人。

くとうてんで、「ほんまに」と神戸画家の本を購入。三宮ブックスに「ほんまに」持参。阪急百貨店で晩飯買い物、勤務先マンション住民さんと遭遇、手を振り目礼。

(平野)

2020年4月23日木曜日

「ほんまに」連載続き

 
「ほんまに」連載陣続き



欧州くるっとグルメ本 3 雑書を肴に  中島俊郎
 古書店の均一台の「雑書」。最近大狸教授が入手されたのは、山本千代喜『酒の書物』(龍星閣、昭和15年)。コルク、乾杯、航海好きの酒などなど逸話の出典も明記され信頼度あり、俗信・迷信もあまさず収録。「痛風」をおこす病魔の図を見よ。

兵庫文芸探検抄  高橋輝次
 古書目録で注文した冊子「『澤田都仁覚書 ひとりの出版人の生にふれて』 田中国男」のこと、著者に直接注文して入手した「津野高雄『古本屋一代』(私家版)」のこと。

横溝正史 作品と神戸 第3回 真紅の秘密  千鳥足純生
 横溝初期短篇「真紅の秘密」はじめ神戸を舞台にした作品について。

続映画屋日乗 5 映画と本、映画館と書店  内海千香子
 本を題材にした映画、意外と少ない!? 映画と本の現状を考える。

まちと古本屋と 4 岡書店  永田收 文と写真
 高架下商店街7丁目にあった「岡書店」のこと。永田さんは花森書林(店舗休業中)のWebサイトで「誰もいない展覧会~猫の眼」を開催中。
https://hanamorishorin.com/

わたしたちの知らない神戸 第1回 新港突堤の不思議  青山大介
 鳥瞰図絵師新連載。神戸の地理や建造物を探検。今回は神戸港突堤の謎について。

もっと奥まで~ 俵万智『牧水の恋』(文藝春秋) 平野
 本誌唯一のおばかコーナー、まだやっています。若山牧水は神戸に縁が深い。  
 
(平野)

2020年4月21日火曜日

「ほんまに」取り扱い店


「ほんまに」vol.20 取り扱い店 4.20現在

コロナ感染拡大のなか、読者皆様にはご不便をおかけいたします。
 店舗の皆様、感謝いたします。

【神戸市中央区】
ジュンク堂書店三宮店  078-392-1001
1003(せんさん)  050-3692-1329
古書うみねこ堂書林  078-381-7314
花森書林  078-332-4720
【神戸市須磨区】
井戸書店  078-732-0726
【神戸市垂水区】
流泉書房  078-705-0911
【尼崎市】 
街の草  06-6418-3511
【大阪市】
MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店  06-6292-7383
清風堂書店  06-6312-3080
Calo Bookshop&Cafe(カロ ブックショップ アンド カフェ)  06-6447-4777
古書ますく堂  090-3747-2989
【和泉市】
浜田書店  0725-45-7699
【京都市】
レティシア書房  075-212-1772
【大和郡山市】
とほん  080-8344-7676
【名古屋市】
ちくさ正文館  052-741-1137 
【知立市】
正文館書店知立八ツ田店  0566-85-2341
【東京都】
往来堂書店  03-5685-0807
本屋Title(タイトル)  03-6884-2894
【秋田市】
乃帆書房  018-853-7330
【札幌市】
古本とビール アダノンキ  011-802-6837
 
「ほんまに」紹介続き。


令和に聞く 戦前戦後のわいらの神戸新開地  
豊田和子さん、廣谷明弘さん
 戦前の賑わい、福原遊郭、大空襲の記憶を語っていただく。
 
 2年ぶりで連載陣というのも憚れますが、レギュラーメンバー(その1)。

本屋があるだけで  髙田郁 
 小説家デビュー11年。更なる精進を決意。

『喫茶店の時代』ふたたび  林哲夫
 画家、本の装幀、著作や共著出版と忙しい。3月に旧著『喫茶店の時代』(編集工房ノア、2002年)をちくま文庫で再刊。改稿で旧著よりボリュームアップ。喫茶店資料満載。

月刊佐藤純子[本とビールのKJS号]  佐藤ジュンコ
 KJSとは「神戸ジェットセット」。ジェット機で飛んで神戸ツアー。本とビールとおいしいごはん、それからお友だち。

馴染みかけの町へ 5 自宅の近所編  石橋毅史
 近所の中華屋おかみさん登場。

(平野)

2020年4月19日日曜日

ほんまに vol.20 


遅くなりました。「ほんまに vol.20発行。            
株式会社 くとうてん 500円+税

特集 本を売る

・板宿で本を売る 井戸書店 森忠延さん

・書店主座談会「本を売ること、これからの本のこと」 
井戸書店 ワールドエンズガーデン 1003 KITSUNE Book&Art

・個性さまざま 兵庫の書店 
Storage books KITSUNE Book&Art 小林書店 リトル書房

・本屋の奥さん 流泉書房 大橋茜さん

・やっぱりおもしろい! 大阪の本屋さん  空犬太郎
 
 

