2015年12月6日日曜日

神戸、書いてどうなるのか


 安田謙一 『神戸、書いてどうなるのか』 ぴあ 1500円+税

 著者は1962年神戸生まれ、神戸在住「ロック漫筆家」。
《ポップカルチャーを中心にさまざまな媒体で執筆を行うほか、CD監修、ラジオのディスクジョッキーなど多岐に渡って活動。》(著者プロフィールより)
 まちを歩く。食べ呑む。本を買い読み、映画を観て、音楽を聴く。今のまちの風景を語り、なくなってしまった場所に思いを寄せる。

 本書予告PV。
https://www.youtube.com/watch?v=8Z3FWC8S6kI

 書名は見て気づくとおり、歌謡曲「そして、神戸」の歌詞「神戸、泣いてどうなるのか」から。この歌についても書いている。

《神戸を舞台とした、いわゆるご当地ソングだが、何度聴いても神戸のを思い浮かべることはない。(中略)
 にも関わらず「そして、神戸」が大好きだ。この曲の神戸という町への思い入れの薄さが、薄情を通り越して非情な世界を成立させている。歌詞は徹底的に乾いている。(略、女は棄てられ、靴を投げ落とし、花を踏みにじり)…と自暴自虐なアフェアを経て(比喩でないのかもしれないが)、夢の続きを見せてもらうために新しい恋を求める。》
 
第一章   食べたり呑んだり、神戸
第二章   ぶらぶら歩く、神戸
第三章   神戸を読む、観る、聴く、買う
第四章   神戸の記憶
第五章   神戸育ちのてぃーんずぶるーす
イラスト・マップ 山内庸資  写真 永田收

 第四章では海文堂書店のことも書いてくれている。閉店のときのことを「悲しい、残念、それより先に、困った、という言葉が出た」と。
《海文堂書店のいいところを説明するのは少し難しい。たとえば京都の恵文社一乗寺店のように、誰の目にも分かる特性はない。少し人口のある町ならどこにでも一軒はある(あった)、普通の大型書店である。気楽な面構えをしながら、それぞれの棚にはしっかり気が通っていた。親しさと頼もしさがあった。恵文社は京都ならではの本屋であり、海文堂もまた神戸ならではの本屋だった。》
 独立した項目で取り上げている本屋は、トンカ書店、ちんき堂、勉強堂書店、口笛文庫と、古本屋さんばかり。文中にも古本屋さんが多く登場する。
(平野)
元町商店街WEB更新。
http://www.kobe-motomachi.or.jp/