 井戸書店 神戸市須磨区、山陽電鉄板宿駅そばの新刊本屋さん。店主の森さんは書店組合のリーダー、環境保護運動にも携わる。

ワールドエンズガーデン 灘区の古書店、落語会や映画上映会など地元の方々とイベントを企画・実行。マスコット猫のぶんちゃんが人気。

1003 元町、女子の古本屋さん。リトルプレス、ZINEが豊富。イベントも積極的に行う。

KITSUNE Book&Art 北野町の編集事務所。ブックショップとギャラリーも経営。

Storage books 元町の大丸前のビル内。デザインとアートをテーマに品揃え。

小林書店 尼崎市立花の商店街の本屋さん。地域の人々が集まる場所「コバショのまちかいぎ」を開設。

リトル書房 店主は幼い頃から本屋さんをすることが夢。会社を早期退職して、2016年西宮市甲子園で開業。

流泉書房 2018年須磨区名谷から垂水区に移転。現店主の祖父が創業した老舗。読み聞かせ会・読書会などを定期的に開催。今回記事の主役は配達に駆け回る奥さん。
 
空犬さんは、大阪の個性派新規店、老舗の取り組みをレポート。

 
「ほんまに」2年ぶりの刊行がコロナウイルスにかぶる。営業にも支障あり。取り扱い本屋さんはわかり次第お知らせします。
 

 イシサカゴロウ描く表紙はどこの本屋さんなのか、モデルは誰なのか、不詳。

(平野)

2020年4月18日土曜日

社会的距離


4.16 本日の「折々のことば 鷲田清一」(朝日新聞 4.16)は日本文学研究者ノーマ・フィールドのことば。『「井上ひさし」を読む』の座談会(小林多喜二について)での発言が紹介されている。

「本来、雑談はそれ自体が目的です。つまり、人間にとっては欠かせない贅沢(原文傍点)の象徴たりうるかもしれません」

 多喜二は非合法運動の生活で「雑談」を許す人間関係・信頼関係から外れてしまう。それは特殊なことではない。現代の格差社会では人々が分断され、親しくない人や立場の違う人としゃべることが難しくなっている。ノーマのことばは続く。「あるひとを四六時中働かせ、あるひとには全く働く機会を与えないのが現在の資本主義体制です」。

 コロナウイルス感染も人間関係を分断する。予防のため「社会的距離」を取るよう言われる。経済学者・浜矩子は、我々が求められているのは物理的距離、と指摘する。

「物理的に距離を保っているからといって、疎遠になり、社会的関心を失い、他者の命運に無関心になったりしてはいけない」(「浜矩子の新ストリートエコノミクス 106」 BIG ISSUE 381

仙台イラストレーターさんから新年度年賀状通信が届く。ふんわかほんわり、和む。出版の計画が進んでいる由。
 午後、「ほんまに」を知人に送る。「生きてまた会いましょう」と書いた。(株)くとうてん訪問、時差出勤やら在宅勤務で社長と編集長のみ。完成パーチーはおあずけ。
 古本屋さんも休業に入ったよう。うみねこ堂書林に寄ると、営業してはった。業界ベテラン勢は営業継続の様子。店主の話でジュンク堂三宮店も週末から休業と知る。時間の問題とは予想していたが、これで神戸中心部の新刊本屋さんは全部休業になる。電車乗って遠方へ行くのは外出自粛に反する。ネットは気が進まん。じっと我慢。私は本で「社会的距離」を保ちたい。

寝る前読書は、井上ひさし『秘本大岡政談』(ちくま文庫)。表題作他時代小説短篇集。
 
 

(平野)

2020年4月16日木曜日

「井上ひさし」を読む


4.14 外出自粛と言われても、私ら現場仕事は出て行かなければならない。今日は臨時で代行勤務。そのマンションから楠木正成の古戦場が見える。風強し。丘に葉桜が連なる。大正時代、兵庫の富豪・池長孟が牧野富太郎を援助し、この丘に研究施設を設立した。

本は、今村忠純他編著『「井上ひさし」を読む 人生を肯定するまなざし』(集英社新書)。井上ひさしと交流の深かった人たちによる座談会5篇、プラス井上も参加した1篇収録。井上の作品を読み継ぎ、その思いを受け継いでいく。
井上ひさし没後10年。生前遅筆で公演中止を繰り返したが、その理由がわかる。歴史的事件・作家の実像を題材に、膨大な資料を探索し、事実と思っているものの裂け目を見つけ、真実をえぐり出す。悲惨さや傷跡までさらす。想像力をめぐらし、喜劇という手法で。改めて作品に込められた思想を知る。
本書で大江健三郎が自分と井上の想像力のとらえ方の原理、フランスの思想家ガストン・バシュラールの考え(『空と夢――運動の想像力にかんする試論』法政大学出版局から)を紹介。最近別の文章でも出てきた。三浦雅士「スタジオジブリの想像力――どうしてオープニングで空を飛ぶの?」(「熱風」2020.4月号)がバシュラールの同じ本からジブリの「想像力」を解説している。
 
 

4.15 深夜、ゴロウさんが「ほんまに」第20をポストに入れてくれていた。心遣い感謝。2年ぶりの刊行で、時間かかった分、それなりの出来栄え、と、私はあんまり手伝っていないので偉そうに言えない。

(平野)